Tuesday, January 31, 2006

冬空

冬空にたな引く薄雲は
あの日わたしが撒いた
君の残骸
拾うにも
脆く崩れ
形無くし
君は現れた
ヤケになり
寄せ集めて
拳から風に乗せた
君の遺骨の粉末は
早春の風に運ばれ
海へ届き底へ沈み
今もきっと
大好きだった海の中で
潮と流れ
世界中に
旅しているね
君の望みは叶ったの?
もう安楽になったの?
何故わたしを遺した?
どうして一人逝った?
答えのない問いかけは
あの日の位牌と同じく春を孕む風に飛ばされ
世界中の君に届くよね
やっと気付いた
答えはいつでも
わたしを包んで
Yesと繰り返していた
これまでも
これからも
ずっときっと
君はわたしを包んでくれる
そう信じて仰いだ空は
遅れ始めた日の入りが
淡い紅を微かに残して
来る春の輝きを
僅か兆していた
春遠からず
冬去りぬ頃

Saturday, January 28, 2006

rWin!

哀切孤独屈辱孤独
どれも皆
自分で解消するより無いもの
たとえば
一夜の遊び
一時の慰め
真昼の陽射
月の明かり
そんなものが癒してくれても
束の間の時が過ぎれば一人
自己防衛の唯一最善最強の方法は
何も無かった振りをすること
親が死んでも
彼と別れても
友が去っても
泣きたくても
明るい空間の中では
明るい振りを続ける
何も無かったように
痛み苦しみを押し隠し
辛さ寂しさを飲み込み
独りぼっちになるまでは
誰にも弱みを見せないこと
其れが現代の世相
否定できない現実
逃げられないなら
克服するしかない
逃げない
負けない
必ず勝つと
何度も繰り返し自分に言い聞かせ
ヒールに傷をつけながら
心に傷を強さに変えて
最後には笑おう
泣きながらでも笑おう
笑って死のう
其れがわたしの生き方

Wednesday, January 25, 2006

m隣の温もり

たとえば毎晩電話しても
たとえば毎朝声掛けても
たとえば毎日写メール送っても
擦れ違うだけの隣にいた人には敵わない
傍の温もりにはもう勝てない
隣の体温には負けてしまう
あんなに確かめ合い分かち合った君の温かさは
顔も見ず名も知らぬ誰かのもの
今はもう隣の誰かには勝てない
わたしの付けた
君の背中の爪痕も
誰かとぶつかった
痣に埋もれて消えてしまう
わたしが擦った君の冷えた手足を
今日は隣に座った誰かが暖める
もうわたしは遠い女
傍にいる誰かには敵わない遠くの女
声を聞かせても
画像を送っても
声を限りに君の名を叫んでも
もう届かない
君の温もりは他の誰かのもの
素性を知らぬ誰かのもの
何も知らぬ誰かと分け合う
わたしには届かない
君には伝わらない
確かにわたしのもだった
君の温もり
もう届かない伝わらない
わたしの体温
重いだけが空回り
寒風が吹き散らす
木枯らしの中
君の声も温もりも
もう他の誰かのもの

Tuesday, January 24, 2006

wrm若者の馬鹿者どもへ

何故生んだ
育ててくれと頼んだ覚えは無い
中絶してくれればよかったのに
好きで生まれてきたんじゃない
何もしてくれなかった
自分は一人で生きてきた
ってな事をほざく若い阿呆が大勢いる
わたしも且つては其の阿呆の一人だった
けどなよく考えろ
たった一個の精子が他を殺して卵子と結びつき生命が始まる
つまり生まれた瞬間から
わたし達は他の生命とその未来がもっていた無限の可能性を殺してしまったのだ
其の責任は重い
そして母親は何もしなくても栄養を胎児に奪われる
つまりわたし達は全員が自分の意思で
母親から栄養を盗んで赤ん坊の形にまで育ったのだ
母親には十分過ぎる恩がある
だって母親は堕胎しようとすればできたのに
敢えて自らの栄養を分け与えてくれたのだ
そして其れは赤ん坊の本能が母親から奪うものだ
十分自分に責任あるだろう?
最後に産道を這いずってか
母親の腹掻っ捌いての帝王切開かによって
この世に生まれ出る
自分の意思でか母親の犠牲でかによって生まれ出る
一人で生きてきたって言うなら
水道も加工製品も農産物も一切使うな食うな!
生まれて直ぐに自分で臍の緒切って
湧き水で身体を洗い草を食らって生きてきたってなら
そりゃ一人で頑張っただろうが
一つでも他人の世話になったなら
其の人に恩返しするまで勝手に死ぬな!
人生波乱万丈でも平々凡々でも無い
皆それぞれ自分だけの物語を構築している
誰にも代役ができないドラマだ
皆が主人公だ
生きろ
生きていれば必ず悪いことがある
逆にいいことは何一つ無い
何故か? 
いいことってのは自分で築くものだからだ
待っていたって何も起こらない
失敗でも重ねれば山となり自分の人生が出来上がる
幸せなんて得られるものじゃない
幸せなんてのは気が付くものだ
無理して幸せになるんじゃない
今のままで幸せに気づけよ
若い奴等頼む
でないと年金が入ってこないじゃね~か!

Sunday, January 22, 2006

wrいざ生きむか逝かむか

いざ逝かぬ者を遠ざけることを知らぬ
死にたいと想うなら早く死ね
ただし楽に死のうなんて思うな
どんな屑でも生まれてくるときはな
親が其の屑のためにお腹を痛めてるんだよ
だから楽に死のうなんて思うな
それなりの代償を払ってから死ね
生きたくても生きられない人に罪悪感を感じることができるなら
少しでもその人たちのために働け
そして自分を見つめろ
そうすれば如何に自らが愚かであるかがわかる
死ぬには先ず生きねばならない
消えたいと言う連中よ
君達はな
生きていない
死んでいないだけだ
だから死ねず
消えたいなどと楽な方法を夢想するのだ
死にたければ生きろ
恥を曝して泣きっ面で失敗ばっかりでへこたれてみっともなく
だけど自分だけの生き方で
生きろ
そして
死ね

Saturday, January 21, 2006

w信じること

信じるということには
常に現実に抗しつつという面がある
しかし其れは現実に目を瞑り盲目的ということではない
信じるとは、聖句のアブラハムのように
現実をしっかり見つめつつ
同時に見えないものに目を注ぐということ
このバランスが大切だ
信仰の父アブラハムは現実に目を奪われ失望してしまう悲観論者でもなく
目を瞑って現実から逃避する楽観論者でもない
およそ百歳となってアブラハム自身の身体が死んだ状態であり
サラの胎が不妊であるのを認めながらも
なお彼の信仰は弱らなかった
彼は神の約束を不信仰のゆえに疑うようなことはせず
かえって信仰によって強められ
栄光を神に帰し
神はその約束されたことを
また成就することができると確信した
弦楽器の弦が両方の支点にしっかりと結ばれピーンと張った
調律された状態で最高の音色を出すように
信仰も現実と見えないものの両方に目を注ぐ関係にあるとき最も健全な音色を出す
健全な信仰は祈りに現れる
祈りは逃避ではなく、克服である
祈りは困難な状況から逃れるカラクリではなく
困難な状況に直面させ、取り組ませ、それを克服するように助けるもの
祈りは状況を変えるより我々を変えるように働きかける
祈っても状況は以前と変わらないかもしれない
しかしその状況に取り組むに必要な新しい力が与えられる
祈りは神が我々のために何かをなさることではなく
我々が自分でやれるように助けて下さることだろう
神は我々が自分でやれることを我々に代わってやるようなことはなさらない
祈りは簡単な逃げ道ではない
子供の宿題を親が子供に代わってやってしまう方が簡単だが
賢明な親ならそれは子供のためにならないことを知っている
真に子供を助けるなら
子供が自分でできるように指導し励ます
人生は一種のハードル競技のコースを走るようなものだ
祈りによって人生を走るコースからハードルが取り除かれることはない
しかしハードルを飛び越せる力が与えられる
久々のミサが
わたしを少し引き上げた

Friday, January 20, 2006

w天恵

嗚呼神様
多くは望みません
強さ狡さ優しさ
どれか一つわたしにお授けください
ほんの少しもう少し強く狡く優しくなりたい
けれどそんな欲張りは言いませんから
何れか一つほんの少しもう少しわたしにお恵みください
まだこれ以上
強い人を傷つけ
狡い人を騙し
優しい人を泣かせる
このわたしを生かし続けるならば
もう少しだけ天恵を下さい
死を許さぬあなたならこそ与える義務があるのでは?
死をお許しになると仰るのならば二十四時間間断無い苦痛をも甘受致します
煉獄の焔がわたしを清めて
もし天国か地獄の門が開くならば
喜び勇み馳せ参じましょう
逝く先は多分地獄
わたしに相応しい居場所

Tuesday, January 17, 2006

wおのぼりさん

新幹線代を貰い夜行バスで出張
セコいなわたし
でも常套の手段
単なるご機嫌取りだしほんの社交辞令だからとても真面目にやっていられない
出張は必ず金曜と月曜
中の土日は遊びに使う
上手になったねわたし
生きていく術を此処で学んだ
東京とワシントンとマンハッタン
どれも田舎者が構成する都会
どれもとても寂しい卑猥な街
三ヶ所何処へ行っても街角に立つ男女がいる
ウリ専の男の子はノン気でも売れるし
女児はランドセル越しのバックが得意
婆ァの女子高生は売れ残って困ってる
過熟した人妻は滴るフェロモンで悩殺
うらぶれた中年の男だって負けてない
細かい気配り火焙り鞭打ちされて稼ぐ
売れないわたしは売らないのと強がる
中途半端なわたしはきっと売れないし売らなきゃならないほど困ってないし
だけど泊まるところが無くて安売りしてみようかなど思う
きっと売れ残り
翌朝死体で発見
そうよわたしを消さなくちゃ
AIDSやBSE並みの凶悪
この世から抹消してゴミ箱へ放り込んできちんと消毒したら
はい
ゴミ箱を空にしよう
笑っちゃう地獄落ち
わたしには極楽なの

w廃棄申請

I've no present for you.
三歳のときサンタクロースが言った
You spend my welth.
小学校入学のとき父が言った
Never return.
嫁ぐ朝母が言った
Beat it!
何か気に障ると夫が言った
だからわたしは自分を殺そうと昨日も今日も多分明日もずっと
夢で何度も腹を割く首を切る頭を砕く
それなのに朝になると生きている
幾度入念に確かめても
掻き毟った蚯蚓腫れや昨夜の剃刀の切り傷や壁に打ち付けた痣だけ生きている
しぶとくも死にもせず生き延びる
許せない憎らしい殺したい消し去りたい
自己憐憫からの自殺じゃなくて単にこの身体を廃棄したいだけ
皆が言うように汚く邪魔だから
それだけなのです

w昴に寄せて

激痛に足を止め失血で膝をつく
振り仰げば夜空
一点の星もなし一閃の月もなし
虚栄の嘘を積み重ね裏切り逃避の罪重ね無意な星霜塗り重ね
来たりなば血みどろの此処な僻地
行く先に光は見えず
来し方に血肉と塵芥
今在る鮮血の沼にて転び惑い行き暮れる
目を凝らし希望見えず
目を閉ざし耳を澄ます
砂の擦れる音さえ響く
夢も現も静謐なる真闇
歩かれず止まれずにてまた生傷絶えぬ足擦りあてどなく彷徨うだけ
この生は何時何処にて如何にか終ゆる
其を望むや否や
身にも分からぬ
心もとなし旅路
またも歩みだす
この記事を評価する

wr疾風

長年連れ添ったCBR400でR1をぶっ飛ばす
小ベンツもパジェロもぶっ千切り
わたし風になる
過ぎ去る景色と一緒に
女も妻も課長も人間も全て振り切り吹き捨て
金も恋も仕事も責任も全部塵と化し無に帰す
生死不明
音楽不要
視界明瞭
風光明媚
機嫌良好
気分最高
気付いたら琵琶湖
足を滑らせる紅葉
初冬の訪れの予感
張り詰めた空気が煙草を美味にする
小春日和の陽光で貧弱なマックさえ極上贅沢な味わい
疲れた脚投げ出し落葉の中沈み込む
高く青い澄んだ空
このままこうして風化したいと願う
小春日和の悪意が
波音で囁く

r冬よ来い

冬よ来い
早く来い
傷付き疲れたあやちゃんが赤い血潮を垂れ流し地獄へ落ちたいと泣いている
こんな歌が唇から漏れる
小春日和は本当に苦手
あちこちの傷痕が疼く
疼痛は激痛より苦しい
失神を許されない痛みが絶え間なく責め立てる
真赤な血糊が干乾びて
わたしは一層醜くなる
わたし一番綺麗になる
わたし最も美しくなる
汚猥が綺麗
可憐が無残
ガラクタ集めたこの街には優しいランプの明かりより現住居宅放火の焔が似合う
さあ笑おうこんなにも悲しいから
さあ歌おうあんなにも苦しいから
さあ立って此処へおいでよ
其処は不似合い
彼方を見ないで今この時だけを楽しもう
狂ったように殺し合え
一番人間らしい
其れが人の本性
神の定めた性質
抗わず無抵抗に殺されろ
弱きは強きに
光は闇に
愛は幻に変えて
この世の終わりはもう直ぐ其処にある

The howling of a defeated dog.

負け犬と私を呼んだあなたへ
然様有体歴然事実だ
わたしは負けまいと足掻いた
それでもこの身体は心より早く崩れそう
何故白血球は減らない?
何故出血は止まらない?
ぬるい風呂に浸って破れた傷を掻き毟る
乳白色の湯が染まる
桜色に桃色に梅色に
湯がすっかり冷めて外気より冷たくなり薄紅色の汚濁となる
このままこうして冷水に浸っていれば楽になる
服も着たままだから恥も無い
眠りたい
貧血が心地良いから
悪い血を全部流して薬を飲み酒を飲み窓を閉め鍵を掛け夢の無い眠りに沈む
抗い難い甘い誘い
負け犬でいいよって
誰も泣かないよって
何の障りもないって
囁くのは
わたしだ

心が死んで久しい
体が病んで久しい
頭が狂って久しい
何もかもが久しくてわたしの居場所は無くなった
外出は禁止
みっともないから
コンビニは来店拒否
気違いが感染するから
わたしと並んで歩くのは恥かしい
わたしが骸骨のようだから
死んでしまえこんな心身
本当に死ねたら皆が幸せなのに
地獄まで来訪拒否
わたしが漬かると血の池が腐る
わたしが踏むと針の山が壊れる
わたしが焼かれると焔が消える
行き処の無い魂抱え今日は何処へ行こう今夜は如何過ごそう
深夜は多分眠れない
未明に漸く眠くなる
何処で寝ようか
安く身体売り汚れた愛と添い寝
其れが良い
一番幸福だ
安いこのわたしは時間百円
ねえ買わない?
抱っこしてよ!
感染させててあげるわ
この狂気

w生殺与奪

死を求むるに得ず
生を求むるに得ず
病に冒され
妻としても嫁としても女としても人としても
何一つ義務を果たせず
現実から逃げたくなる
人生には不可避の苦悩
死すること生きること
死の苦は誰しも受け入れ逃れようとする
生の苦はもがきながらも離すまいとする
都合の良い現実
目を逸らす真実
生きると死ぬとどちらが辛い?
生体と死体とはどちらが醜い?
蛆湧く死体こそ食物連鎖に従う最も自然な有体
何故に人間は死を忌むか
何故に誰かを思慕するか
何故に不具な者を嘲るか
五体満足でありながら何もせぬお前こそ真なる最たる愚者よ
思い知れ
吾が復讐は終わらない

rm阿漕が浦

体温より暑き夏
今年も盂蘭盆会が訪れ
去り往く世上は総じて霊に満ち溢れ零れ
生きしものは霊を擦れ触れ吸う飲み下せし
霊を五臓六腑に撒き血脈に波打ちて
やがて死人は生人の血肉となる
おぞましきこの世の理
廻り巡り帰る輪廻転生
終わり有りや此の二重成す螺旋
此処は阿漕が浦
盗みも殺めもせずただ禁猟した親思う息子の霊眠る漣打つ場所
立つ瀬無く浮かぶ瀬も無く此の浮世
唯徒に時は過ぎ行き悲しき物語は忘却の彼方此方浮かび
再びの悲劇を招き寄せた
昨日あの子が帰らなかった
今日この子が帰るだろうか
明日どの子が帰らぬものか
世は総じて死霊に満ち溢れ
盂蘭盆会に帰り損ねた死人今此処に浮かび
二度と沈まぬと
にやり笑った

w天蓋夢想

最新の記憶の空は西が茜で東が紫だった
何時の間にか反対になっている
多量の睡眠剤を飲んでも寝ずに
この忌々しい朝ってのを迎えた
夜空なんてこの世に存在しない
覚めながら魘されてふと思った
青空も星空も茜空もどれも無い
皆人間が勝手に作りあげた妄想
それら全ておこがましい人間がでっち上げ夢想した模造の天蓋
あまりにひ弱な毛の無い猿共が何とか守って欲しくて嘘っぱち傲慢と脆弱の証拠だ
月光は世の穢れを見せ付ける為
せめてと死んだ日光を反射する
月が死ぬときに宇宙そのものがほんの数時間見せてくれる星空
恩恵か押し売りか
神は何も語らず
アカシックレコードを捲る
次頁に記された歴史は一体
我等の滅びを含むか我等の延命を孕むかこのまま不動貫くか
誰も知らない真実は恐らく残酷が過ぎて知られてはならない近未来だろう
滅日は何時来る
明日か明後日か
誰も知らないけれどもう決まってる
近い将来は煤で真っ黒
この記事を評価する

w十九時の町

手垢で汚れた罅割れた窓の外は
十九時の町
霧雨降り排ガス漂い酸素不足の町
久々の勤務を終え帰宅を急ぐ人の群れが
鮮やかで雫垂れる傘の花咲かせる
傘の下ではちっぽけでかけがえの無い人間模様が隠れている
灯り始めた町の灯にも其々のドラマがあって喜怒哀楽達が交錯する
Israel launches operation to expel Gaza settlers.
そんなことより煮物の味付けが大事
Wave of Baghdad car bombings kills at least 43.
無視してカップラーメンの時間計る
Cyprus starts to bury its dead from air tragedy.
気にもせず今日の体重のほうが心配
Jet Crashes in Venezuela, Killing All 160 Onboard.
宮城県では他人の心配なんてしない
世界中の何処で誰が何時死んだって今目の前にいる人が話が事件が重大
サダムを本気で憎む日本人はいない
金正日を真剣に嫌う日本人もいない
どれも此れもお笑いのネタ
なんて平和でなんと不幸な狭い世界で生きる島国人達
死ぬまで飢えを知らないで
過食嘔吐に悩むわたしには批判する資格も意志も無く呆然と見ている
十九時の町

wmrp不徳の致す処により

六十数年前の盂蘭盆会
日本に熱風が吹き荒れた
一人の女の怨嗟は塵になり天空に舞って
一人の男の亡骸を日本全土の灰と混ぜて
恨み節歌う声は絶叫した
カエセかえせ返せ
誰かあたしのあの人を返して
どうかあたしの夫を帰らせて
何故にあの人は空高く散った
答えはあった
朕と自称する或る男が答えた
不徳ノ致ス処ニヨリ……
一人の男の不徳が
どれだけの男を殺したか
幾人の女を自死させたか
何人の子を飢えさせたか
数知れぬ老人を焼いたか
其の答えはたったの一言其の根源は一握りの軍師
取り返せない犠牲をただ一言で片付けた
不徳の致す処により
殺された人々は屠られた動物は煮られた魚類は許し安らぎ逝くだろうか
少なくとも一人の女は許さなかった
未だ残る火傷痕
燃えて失った髪
もげて落ちた指
そして散った夫
どれ一つ彼女には片付かない戦の証
決して許さぬと言い切る妻だった女
其れはわたしの祖母
彼女は神も仏も信じない
神を名乗った天皇を許さない
死ねと言い放つ
血絶えろと呪う
皇居の方角へ向い唾棄し先祖の墓をも蹴り飛ばす
戦後と名付けられて早六十年
彼女の戦後は到来しない
今の戦後がやがて戦前と呼ばれる日がくるまで
同じ悲しみにこの国が覆われるまで
彼女の憎悪は膨れ続ける
慰めの言葉をわたしは知らない

wp鬼女

巡る廻る季節は螺旋
エレベーターでもエスカレーターでもない
自力で登り降る鉄の階段
わたしの足は砕けそうに疲れて骨が折れて指がもげて血みどろ
下を見れば無限地獄
上を見れば燦爛天国
今は半ばに在る現世宙ぶらりんの此の世
いっそ地獄に堕ちて
腐った血の池に泳ぎ
毒のある死んだ血を飲み下し吐き出して
魂魄までも腐りたい
叶わぬ天国を眺め恨み言吐くよりも
ずっときっと安らか
こんな夢を見るわたしは不幸?
こんな夢しか見ないのは狂気?
それでいい
此の狂った現世を生きるには
世上に合わせて狂わなくては
其れが上手な生き方
其れが上手い世渡り
鬼しかいないこの塵界は
賽の河原より狂おしくて
絶え間なくわたしを責めるから
拷問者に従って狂うの
明日は恐らく巧く生きられる
もう抵抗は止めたもの
抗う術が尽きたわたし
明日からもっと狂って
鬼になる

w泥沼の華

立ち読みされた週刊誌みたいなひと夏の恋
ふやけて破れて折られ手垢のついた汚い恋
波打ち際の貝殻みたい綺麗だけど中身空っぽ
死んでしまった恋
心の沼に沈めておくわ
底無しの泥沼に
そうしたら誰にも触らせずに済む
あなたとわたしだけのどろどろの恋
いつか受精して蓮の花が咲くかもしれない
きっと白く清廉な花じゃなく極彩色のネオン街のような華
夜が似合う一人が似合う蓮華清らかでない分正直で真っ直ぐな想い
破り捨てられて踏み躙られた穢れた
恋愛に育たず死んだ恋
抜け殻が土用波に打ち砕かれ世界の海に広がるのが見える
壊れた恋の欠片は地球中に拡散して誰もがわたしとあなたを飲み込む
やがて水蒸気となり雨孕む雲となり全世界に降り注ぐ
皆思い知ればいい
こんなにも強く惹かれ結ばれ解けて破れ去った
一夏の情熱を
泥沼に咲く一つの蓮華を

w肝胆濯ごとく

肝胆相照らせば分かり合えるかな
肝胆砕けば恋慕あなたに届くかな
どんなに言葉を尽したとて如何に尽くして貢いだとて
この慕情寸分あなたに伝わらない
菖蒲咲き
めだか泳ぐ
この池
わたしの心は洗えるかしら
少しは綺麗になるのかしら
あなたの冴えた瞳と澄んだ心はこの穢土を見ようもとしない
この塵界に背を向け引篭もる
わたしの心は適度に汚れかなり頑丈になったから
あなたの敏感が理解不能
どうして嘘吐きが悲しいの
どうしてお世辞が嫌いなの
どうして上手く騙せないの
楽になるのに愛されるのに喜ばれるのに其れができないあなた
だからわたしこんなにも心ひかれる
わたしの肝臓と胆嚢を砕いて天日に干して乾かし粉にして
あなたに全部飲み下して欲しいと思う
わたしの肝胆は爪の垢と同じほど汚く
あなたに上手な生き方を教える薬効があるから
苦いわたしの内臓を飲んで辛いわたしの生血を啜って甘いわたしの肉を食らって
もっともっと強くなってね
わたしからあなたへの最後で最大のの贈り物

wひとり

一人と独り
同じ音なのにこんなに違う
一人だけなら諦めもついて思い切り泣けるのに
大勢の中での独りぼっちは泣くこともできない
平気を装い暗い階段で携帯相手にメールする
高周波マイクロ波に傷付いた心身を貫かれ委ね任せ
どうでも良くなって放り捨てたくなってやけくそになっても
この身も心もしつこく魂に纏い付き離れない
譬え死が訪れても
来世までにも背負い行く
因より生じた業がもたらす縁という
身と心と孤独と愛憎を

Monday, January 16, 2006

w藤が丘の首括りの部屋

笑っちまったよ
死ぬって言うと止めるのに
彼岸へ逝くって言うと頷く
丸きり意味分かってないね
分からせなかったんだから当然の応対か
日本語はいいね
同じ音で違う意味が表現可
感情は勘定に信条は身上に
狂々廻る思考回路はヒート
内燃機関の脳髄はショート
馬鹿笑いして飛ぶヒューズ
燻り煙たい部屋の中で独り
薄く汚れた天井見上げ揺れてる電燈眺めては
一緒にぶら下がろうと傍迷惑な願望膨らませ
結局何もできない癖に
アイツに予告電話する
絶対来るなと冷たく言い放ち
必ず来るから甘えた戯言吐く
どうしようもないこのわたし金百万で殺してよ
足りない? 服汚れる?
でも首吊りのほうが大小便垂れ流しだよ
首は三十cmに伸び青黒く膨れた顔から泥みたいな舌出して
そうなったらわたしやっと人並みのブスになれる
だからさ来るなのシグナル受け取って
早くわたしの傍に来て抱いて
あんたの両腕に包まれてならわたし生きていてもいいから
ねえ早く此処に来て
来ないでは来ての合図
もう合言葉
早く急いで慌てて来て
そして殺して
その腕でこの首を縊ってよ

w移ろう漂う魂

咲き匂う山の
桜の花の上に
霞出でし
春の夜の月

春は妖かし
魑魅魍魎が漫ろに歩く
春告げる梅に始まり松、桃、竹、桜、美しい兇器が萌え揃う
松竹梅は目出度くなど無い
神が下僕たる人に与えた最初の武器
神の奴卑だった泥人達は流された蛭子に煽動されて
国造りの苦役を厭い
紅白の梅花を叛旗として翻した
泥人達は
高天が原の松葉枝を千切り竹を折り笹を刈り青い梅の実を摘み
松葉のささらで神の眼を潰し竹槍で刺し笹で斬り青梅の毒を盛った
イザナギとイザナミの長子なのに醜いというだけで流し捨てられた蛭子
彼は未だ世を呪い続ける
福の神恵比須となり変わり
人に死と富と繁栄を授け
古代神への信仰を薄めていく
商売繁盛、子孫繁栄、不老長寿……
何れも他人を蹴落としたり肉欲に溺れたり天寿に逆らい医学に改信したり
皆国産みの神々への謀反
インド生まれの異教に座を乗っ取られ現代じゃ
初詣以外その存在と権威を穢土に失墜させた惨めな神々
だから今度は神々が
有毒の霊薬を世上に撒き散らす番だね
神の血脈は三種の神器の護りを忘れて久しい
近未来物語に米大頭領は出てくるけれどミカドは現れない
この弓形の島国に
行く末は有りや無しや?

雨過ぎし庭の
草葉の露の上に
しばしは宿る
夏の夜の月

火遊びをしよう
眩し過ぎる日光と有害の紫外線が人界の塵芥を隠してくれる
夜空を飾る極彩色の火の華を真似よう
昼夜の境を失くした街で
灼け付く海辺で
涼やかな高原で
申し訳程度の布を纏い
心と身体をモラルから解放しよう
土用波の頃には戯れも偽りも燃え尽きて
煤みたいな疵とメラニン色素を身体に擦り付け
足早に炎天は逃げ去るから
思い切り常識を蹴散らそう
勝ち逃げした夏の名残は不可視の心にだけ
癒されることの無い醜い火傷痕を残し
少年少女を男女に脱皮させる
羽化した中途半端な雄と雌は日焼け址を止どめて堕落という変態を遂げる
ぞっとする姿態の芋虫から妖美で醜怪な蛾に
夏の魔性は人を変える
罪にはちゃんと罰が下される
それで良い
夏は老いの季節だから
病の秋を迎える準備をして
死の冬眠を経て
再生の春と巡り合うための大切な老化の時
目眩き夏……

見る人の心々に
任せおきて
高嶺に清める
秋の夜の月

さらさらと木の葉が散り
さわさわと悩みが散り
ざらざわと命が散っていく
仰ぐ紅葉、降る紅葉、踏む紅葉
一夏の華美な毒を吸い血の色に染む紅葉
気の早い夕暮が宵闇に育つ頃
誰もが澄む星空と冴え凍る月に酔うから
見飽きられて見捨てられて霜付く土に還り
卯月待ち侘び朽ちて溶けるの

水鳥の声も
身に沁む
池の面にさながら氷る
冬の夜の月

冬は好き
小さな幸せが彼方此方とたくさん遭える
長く待ったバス、熱い珈琲、揚げたてコロッケ、屋台の焼き鳥と熱燗
乳白色のお風呂、暖かい部屋で冷たいビール、だんだん温まってくる布団
一日何度も、小さくて安くて、だから安心できる幸せを、冬はたくさんくれる
でもあの人死んでしまった
どうするのよ
あなたの背広やサーフボード
どうなるのよ
あなたに惚れちゃったあたし
あなた無しに生きていけないって言った癖に今もこうして生きている
この大馬鹿なあたし
生き残ったのは、弔うため、本気で泣くため、償うため
だからわたし今日も生きるよ
あなたが逝ったこの冬の空見て
あなたの手の温度を感じたこの冬を
この記事を評価する

w死せる君へ

俺が死んだとて誰が泣いてくれよう
お前は嘆く
だからわたしははわたしのために自分で泣くのだ
お前は泣く
千切れた手足焼け爛れた顔飛び出た臓物引き摺る皮膚
痛いか苦しいか悲しいか
お前は首を横に振る
そして一言だけ呟く
寂しいと
わたしも一言答える
皆同じと
お前は分からないと泣きじゃくる
わたしは感情を殺し黙って眺める
曙光がガラスを射し
伏せるお前をも貫く
お前にもわたしにも無情な朝は迫り来る
暫しの別れだ
また日が暮れ夜が来るまで
死んだお前と生きるわたし
もうその手を握れない
声は鼓膜を震わせない
体温を交すこともない
引き離されたお前とわたし
やがてわたしがお前の元へ行く
だからもう少し待っていてくれ
そう遠くない未来だから

w移ろいの1990.

何時からか
爽やかより寂しさを四季の移ろいに感じるようになって
大人になりきれず子供にとどまれず
ならばいっそ百才の姥女となり果てようか

あの日あの時あの場所
わたし決して忘れない
あなたの呼吸が止まる最後の吐息も
心電図や脳波が電子音と共に一直線になる画面も
何処にいるの
其処にいたの
知らなかった
ずっといたんだね
待っていたんだね

散る為に花
咲く枯れる為に芽吹く綺麗で儚い彩錦之花達
長い休みは直ぐ過ぎて短い恋は呆気なく破れ
傷付く度にわたし達綺麗になれる? 優しくなれる?
孵化し損ねた蝉のよう
濡れた白い羽は眩しい太陽に焼かれてもう飛べない
汚いわたし
蟻達の餌になるだけ

wAll to pieces.

東京には空が無い
或る詩人の妻がそう言った
まだあの頃はぎざぎざだけど仄青い空があったのに
彼女に教えてあげたい
東京の空はもっと小さくなりました
高層建築物の群れが凸凹に空を齧り
都会の人混みの中
振り仰ぐとまるで
曇天を写したジグソーパズルの数ピースをでたらめに上空へ放り投げたよう
しかも投げられたピースは全部裏返し
青灰色の模造紙が幾何学模様を描き世上の汚れを映し撥ね返す
そして東京には日の出も日の入りもなくなりました
大気汚染と人心汚染が成層圏に充満し
ビル達が地平線を削り
人工電飾が十六時に灯り
夜を失い久しい街は昼まで失いました
太陽は軽んじられてお怒りなのか
必死で慕うが届かないのか
人間の傲慢を嫌い拒むのか
恵みの陽光はネオンに負けるほどしか降らず
有害な紫外線だけが分厚い泥雲と廃瓦斯を貫いて地上を射す
昼夜無い街には二十四時間年中無休の有用利便店舗に集う白昼夢だけ
人も物も獣も鳥も虫も魚も夢のまた夢
夢の波飛沫青波銀波の泡
瞬間の煌めきを放ち呆気無く弾けて消える
人の夢は儚く
儚さが真実
幻夢で構築された砂上の街東京
大和の繁栄
次世代の都空を失った夢の都市は
ばらばらに……

義経

復讐と暴力と独裁
三つの病理を現代へ遺した男
唯ひたすら親の敵討ちと兄の寵愛を欲しがった哀れな男
一の谷の戦で取った数多の首を都の大通りに引き回し獄門の木に吊るした
保元の乱は祖父の仇
平治の乱は父親の仇
平家の武者の首共を引き回すことで逆賊を滅する励みにした
朝廷や法王の狙いは三種の神器の奪回だったのに
戦を避けろと諭されても聞き入れず追討軍を送り
平家を散々に追い詰めて
神器を返還の院宣は遅く
安徳天皇は仁井殿に抱かれ
神器は八つの天皇に抱かれ壇ノ浦の海深く沈んだ
どれほど探しても鏡と勾玉しか見付からず
大蛇を斬った剣は永遠に失われた
慕う兄に追われ惨死する断末のとき
彼は何を思ったのか
妻を別れ嘆いたのか
子を殺され泣いたか
吠ゆ犬を哀れんだか
愚管抄は綴る
封建を失うは武家が宝剣を代替する世に移るからだと
源義経
汚れた英雄は数知れぬ映像を観て雲上で何を思うのか
否地上へ落ちたのか
又奈落で恨み募るか
こんな蛮勇をいかに英雄へ写し出すのだろう
一年眺めてみたが
でっち上げられ美化されて
真実は無かった

wr三つの族

シーア
スンニ
クルド
三つの国ができるまでこの地の戦争は終わらない
あなたはそう語り左手を見せた
人差し指がなかった
舌か耳か指か?
サダム独裁中スンニ派兵士が訊いた
答える間もなく指は落とされた
あなたは真顔で底知れぬクルドの恨みを滲ませる
抑圧されても穏健だったシーアの人々が怒りの旅団と名乗り遂に銃を取った
果てしない銃撃戦に身を投じた
アラブ人同士の殺し合いが本格的に始まる
あなたは確信似た予言をする
国民議会選挙が占領終結に無意味だと知らしめるため
反米勢力は選挙後攻撃を激化する
生まれ来る子供達に平和はいまだ来ない
其れを野蛮と言うか
あなたは少し笑ってわたしに問い掛けた
わたしには考える時間があった
なのに何一つ回答できなかった
あなたは軽蔑混じりの視線投げ
わたしに背を向けた
たった一言
二度と来るなと告げて
其れが精一杯の優しさだと痛いほど分かっているけど
もう一度あなたに会いたい
生きていたら何時かきっと穏やかになった目でわたしを見て下さい
極東より祈りを込めて

wひとりで川を渡るとき

誰かの自殺を止める権利は
自殺に失敗して生き恥舐めてる自殺失敗者にしかない
冗談で死んでやると言ったり
つるんでしか死ねない奴等に
本気の自死は止められない
唯独り死に臨むとき人生で一番生に執着するもの
尽きた万策の中でたった一つ叶えば生きていられると
縋る藁を探しても蜘蛛の糸さえ掴めない
辛いね痛いね泣く力も無いね
わたしが君に言えるのは
生きてりゃ良いことあるなんて誤魔化しじゃなく
一緒に逝こうって一言それだけ
一人は怖いよ独りは暗いよ
君が行きたがる其処へわたしも連れてってよ
そう言うと君は初めて泣いた
そっか止めて欲しかったのか
ごめん気が付かなくて
君の死にたがり病は完治したみたいだね
わたしの仲間探しはまだまだ続くみたい
いいよ行けば
わたしが君の藁に成れたら好きなだけ引っ張って
わたしはいつか勝手に断ち切り
君を残して
一人で川を渡るよ

wA speeder!

The methylphenidate hydrochloride
For Attention Deficit Hyperactivity DisordersStimulants
and Amphetamines are for Substance Use Disorders
and Substance Indused Disorders
目が眩むような強烈な快感や多幸感が高揚した気分に変わってゆく
摂取して三十分位は強烈な興奮と快感
三時間から十二時間位は覚醒状態持続
夢が終われば激しい抑欝と疲労倦怠感と焦燥感
それに負けて連用すれば
脳内ドパミン系ニューロン賦活
幻覚や妄想の精神病症状出現
それもいいねここまでくるとさ
もうヤケもいいトコ
頻脈か徐脈瞳孔散大血圧上昇下降発汗悪寒嘔気嘔吐食欲低下体重減少
精神運動興奮か制止筋力低下呼吸抑制胸痛に不整脈
果ては錯乱痙攣の後はジスキネジージストニー昏睡で終わり
ストリートネームでカッコつけて
シャブ、ネタ、ブツ、クスリ、スピード、S、エス、アイス、アンポンタン
冷たいの、冷たいやつ、冷たい奴、キンギョ、金魚、ロケット、宇宙食
元締め、卸し元、ネタ元、売人、バイニン、シャブ屋、コシャに平身低頭
ポン中、シャブ中、宇宙人はスピーダーになってお仕舞い
そんなにヤリたきゃ一言いってよ
格安で調達してやるよ
自分の仲間増やすためにさ

wまほろば

急速な高度経済成長を果たした
この国が辿り着いたのは
目が合えば立派な殺人動機となる
血族他人構わず殺しあう電脳社会
夏さえ寒い満員電車では
犇く人々が誰とも視線を逸らし言葉を交わすこともなく
稀有なる縁を引き千切り孤独地獄に引きこもる
皆同じ化粧を施して同じ色に髪を染めて
瞳を塗り潰した顔で行き交う擦れ違う
現実を破棄し逃避し嘘で作り上げた虚構現実
己を電波に頼りばら撒く実像はなく
虚像だけの理想世界に生きる人々
ユートピアは見付かった?
見付からないから自分で作るのね
握り合う手も優しい声音も弾ける笑顔も全てが極上の嘘うそウソ
信じ助け合うことは愚行
義務を捨てる権利を主張
愛は初めから壊れていて
失うものも守るものないとても気楽な世界
快楽に溺れる社会
灰と塵が降る都会
凍える寒さの世間
無気力が漲る若者
時流に乗れない男
肥満過食に悩む女
飢えを知らない子
虐待を受ける老人
わたし達はきっと退化を極めた末に滅び間近な理想郷へ辿り着いたのだ
もう成長は要らない
何の努力も要らない
誰の情けも要らない
嗚呼此処が古の倭人が夢に描いた
まほろばだったのだね

wThe zoo.

文字を持たない生き物達の瞳は何故あんなにも美しいのだろう
ふらりと立ち寄った昔よく行った動物園
幼い目には恐ろしかった獅子や虎や熊達は
いつのまにか小さく見え何処か悲しく哀れと思う
檻を隔てて視線を交わす
わたしの目は捨て鉢で彼等の目は諦めを浮べ
同類相憐れみ堪え切れずに背中を向けた
なのに視線は追ってくる
動物園の何処へ行こうが彼等の視線は突き刺さる
お前は惨めだお前の負けだお前が哀れだお前こそ死ね
わたしは逃げる
彼等は追わない
追う価値もない
そう嘲笑ってる
そうなのだ
ZOOとは動物を人間が見る場所ではない
人間が動物に睥睨される場所だ
誰も気付かないのか
彼等の哄笑の雄叫び
あれは自由を奪われた獣達が
自由を奪いより狭い檻の中でもがく人間共を観察する場所だ
いたたまれずに裏門を抜け出る
逃げ出したって世間の檻の中だ
逃げおおせない行く場所もない
人間ってヤツは如何ともし難い厄介モノなのだ

wOh,my God!

神は我々を見捨てられたのか
体の痛みはすぐに癒える
心の傷みはやがて慣れる
だが死の悼みはいつか消えるだろうか
世界中に死臭が満ちる
全地上に悼みが広がる
消えはしない消せはしない消したくないこの抱えきれない悼み
創世の神よ
あなたはあなたの子等を抹消なさるか
ならばいっそ一瞬にして消してください
じわじわと苦しめて死に至らしめるのはあまりにも残酷です
世界のどの神様でもいい
どうか我等瑠璃星の子等に永遠の安息を与え給え
それがたとえ滅びであってもいい
目覚めのない永眠を
地水空に棲む生命に与え給え

wUntil death do us part.

大切な人に残されるのと
大切な人を残し逝くのと
どちらが辛いだろう
どちらが酷いだろう
置き去りはするのもされるのも共に痛み分け
悲しいなんて言葉では表せない
千の言葉を尽くしてもまだ全然足りない
見送るときは腐って骨だけになるまで抱いていたかった
先立つ予感の今は
脳死と同時に廃棄してと身勝手な我儘言う
おかしいね
周りばかりが騒ぐ
本人はまるで平静
早く逝かれるよう朝昼夜に祈ってる
生きたくても生きられない人がいる
そう叱咤される
死にたくても死なれない馬鹿もいる
そう罵声を返す
どちらも正しくてどちらも本音
如何に若くても如何な最後でも死に切れたならその瞬間が天寿
だから止めよう
抗うことや泣くことを
戦っても負けることがあると認めよう受け入れよう
だけどわたし自分からは負けない諦めない
最後の一息も最後の瞬きも全力で成し遂げる
皆は目を逸らしていいよ
独りで足掻くよ
死が我等を別つまで

wSelf murder.

合コンのような集団自殺ではなく
誰にも相談せず唯一人ひっそりと自死に臨むとき
その人は生涯で最も強い生への渇望を抱く
わたしがそうだった
生き延びるためにあらゆる手段を模索し手を尽くし頭を下げて延命の糸に縋るとも
その糸がぷつと切れ
暗黒へと落ちていく
その悲しみをわたしは知っている
闇の中生と死を量り
生き延びて為し得ることよりも
死がもたらす副産物が重くなり
絶望を超えた絶命に希望を見出してしまう
そして仕損じる
その生き恥を今
わたしは舐めている

w粉雪舞う

コンビニでいらっしゃいませと言って貰っただけで
泣きたくなるほどの寂しさを知っていますか?
自販機で欲しい煙草が売り切れなだけで
立ち尽くしてしまう侘しさを知っていますか?
孤独感は粉雪が降り積もるように胸の底に積み重なる
北風は意地悪で積雪を吹き散らすくせに
この胸の孤独は放置したままで
どんどん冷たくなっていく
わたしの心も寒くなる
いっそ霜付き凍ってしまえば楽なのに
そうもせず
木枯らしはぐるぐる舞って侘び寂びばかり
心の中に吹き溜める

wHow much?

人は良く生と死をコインの表と裏に例えるけれど
貨幣の価値は誰が定める? どう決める? いつ極める?
遺された者達が
遺った品を見て
遺して逝く時に
此岸の価値観で彼岸を値踏みし
遺した者を競売する
火葬場の煙は自らの無価値を嘆く死者の嗚咽
生者の安堵かも形見分けなんて哀切な滑稽なオークション
去るも残るも泣き面の道化師
笑顔の化粧を落とすのは何者? 何時? 何処? 如何?
値打ちの分だけ化粧が厚いから
輪廻転生の後も罪と業を塗った素顔でない顔で世上をさすらう
わたしは来世にどんな姿で生み出されるのだろう
叶うならリサイクル不能の反吐泥になって
永遠に廃棄されたい

wSAYONARA.

もう二度と
君を見られない
君に触れられない
君の声を聞かれない
君を感じられない
薄く閉ざされた君の双眸にわたしが映ることは無い
君の目は何も見ない
耳には何も届かない
冷たい手は動かない
折れた足は走らない
やっと憶えた日本語
アリガトサヨナラ
そっくり君に返すよ
同じ時を生きられてわたしは幸せだった
有難うさようなら永久に
Keep to your heart,SAYONARA.

w絆

望みは絶やすため
抱く夢は破るため
志は打ち砕くため
神はそれらを我等にお与えになられたのか
華やぐ聖夜
手を合わせひざまずき捧げたわたしの穢れた祈りと聖なる呪いは
空には届かず塵と化して踏み躙られ屑になった
路上にこびりついて干乾びた反吐のよう
剥がすにも労を要し放って置くには醜い
わたしのものなら何でも差出すから
唯一つ
あなたに会いたい
一分でも一秒でも一瞬でもいいからあなたに触れたい
こんな小さな願いそんな不義ですか
惹かれても結ばれない縁なら要らない欲しくない
なんて思えないこの不貞の想いは
どちらかが死ぬまで他人に踏まれ蹴られそれでも消えない
血みどろの絆だね

w名無しのコメンテイター様へ

わたしは自分を不幸で可哀想と思わない
どれだけ恵まれているか知っている
あなたはわたしを不幸気取病気自慢自己憐憫と呼ぶけれど
それは間違い
あなたは誇らしげにリスカの痕を数えるアムカの長さを測る
ならばあなたは自分の歯と力で手首を噛み切ったことがあるか
自分の腹を割いてぬめる臓物を引き摺り出したことがあるか
自らの口で歯で気分の血と糞の味噛み締めたことがあるか
その両手の指で白と黄色の脂肪を穿り返したkとがあるか
園芸用の花鋏で脈打つ頚動脈を切り剥がしたことがあるか
あなたは無言
絶句して電話を切った
あなたが生きているかわたしは知る気もない
だけどね
わたしとの通話履歴は消して頂戴
わたしを目障りと言うあなたも負けず劣らず傍迷惑な我儘野郎
わたしはあなたに好かれたくも無い

wUnrequited love.

絶対的な片思いはいいね
自分勝手に身勝手に我儘に想い募らせ胸を焦がし心燻らせる
でもその熱は決して相手に届けない伝えないぶつけない
とても明るく前向きに
自分の殻に閉じこもり
有らぬ想像掻き立てて
蕩ける愉悦に浸るだけ
きっと誰も懐いている懸想人との夢中の密会
叶わない報われない独り善がりの想いは
鉄をも溶かす熱さ竜鏡を凍らす寒さなのに
こんなにも心は温か
眩暈催す心地良さ

wTelephones.

あなたはいつも急襲する
殴るも蹴るも宥めるも煽てるも
ころころ変わる表情と態度
ついていくのにわたしが疲れて精神を破壊してしまったときも
あなたは嘲りなおも蹴ったのに
一体何時何処で何故に優しくなってしまったの
わたしは困り戸惑うだけ
お願い優しく扱わないで
わたし憎めない嫌えない
恨ませて怒らせて狂わせて死なせて
嫌だよ優しいあなたなど
わたしの生傷はこの胸の痛みは
あなたからの優しさではなくてあなたへの憎悪でしか癒せない
だから優しくしないで
二度と労わらないで
狂ったこの頭には冷え切った肌には
もう届かないもう感じない
煮え滾る憎悪だけが唯一の鎮痛剤
わたしからあなたへの愛を込めた報復手段

wSo happy.

睦月というのに生ぬるい夜明け
鳥の声で目覚めわんことジョグ
銀色の曙光射しオリオン座霞み
閃蒼く空染まる清冽な朝の訪れ
犬にブラシ掛けシャワーで禊し攪拌卵を二人分
お寝坊のあなた
冴えたわたしに
どうして布団を干さないと訊く
まだ夜露が降るからとわたし誤魔化す
ホントはね
あなたの匂いが消えちゃうから勿体無くて
口には出せないわたしの中の乙女の部分が
夜露より熱く肌をぬらす
笑っちゃうね
幸せ過ぎてね

猛し君と

青天の霹靂
君ってホントに
稲妻を孕む台風のように
わたしの身体だけひったくって心を置き去りにした
残された魂は冷ややかに身体を見送り
去り行く身は悲痛に魂を掴もうともがく
でもわたし知っている
名の通り猛々しい君に潜む弱さを
その繊細さにわたしの心魅かれた
なのに君は力強い腕でわたしの身だけ奪った
だからわたしの心は君が捨てた弱さと一緒に取り残された
身体を求め合う君と心で愛し合うわたしと
心身真二つに裂かれ
わたしは何時誰と如何に生きればいいの
どうしてわたし達
上手に人を愛せないのかな

Sunday, January 15, 2006

ライセンス

視線を絡めることも
指先に触れることも
黒髪を撫でることも許されないあなたへ
何故同じ時代に生まれたの
何故巡り会ってしまったの
帰りたい
あなたと出会う一瞬前に
そうしたら多分わたし達
偽りの幸せに酔い痴れて本物の愛を知らないまま
安全で平穏無事な人生を多分歩いていけたのにね
誰かライセンスを発行してください
真実で痛ましい恋を貫く許可証をください
もう一度だけ再認してください

あなたの涙を止める術など
わたし知らない知りたくもない
もっと泣いてよ
あなたの涙を全てわたし飲み干すわ
そうしたらきっとわたしの身体の七割以上あなたで満たされる
手を繋ぐことも許されず心だけで愛し合う
何も生まない不毛な恋は
そんなにもつまらなくて
比類無く純粋で美しくて
だからこそ脆くて
呆気無く壊れるの

w沙漠にて

舞台上のバレリーナ
道を行くアスリート
滑走するスキーヤー
車を操るドライバー
皆孤独だ
大勢に見守られながら圧倒的な孤独に耐える
唯独りだ
わたしの孤独は一人きりの独り
今此処で死ねば死体発見はいつだろう
何日後だか何年後だか
朽ち果て風化するまで放置されるのだろうか
消えたいと望んだ
幸せだった日々を
無意味に浪費した
悔やんでも謝罪しても贖罪は叶わない
いつだって後悔は遅過ぎて
誰でもが皆噛み締める苦味
太陽は昇るのか月は薄れるのか
我が身は如何に横たえらるのか引き裂かるのか
遠座す御仏にはこの声は届かずこの身は映らず
唯独りにて散り果つのみか
答えは無い
星々だけが痩身を飾る
ここは沙漠

w誰が被害者

太平洋戦争後
北朝鮮が日本人を誘拐した
欧州でそう言うと
間違いだ嘘を吐け逆だろう
そう返される
お前が嘘を教えるのか
お前が嘘を教わったか
どらかだと
そして今も東南アジア各国から女を調達していると指摘される
芸能人として身体のみならず心までも売り渡す彼女等は被害者でないというのか
被害者を名乗るあなた方に問う
在日亜細亜人のルーツを知ってそれでもなお
自分達だけが理不尽に悩む被害者ですと主張するのか
答えて欲しい

wrm**くそったれな世界へ!

Damn it!
Blast!
Hang it!
Confound!
Curse the man!
To hell with nonfulfillment of a contract!
誰も聞いていないから思いっ切りの悪口雑言
西と東と両方の国へ街へ
故郷へ見送る人も待つ人も逢いたい人もいない
それでも手足を縛る重い鎖は切られない
それは苦痛
しかし安全
自由に伴う義務を捨てわたしは
安楽な牢獄を選んだ
自業自得は来世まで持ち越し
今生は寂滅も涅槃も放棄した
縛る鎖は現世で断ち切りたい
死ねばそれきりがいい
輪廻転生などお断りだ
無縁の彷徨う霊になり世の終末を見届けたい

wThe cloud castle.

東京とNYはとても遠いのにどこか似ている
原住民は少なく田舎者が集まり
所詮は泡の繁栄に浮く浮草か
浮雲の幻の街
砂漠の蜃気楼
辿り着いてやっと知る
触れば弾けてしまう
掴もうとも実体のない虚空のmetropolisと
そのときはもう遅い
懐かしの故郷は遠く復して帰られぬ
二度と出られぬ浮かれ街の囚人
時間空間を刻むmmetoronomeに支配され
無意識に無責任に無礼に無情に我が為のみの快楽を貪って
重い自由に縛られて生き延びて
憧れの都会人になる

wNA DUE.

わたしはまさにどん底にいる
君の死を半年後に知ったよ
タイのゴム農園の小作人だと
はにかむ君はフットボール場で砂とボール蹴って確かに輝いていた
マレー語しか話せないムスリムは圧倒的マイノリティ
フットボールだけが楽しみと言う言葉には
フットボール以外に何の喜びもないという裏の意味が隠れていた
二十一時にダワに行くと言い残して
翌朝には蜂の巣になり発見された君
君の宗教活動は銃を持ち派出所を襲撃することなの?
一夜どころか一夙間にして二十一人のチーム全員がテロリストとして射殺された
地災天災水災続くも
尚平和を保ち続けるこの日本でのうのうと生きているわたし達は
何を如何に為せばいい

wHUMAN SHIELDS.

human sields
そう自称して笑顔で戦場を行進した人々
あなた方に問う
一致団結して楽しかったか
ちやほやされ嬉しかったか
あなた方に申す
何をやったか何ができたか
誰か救ったか傷を癒したか
あなた方に言う
だから言ったと
騙されていると
彼女は偽者だと
しかしあなた方はわたしなど相手にもせず
プラカードを高々と揚げて荒廃した町を意気揚々歩く
思い遣りか思い込みか思い上りか
あの場あの時に居合わせたわたしはもっとずっと無力だったけれど
今もあの場所に向かう
あなた方の何人が今もあの場所に心を痛めるのか
もう一度あなた方に訊きたい
もう一度戻る勇気がありますか?

w豪雪

雪吹雪が多いと何だか嬉しい
この弓形の国は大きく撓んで
国中の汚物が覆い隠され
雪崩で洗い流されてしまえばいいと思う
だってこの国には醜い欲が一杯で息もできない
親子夫婦の殺し合い虐待強盗強姦が日常
加害者も被害者もが
雑踏に紛れて溶けて
顔の無い匿名ばかり
遠方の残虐事件より目前のカップラーメンを気にする人々
天災は忘れる間も無くやって来る
緩かに確かに滅びに向かう
この日本はいっそ
暴風雨に呑み込まれプレートの歪みに弾かれて粉々に砕けて風に吹かれて
塵と舞い落ち
海の底に降るマリンスノーになれば良いのに
空に舞って風に煽られ母なる海に抱かれ
賤老若男女皆して
もう眠ろうよ

wThe harvest.

秋は収穫の季節です
米、栗、梨、秋刀魚、里芋……
大自然の恵みが一斉にわたし達を祝福するよう
収穫の祝祭りが其処此処で催され
人間達は
母なる地球の子等を同じ乳で育った兄弟姉妹達を貪り食う
毟るために培う栽培者
屠るために養う養殖者
愛情を込めて育てると嗤う
殺すために食すために
歪んだ慈しみを注ぐと哂う
笑いながら励まし合い汗を流して
瑠璃星の血を継いだもの言わぬ兄弟姉妹を葬り食い排泄する
歪つな環境保護を叫びながら

w鳥瞰

飢餓地獄の中や殺し合いの中で生まれ育った
可哀想と言われる子供達は
何故あんなにも澄んだ瞳で真正面から
わたし達を見つめるのだろう
わたし達に何を語るのだろう
高見の見物者を羨むのか蔑むのか
良い人気取りで実は人気取りの
綺麗な服と化粧で身を繕い付き人達や取材班を率いた
芸能人やボランティア共を
蠅を追うようにあしらい
物資だけを歓迎している
あの美しい瞳の子供達こそが憐れむ側なのだ
自分に陶酔している自称先進国の馬鹿共と
見下し高見から鳥瞰するのは多分彼等だと
写真を見て確信した

wStill in the dark.

眩しさを表すには真白な紙に一筋の黒墨を履けばいい
暗がりを示すには真黒な紙に一条の白墨を射せばいい
乾坤も善悪も正閏も貴賤も明暗も美醜も老若も生死も
全て表裏一体
二つで一つの完成品
光と影も一対なら
わたしに巣くう冷たい暗がりは真の闇じゃなくて熱の欠如? 光の不足?
熱い光を補えばわたしでも救われる?
なら頂戴よケチらずに
誰でもいい
真黒な未来予想図に一刷の白を一条の光を
輝きの汚れを拭うついでに
わたしに内在する闇へ擦り付けていって
それだけで屑のわたし
もう少しは死を延期できる
生を拒否しても

w蜘蛛の糸

悲しさは潮が満ちるように
切なさは月が満ちるように
寂しさは涙が満ちるように
わたしから湧き上がり溢れ出る
嬉しさや楽しさや喜びがわたしに溜まるのは何時になるでしょうか
辛酸はこんなに容易く手に入り胸底に沈殿して心濁らせるのに
甘い蜜は何故に入手が困難なの
欠片を掴んでも溜め息で流され寸時に逃げ行く
日々繰り返す悲喜劇の幕か降りるのは一体いつかしら
この解離性同一性障害者が安息を得るのはいつのことかな
自死なんて直ぐにでもできるのに躊躇うのは
ただ蜘蛛の糸が一本目の前に揺れるから
そのか細い糸たる君の寄越す手に縋るから

wPain.

どれほど言葉を尽くし自分の辛さを語ったって
辛さは減らない
どんなに親身になって相手を思いやろうとも
涙は止まらない
苦労を分かち合おうなんて嘘
たとえわたしの苦しみ痛みがどうにかあなたに伝わっても
苦痛は全く減らない
一人で噛み締めるの
孤独も辛酸も病苦も
分かって欲しいけど味わって欲しくない
こんな辛さはわたしだけで十分だから
その眩しい笑顔でわたしの闇を蹴散らして照らして
いつまでも笑ってて
何処までも走ってて
あなたの憂いはわたしが丸ごと引き受けてあげるから
あなたの笑顔だけで抱えきれない欝にわたし耐えられるから
それは持ちきれないほどのPain……

wShare.**************************

朝日が真っ黒に見える
こんな気持ち
誰にぶち撒ければ楽になるかしらね
どろどろの鬱を誰か1%でも分かってくれるのかな
明るい曙光がわたしを容赦無く射るから痛くてさ
元気な子供が楽し気な声を上げて歩くのを妬んで
もっと鬱だよ
本当は誰かに分かって欲しい癖して精一杯の虚勢
助けてと大声で泣いて縋りたいのに呑み込んだ涙
いつからかないつまでかな
一人よがりの願い押し付け
心の中で叫ぶ
誰でもいいの
ほんの僅かな本当の苦痛を分かち合うと約束しない?
同じ病の誰か唯一のお願い
share!

Saturday, January 14, 2006

wThe likes of me.

精一杯の強がりを吐き出して
押し殺した弱音を飲み込めば
強さと優しさの糧となるのだろうか
精神を蝕む病原体になるのだろうか
助けて下さい
縋る藁さえも失った虫けら以下のわたしを
生きたくない死にたくないただ消えたい
誰かわたしを漂白除菌して
一瞬でいい綺羅にして
生き直したい
生まれ変わるのでなく
今までの自分を咀嚼消化吸収してこの人生を生き直したい
似たような方いませんか?

ワシントンの掟

居場所が無いのなら作れ
時間が無くても捻り出せ
要求されたものは全て提供しろ
できるできないは訊いていない
やるかやらないか訊いているだけだ
此れがワシントンの掟
厳しく非情で冷血な街の常識
十八でこの洗礼を受け
わたしは冷血になった
昇ったのか落ちたのか今は分からないけれど
義務を果たさず権利を主張する近頃の馬鹿野郎共と一緒にされたくない
わたしは自力で此処迄来た
誰がどう貶そうとも其れだけはわたしの唯一の誇り
電脳女でいい
機械仕掛けでいい
ウェヴに逃げ込み顔を晒さず隠して他人を謗る奴こそ
喩えヴァーチャルな人気者でも最低の生物だと思う
勝手に繋がれる回線
送りつけられる書面
何もかもうんざりだ
でも止めないのはわたしも卑怯者だから
わたしが臆病な小者だからこその特権
其処のあんたすっごい嫌い
要求されれば全て提供するけど其れは終始が金のため
あんたのためじゃない
忘れンな
この返礼は高いぜ

w道化師

日曜日の入院病棟は家族の賑わいで溢れ
独り者の居場所無く
この心身を持て余す
晴れてれば尚更孤独
雨なら雨で傷が疼く
どっちにしたって辛い
同じ思いの独り者達はつらつらとうろうろと
一番奥の一部屋に集い
空元気を振り絞る寂しい?
悲しい?
それは禁句の約束
口に出して言葉にしたら
胸底に隠す想いが破裂して
必死に取り繕ってきた虚勢が上辺が冗談が崩壊する
それはもう再起不能全壊滅焼焦土
だから目一杯嘘を吐こうよ
平気な振り楽しい振り笑いの振り元気な振り
果敢なくも一層大切な嘘で固めた架空の現実
真実は不要だって
わたし達いつもピエロ
厚化粧で涙隠す壊れたピエロ

w君がいない冬

君がいない冬が今年もまた訪れ早くも過ぎ去る
二人出会った季節は
幸せとはいえないけど確かに輝き眩しかった
君の吐息を今も感じる
君の囁きが今も耳打つ
好きだよ
あたしも
何て可愛いごっこ遊び
子供らしい無邪気な恋
だからこそ真剣だった
互いに少し大人になり
守るべきものを見つけ
失いたくない人ができ
二人遠く離れていった
何となくの別れ
理由無しの失恋
手放した恋の代わりに新しい重い愛を抱える
何時が一番幸せだったろう
何処が最も楽しかったろう
誰と一番一緒にいたいのか
問わず語りの押し問答
答えは皆知ってる
初恋
一番幸せだった頃夢見てた頃を過ぎ
あたし達幸せだと自分に言い聞かせる
大人になった

w愛は呪い

君を憎みたい
君を許せない
君を愛せない
君を殺したい
こんなに君を想っても届かなかった妄想願望
裏返せば憎い
わたしを憎んで
わたしを恨んで
わたしを嫌って
わたしを殺して
君の想いもわたしに通じない
何故擦れ違うの
袖擦り合っても縁なくしてならただのパッセンジャー
それがこんなに想い膨らみ
愛憎混じり醜く汚く穢れ落ち
欠片の清廉も無いどろどろの底なし沼になった
戻りたいね
二人出会う前に
多分戻っても同じ道を辿るね
互い身をひかず何も捨てないでもっと欲しいと大声で叫び願う
憎んでも忘れない
其れはもう呪い
この狂った世界
君だけが綺麗で
君だけだ醜怪で
誰よりも愛してる

wギンギラギンにさりげなく

ケータイと大声で話し
電車内で化粧して
超ミニスカートにラメ入りのピンヒール
蒼いアイシャドウと黒いマスカラ
ローズの唇で焼肉を食う
どうかしら
あなたの嫌いな女になったわ
これで嫌ってくれるかな
もう優しくしないでね
凍るほど冷たくしてね
かなりわたし楽になる
完全にフラれたら
何時フラれるかと怯えずに済むから
尽くしてフラれたらあんまりにも辛いから
わたし自分で楽になる
怯えて暮らしてた昨日とはさよなら
新しい自分になって
ド派手に騒がしく図々しく嫌われながら生きていくわ
好かれると困るのよ
慣れてないし
似合わないし
何より好きになっちゃうし
そしたら弱くなっちゃうし
ケバい化粧は自己防衛よ
大人しく誰からも好かれる善い人なんて
もう真っ平
ギンギラギンに
さりげなく
嫌われたいの

w不良品

誰も彼も年が変わると
何か目標を立てたがる
何かになる
何かを掴む
何かに至る
浅ましいほどに達成に執着する
今のままじゃダメなの?
去年のわたしは不良品?
でももし何も達しなければ
わたしは何?
廃棄物?
不用物?
壊れ物?
今このわたしが否定される
明日のわたしは肯定される
そんな補償は何処にもなく
ただ無目的にがむしゃらに
何かを手に入れようともがいている
そんなわたしでは駄目なの
何かになり何かを掴み何かに至るわたしにならなきゃ
わたしはいつまでも
不良品のまま
旧過ぎて部品の在庫も無い
不良品のまま
リコールさえ受け付けられない
不良品のまま

wこの命は誰のもの

生けるもの全て
生まれ出た瞬間から他の生命を屠り
自己の血肉に変えて生きている
この地球上で
食すに相応しいものは
食さるため存ずる蜜と乳と果実のになれど
我等の息の根は宙を漂う微生物を殺す
芋藻穀類は生命の宝庫
後の世に生まれ出ずる子々孫々の種
坊主はそれら静物に生命を認めぬか
何故にそれらをば食うに適すと申すか
如何にそれらの繁栄を妨げ得るのか
動かずとも
樹は樹草は草藻は生き
輝ける未来を夢見る筈
物言わぬ彼らの痛み苦しみ恨みなど一顧だに値せぬ
声明と釈迦の教え基督の言葉説く者が言う
其れは悲しき人の本性
其れが冷たき人の性質
其れこそ避け難き生来
気付き無き憐れなる者の怨嗟の連鎖は連綿続き
何時の日にか我等に襲い掛かろうに
海の怒り地の嘆き天の諦めを
我らは唯に理不尽と恨み返す
真の理不尽は動き屠るもので
真の意趣返し受けたものなり
食い放題
殺し放題
荒らし放題
挙句に心病み生命を吐き出す現代病は
人のみ非ず
鳥獣魚も肥え太り脂に悩む
食ったものを吐き又食い続ける狂気
その病に憑かれし吾が命
誰がために我が命誰に捧げん
祈り給えとは許し給えとは
狡猾な宗教の集金手段
この命を終に帰すには誰が許しを請えばいい
吾何を
如何為せばいい

wrm宇宙船ペペペペロン

  • 宇宙船ペペペロンは旅に立った
    滅亡に瀕した地球の希望だった
    二十五人の子供を乗せて遠くへ
    遥か彼方アンドロメダへ向った
    十二人の女の子と十三人の男の子が
    二十四個しか冷凍睡眠カプセルの無い船にいた
    活発な子は大急ぎでパートナーを見つけ手を繋ぐ
    泣き虫ロンは一人きり
    食事も睡眠も独りきり
    でもまだ希望があった
    新しい女の子が生まれれば
    その子と対を成し手を握り
    未知なるアンドロメダにて
    再びの人類繁殖の源となる
    けれどアンドロメダは遠く
    冷凍睡眠無しには辿り着けない
    だから皆は共謀した
    ペペペペロンの外壁に傷ができたと
    男の子全員が外に出た
    ロンだけは船尾を調べるよう頼まれ
    ロンは怖々船尾へ向った
    ロンを残しドアは閉まった
    凄まじい炎噴きペペペペロンは再び旅立った
    引き返せない永遠の旅路
    往く中では
    仲良く幼い男女が愛を確かめ合って
    何時終わるとも知れない冷凍睡眠に就いた
    独り残されたロンは一人ぼっちで彷徨う
    何処を探しても仲間はいない
    否仲間は最初からいなかった
    邪魔者ロンは気が付いた
    泣き虫ロンは気が触れた
    遠い旅路を遡る
    懐かしい地球は遥か彼方
    ペペペペロンも遥か此方
    背負う酸素ボンベが尽き
    気の違ったロンは安らいだ
    懐かしい地球は遥か彼方
    懐かしい地球へと降る星
    懐かしい地球にロンの星は降る
    光が地球に届く頃
    懐かしい地球には誰もいない
    ロンの光を見るものはいない
    泣き虫ロンは遥か彼方
    星になっても一人
    光になっても独り
    この記事を評価する

wI make a bow.

貴方の頭上百フィートから
なだらかな弧を描き
わたしの頭上百フィートへ一直線に繋がる
二人を遮るものは無い
わたし達は何時だって一緒
距離も時間も日付も捨てて
もうわたし達は途切れない
出会う前には戻れないから
次に逢う時を待ちましょう
あなたの吐息が水蒸気になり
わたしへ降り注ぐ
あなたの声が木霊して
わたしの鼓膜打つ
あなたの温もりが風に運ばれ
わたしを柔に包む
こんなに離れてて
電話も許されず
逢うなんてとんでもない
わたし達だけど
後悔より希望をもとうね
背徳も純愛に変えようね
だけど約束はしないでね
期待させない冷たさがあなたの優しさだから
期待しない潔さがわたしの精一杯の愛だから
結ばねば破れない
約束しないままがいい
だって今こうしていてもあなたを五感すべてて感じるもの
逢わなくていいの
そのほうがいいの
誰にも咎められず
あなたとわたし愛し合う
死が二人を別つなら彼岸で一世になりましょう
そして来世ではわたしがあなたを産んであげる
途切れない思い
狂々まわる思い
二人だけの螺旋
永遠の誓い

wWellcom,baby!

大人になどなりたくない
世間に迎合し媚び売って上手に世渡りなんて嫌だ
そう思った時が
大人への第一歩
否応無く大人へ変貌する時なの
生き物はね
成長しなくても老いるものなのよ
喩え大人にならずに子供のまま引篭もり
両親が死んで兄弟も死んで友人は去って誰もいなくなって
白髪の老人になる
それでもまだ大人になりたくないと言うの
老人になっても子供と言うの
呆れた御伽噺ね
一瞬の死は無いよ
じわじわと老いてゆっくり死ぬのよ
歯が抜けて皺だらけ
白髪頭も薄くなり
そんな風体で何処が子供なの
こんな言葉も受け入れないの
あんな場所に閉じこもり続け
君は何を望むの
大人にならなくても老人になってしまう
この疑えない現実をいい加減認めなさい
さあ其処から出てきなさい
そして媚と嘘を覚えなさい
純粋と正直は自他ともに傷つける刃
あんたの凶器を狂気と一緒に
今わたしが取り払ってあげる
其れがわたしの情け
無情な世上の辛い掟
掟破りになれるのは
一度掟に従ったものだけよ
覆いもしない掟は破れない
掟破りを気取りたいのなら
さあ今直ぐ其処から出ていらっしゃい
教えてあげる
涙枯れ声嗄れ血を流す
この世の常識を

wDo or die.

生きろ!!!
自分に叫ぶ
自分を叱咤する
でも激励はできない
死んだほうが楽と思う
この身に巣食う悪性腫瘍は止まりを知らずに増殖する
それともわたしが養うのか
この身を食わせ繁殖させる
其れが真実か
誰をも責められず独り一人ICUのベッド上でもがく
振り回す手を握り返す手は無く
噴出す声を受け止める耳は無く
ただ激しい痛みだけが寄り添う
今に死神がくるか
ならいいのだけど
どうせ死神もこない
きっと生き延びてしまう
運ばれた病院で連絡先を決して言わず
自分で全ての情けを拒否した
自分で招いた孤独
自分が望んだ孤高
なんて格好つけて
自分が一番わかる
独りの怖さゆえに誰にも報せないの
怖いから
報せても誰一人来ないときの寂しさが
辛いからもし来てくれても元気な振りできない
知らぬ間に夜明け
痛みに慣れた頭はぼんやりと
ぼやける建造物の輪郭辿る
日が昇る
痛みが走る
ナースも走る
血圧は下がる
白血球は急増
まだ終わらない終われない終わりたい
この屑の人生

w異邦人

生き延びて分かる
生きてるって感触
自発呼吸を取り戻した自分を
褒めようか叱ろうか迷ってる
食べられもしないのに食事を運ぶヘルパー達
口を利かないわたしに何人と尋ねた
わたしは何処へ行ってもそう訊かれる
何人なのかと
わたしは笑いながらいつも通り答える
地球人だよと
そういえば初めてのバイトの際困った
履歴書の記載
本籍地欄には都道府県だけ
国が書けない
それだけで落ちた
この島国は皆一緒が好き
飛びぬけて綺麗だったり
ずば抜けて利口だったり
それら全部が苛めの理由
何時頃からだったろうか
苛められる前に苛めるようになったの
こんなわたし卑怯で卑屈で大嫌いなの
でも死ねないから生きるしかなかった
ならば強く狡くなりたい
誰をも傷つけ嫌われ愛想尽かされてね
わたしが死んでも誰も悲しまないよう嫌な女になりたい
もうなってるな
まだ足りないな
だってわたしまだこんなに弱く愚かで
駆けつけたこの人を泣かせてしまった
阿呆だね
わたしもあなたも
免許証とケータイもってだんまりなんてね
無言で報せてってお願いしたようなものだ
もっとずっとっ必ずわたし汚れてみせる
待っててね
もう泣かせない
嫌わせてあげる
もう泣かないで
憎ませてあげる
一粒の涙にも値しない
見知らぬ異邦人に還るから

w心の満ち欠け

昔偉い人が言った
あるがままの醜さを曝け出して尚
愛して貰おうなど
虫がよすぎると
このお盆墓参りに行ったお寺で
おっ様が仰った
心の満ち欠けは月に左右されず
台風や旱魃にも影響受けず
自我のみに因ると
少し分かった気がした
此処は集中治療室
命の出入りが激しい所
隣で唸っていた誰かが今朝には何も言わなくなった
足ることを知れ
父から言われた
秘められた意味
きっと他人に対しては自分の廻り全部に感謝して満足し
自分に対しては決して飽かず満たさず追い続けろ
あの父の言葉は多分そんな意味だったのだろう
世間で問われる生活の満足度もきっと自分が決めるものなのだ
何かを基準にして誰かを目標にして何処かを的にしてわたし生きてきた
だからいつも足りなかった
何を貰っても不満足だった
誰を奪っても不平漏らした
生き方を変えるの遅いかな
間に合うね
過ちを正すに遅過ぎること無しと名言が残ってる
歩けば棒に当たるかも
石橋叩けば崩れるかも
馬は念仏を解するかも
瑠璃は磨けど鈍色かも
色んな期待と不安入り混ぜ
生き延びたわたしがすることは
今目の前で泣いている優しい人を泣かせないこと
嫌われようか愛されようか嫌われようが愛されようが
この現実は真実
ごめんね
もう泣かせない
できるなら愛し愛されて
一緒に生きよう
こんなわたし
許してね

w世界で唯一の花

僕等は皆世界で一つだけの花
その花を咲かせることだけに一生懸命になればいいのだよ
それって負け犬の遠吠え?
戦争を囃し立てる賛美歌?
怠惰を許す傲慢な吐瀉物?
全部だね
世界で一つだけだから大切な命だと言いたいそう
でなければ自分の存在価値がなくなってしまうから
義務を果たさぬ権利を当然として振りかざす
働かず学ばず養われる軟弱な養殖若人や子供
戦争で闘ったから充分
高度成長期を支えたと
どっさり貯金溜め込み
嫁にオムツを替えさせ
羞恥も糞も一緒の老人
皆が言う
世界で唯一の存在だから自分は有価値だ
かけがえの無い命だから自分は有意義だ
生きていていいのだと
誰かに言って欲しくて
捏造された命の賛美歌
偽造された自我の意味
変造された生命の価値
無益に費やす時間と金と食物
有害に垂れ流す嘘と糞と小便
地球をこんなにも汚しながら自分は唯一に存在だから生きる価値があると言う
じゃあ蝿は蚊は蜘蛛は?
獣は鳥は魚はどうなの?
皆其々に唯一無二の存在なのに平気で殺しちゃうならば
あんた達も一瞬で蒸発したからって哀れみを世界に乞うてはならない
寧ろ感謝すべきよ
苦しまず無自覚で死ねたのだから
ヒロシマもナガサキも
ビキニ湾岩礁の悲劇と較べるなら
慈悲と記せる瞬時の死
ジェリベイビーをみたことあるか
骨も無い半透明の胎児
被爆者の悲劇は分かる
でもそれ以上の苦しみが今現実に遠い国に満ち満ちてる
どうか目を外に向けて
報道陣に隠された真実を直視して
もう被害者面はやめて
唯一無二の意味を知り
できるのにしないことを今直ぐにして
それすらできないなら
この倭人の国の未来は無い

Friday, January 13, 2006

wrm桜色

桜の下には死体が埋まっている
梶井基次郎が書き残した名言は幼いわたしを怯えさせた
何故知ってるのだろうか
わたしが埋めた猫の死体
言うこと聞かず引っ掻き
腹が立ったから縊ったの
そしたら呆気なく死んじゃった
本当は気絶してのかも知れない
でも寝覚めた猫の仕返しが怖く
桜の木の下にスコップで穴掘り
猫を放り入れ
とどめに枝で両目を貫いて
入念に殺して
黒土を被せた
あの桜は次の春満開に咲き誇り
他の桜よりもずっと赤く見えた
わたしの気のせいだったろうか
でも確かにあの桜は濃い紅色で重たい猫の恨みで枝垂れていた
だってあのとき友達は皆塾や家へ行っちゃって
わたし一人きりとても寂しくて
猫と慰め合おうそう思っただけ
殺す気は無かったし殺した実感も無かったし
唯あの桜が余りに赤く重く長くこれ見よがしに咲き続けるから
わたしやっと殺した実感覚えた
気味悪いよりも気分爽快だった
弱いものは死ねばいい
強いものが食えばいい
幼い頃の記憶は確実に今のわたしを築き上げ
猫の血もわたしの中に残ってる
だからわたし好きなのね
人殺しが
自分殺しが
止まらないのね
桜色の狂気は増殖続ける
今もなおほら
こんな風に
この記事を評価する

wアンスピラシオン~創意

桜は決して人間にめでられようと作為の上に咲く訳ではでないのに
人間は御目出度くも
桜が人を喜ばせようと咲くのだと
新たな年度を祝うため咲くのだと
誤解する
ありもしない目的が叶っていると言い張る
カントは其れを説明した
目的無き合目的性として
難しい哲学より易しい
作詞より優しい
風景こそ愛でるに値するのに
小難しい屁理屈付け
眼前の花を否定する
嫌な大人にわたしもなった
厭な奴にもお世辞が言える屑共の仲間にやっと入った
捨てた純粋より得られた収入が
今のわたしには重要
明日のわたしはもっと欲しがるだろう
明後日のわたしは更に上方を目指して
一年後には今の望みをきっと手にする
十年後も欲は膨れ続け飽くこと知らず
もっともっとと無間地獄にいるだろう
そして気が付く
何一つ産まずに何一つ残さずに唯一人ぼっちで消えていく
その怖さを
だからって何かを生み創る能力がわたしには無い
こんな屑唯一人
消えて逝け

w天使の殺意

ティーンエイジャーが人を殺す
マスコミは蝿の如く群れ集まり
五年は会っていない元同級生に
昔の其の子について根堀尋ねる
マスコミが期待する証言は必ず
とても大人しかった
あまり喋らなかった
変わった趣味を持っていた
一人でいることが多かった
等等暗いもの
どす黒いもの
間違っても
明るかった賢かった率先者だった人気があったなどと答えてはならない
期待に添うよう嘘吐くのは
今時の子供の得意技
今の子は知的レヴェルは低下したけど
昔の子より世渡りレヴェルだけ急上昇
何を期待されてるか
何をいって欲しいか
何をたって欲しいか
全部わかって言動している
舐めちゃいけない
彼らは異種の生物
奴等は未知の生態
大人の知らないこの世の闇を
わたしが考え付かない病みを
しっかり見据えて動いている
注意すべきは脳波
彼らの脳はつるんと滑らかで一筋の皺もなく艶やかで綺麗
罪悪を知らず小動物を殺すし
同じ気構えで気楽に人を殺し
ついうっかりして親をも殺す
責めても無駄
彼らに罪の意識はないから
彼らが泣くのは謝るのは
身につけた世渡り術と戸惑いから出る贖罪
彼らは知らないの
生命を身勝手に引き裂くのが悪いことだって
生き物は刺しても絞めても焼いても殴っても
リセットすれば元通り
さあまた殺しあおうと
死体が生き返る時を
無邪気に待ってる
尋問は経費税金時間の無駄
更生も害虫駆除に全く無益
ゴキブリは消毒したら死んじゃうから
彼らの垢もフケも世間に対する鎧なの
生まれからして卑しいの
わたし達の歪んだ世代が生み出した怪物
其れが今時のティーンエイジャー
親殺しは意趣返し
安全な子宮内から危険な外界へ生み出された呪い
彼らはこの世を壊すため下った天使かも知れない
無垢なまま生き血を浴びる
それでもへらへら笑ってる
なんて美しい天使だろう
殺戮の天使
その名はティーンエイジャー

w表裏三面

駅のベンチに放置された安いダブつく週刊誌
スクープの斜め文字が躍ってる
誰かと誰かが真夜中に密会とか
起訴から十年の彼奴が死刑とか
未だ法の目を潜る犯人目撃とか
如何にも自分だけが知ってるように書き立てる
薄給のブン屋
給料に見合うだけの薄っ平い記事を書く
知らないね
こいつ等が自慢する社会の裏は想定内の裏と闇
闇取引も裏金も公表を許される小奇麗な裏側で
賽の相対面のように足せば七となるべく
定められた予定調和の裏側
暴露された側が提訴しても
金出して侘びれば片が付く
秩序に則った裏秩序を乗っ取った
裏を知りたい?
本当に裏を知る積り?
本当のおぞましさも?
知りたいなら
足りないなら
此処へおいで
教えてあげる
本当のグロテスク
其れは三面鏡に移した無限の連続世界
一瞬が永遠に固定する無間の地獄の闇
多面体を解体してやっと見出せる裏は
現実に内包されて見ているのに気付かないモノ
裏側は内側
現実を構築する立方体を平面に開いてやっと明るみ晒される
けれど暴露されたときは既に崩壊中
もう隠す必要もない
今まで日陰にいた真実は
太陽に炙られ乾き強固で
今度は裏が表を覆す
常識は非常識に賢人は凡夫に狡猾は愚鈍に代わり
わたし達の時代が到来する
この世は表裏一体でありながら不自然な三面体
在り得ない立方体が実現するまで
もうほんの少し闇に紛れている
あと少しだから
狂った脳が支配する時代の到来は

鉄の処女

寂しかった
会いたかった
口癖になっちゃった
君の背中ばかり見て生きてきたから
君の顔が思い出せない
こんなにも好きなのに
君の顔は夢でも曇ってる
君の声は電波に変換されていつも無機質
抑揚なく相槌打つだけ
自分からは何も話さない
わたしのこと好き?
ああ好きだよ
愛してる?
愛してるよ
悲しいくらい手応えはなく
月の満ち欠け潮の満ち引きのよう
自動的に機械的に繰り返し繰り返し
囁くだけで抱いてくれない
伸ばした手を握り返してくれない
わたしの心も有機から無機へ
鉄の女になったよ
もう誰からも傷付けられぬように
喩え君だって傷付けられぬように
硬質で冷たいわたし
アイアン・メイデン

w闇の中

よく夢を見る
自分で自分を殺す夢
鋸でギシギシガリガリ何度も往復して首を落とす
左耳が痛い
地面に直撃したから
視界が低くなる
視野は広くなる
地を這う虫の視野だ
肩から上を虚ろにした肩から下が
ふらふら歩く
わたしは無声で命令する
さあその岩を持ち上げて
この頭部へ突き落とすの
ゆらゆらと体が動く
痩せた腕が大きな岩を持ち上げ落とす
わたしの右目が爆ぜる
水晶体の中の液と血が口に垂れ込む
不味い
更に低い視野から命じる
さあもう一度
今度は鼻が砕ける
気道に血と脳漿が流れ込み
ぐしゃぐしゃの切断面から飛び散る
まだだ
最後の一撃は左目を潰し
わたしの視界は闇になる
やっと得た安息
唯束の間の安楽なのに
曙光がわたしを貫き
夢から引き摺り戻す
生きている
五体満足で
生き延びた
また今日も
そして闇より暗い一日が
大釜の口を開けてわたしを待っている
もう逃げたい

w裏切りの街

シケたバーで一夜の恋が始まった
ウブなあの娘はお初の客と裏口へ
ゲロと糞尿の臭気立ち込める通路
其処はお隣ラブホへの裏出入り口
ママがぼやく
あの娘ちゃんとできるかしらねスキミング
そう此処は情報屋
クレジットカード狙い
若い女を餌に
老けた男を釣る処
新入りの娘は試される
最初に気のあった男を裏切れるか
情報売買は一度犯せばもう共犯で
抜けるには小指一本じゃ足りない
裏切りの街で裏切られ
傷付き来た男女が群れるこの街角
盛りの猫が交わる嬌声
歩きながらゲロする人
そのゲロを食う野良犬
皆共同体
結束は固く
だけど崩れやすい駄作
測量せずに築いた楼閣
砂より流れる反泥の上
気をつけて
滑って転んだら蟲共が集り
我先に引っ手繰る
裏切りの裏切りは真当
汚い街の必要最低常識
此処は情報屋
さてあの娘は
盗めるか止めるか逃げるかそれとも死ぬかしかない
此処は
裏切りの街

w湿気た夜

ボロボロズタズタに疲れ果て
やっと辿り着く寝床
干してない布団は湿って固く
もっと疲れが増える
熱さと勢いを欠くシャワーは何時途切れるかも分からない
隣じゃ不眠症の引き籠もりが
チャラピラゲームの音立てる
ソープの香りだけがわたしの癒しだけど
頼みのソープさえもゴキブリに食われて台無しね
壊れたTVに苛立ち
聞き飽きたCDだけ
視界に綺麗なものは皆無
朝食べ残したバゲットがねずみに齧られ黴が生え
もう今はただのゴミ
温いビールが夕食
つまみはスキッパーのピーナツバター
甘くないざらつくわたしの好物
もう満腹
でも不満
何がって
あんたの不在
わたし待つタイプの女じゃない
かといって
行かないでと泣きつきもしない
連れて行けって性格なの
そんなわたしを見捨てたあんた
今に後悔させてやる
必ず懺悔させてやる
ああ女神サマってね
笑っちゃう
妄想こそ今夜のメインメニュ
ーサブメニューに移行して
睡眠スイッチON
湿った布団はあんたの汗の臭い
息が詰まるわ苦しいわ
愛おし過ぎて

w御子達

モーセに十戒を示した神
ゆめ偶像を作るなと仰せ
そんなにみっともなかったの?
蛭子神のように醜怪だったの?
意識体である神は
内包する宇宙の真空中に
星の雲や河を創り
己が孤独を慰めた
恒星も惑星も新星も神の体内を巡り自らも転じ
神の鼓動を時間
神の呼吸を空間として
時空の定めに従い
神の意思には反し
創られて後に
熱し燃え冷め凍り衰え再び来し方を遡り
氷から火炎へ還り
砕け散る
神は砕けた星を拾い集め
星の子をまた創る
その繰り返しは気の遠くなるほど続き
飽きた神は星に生命を授けた
星達は授かった生命の源を大切に育み増やし
戦を生んだ
どの星にも戦は絶えず
星々の間も争い絶えず
滅び行く未来へ自転公転を続けて
やがて静寂が
宇宙一杯に充満した
そして今
再び神は実験を始める
今度は失敗しないよう
生命から形と意思と知能を辞去し
自分と同じ空っぽの生命で虚ろなる時代を楽しむ
この瑠璃星が赤く染まるとき
我等の後悔は遅過ぎた
戻れない道を進み行く
我等人類
我等神の子
見捨てられた神の子

w不敬信仰

神を疑うわたしは罪人か
神への不信不認は背徳か
神と雖も崇められ貶められてこそ
その存在威厳が実現する
誰からも顧みらない神はいないと同じ
星達は神を愛すればこそ
神に背き流れ巡り衰えた
生まれては老い砕け散る
寂しい神は己を知識する
何かを創らずにいられなかった
何かはやはり神を信じず
背信し栄枯盛衰絶え間なかった
それでもよかった
神は寂し過ぎたし人は傲慢過ぎたし時空は無為過ぎて
有意義なのものなど何もない
神は己の存在を認めさせようとして
愚かにも愛すべき天使の姿を地這う人間に与え
無用有害な言葉感情動作交尾全てを授けてしまった
全宇宙であり全てを内側に孕むのに
何故にそうも寂しいの
数多のearthから選りすぐり
様々なる生命体を創り
神は己の欲する永遠の生命循環を築こうとした
限りなき試行錯誤試行が
geochemistryを生み
terrestrialを産み
生と死を分ける環境を育てた
氷土を生きるもの
液体に属するもの
熱を好むもの
空を舞うもの
陸を這うもの
地に潜るもの
幾多の命が発生し
錯誤がglobal warmingをdoomsdayへ向い走らせ
その果てに戦い
自滅を招いた
どれもこれも自分達の神を偶像し主張し殺し合い
終局にあるのは不敬の念のみ
個々包み込む大気そのものの神の存在を気付かず死に逝く
象形無き存在故と悟り
やっと神はお許しになった
偶像を創り崇め
子を生贄に捧げ
性を対象とする
都合の好い
新たなる神を
新たなる天を
幻想の楽園を
模造太陽の下で
偽造することを
この記事を評価する

w飢餓地獄

食べられない
飢えて痩せて死んでしまう
それは三つの意味がある
スーダンで出会ったあの子みたいに
食べたくても食べ物が無くて飢える本当の飢餓と
狂って米が蛆に見えるわたしみたいに
豊富な食べ物に囲まれながら飢える擬似の飢餓と
最近急増する断食したがる女の子や
はち切るまで食べ漁り全部吐き出す満腹中枢崩壊の過食嘔吐の女の子や
天然より科学を選び痩せるためだけ
健康や生死を除外視した子みたいに自作の飢餓と
三つの飢餓がこの世にある
どれが一番不幸か
其れは誰にも決められない
みな自分こそ一番不幸だと世を恨むのだから
わたしは不幸か?
訊かれても困る
恵まれていると認めはするけど
この虚無感は何だろう
何故満足を知らないか
如何にて足るを識るか
答えは誰一人知らない
だから放って置けない貧しさがあるだなんて傲慢な戯言が罷り通るのだ
何もしないよりはいい
唯自己満足すればいいけれど
他人に押し付けないで
慈善家と偽善者と偽悪者達は
勝手に自分の贅肉の素を憐れむ子供に送りつければいい
でもね実際行って見て
泥を食って胃が破れ死ぬ子
寄生虫で腹がパンパンな子
親兄弟友達の死体を食う子
耐えられる?
見てられる?
直視できる?
できないなら
勝手に愉悦に浸ってて
わたしにその不愉快な自己満足笑顔を見せないで
怒りを通り過ぎ
殺意を抱くから

wMidnight viewer.

夕暮れの街は嫌い
灯り始める一つ一つの灯に
其々のドラマが展開されて
わたしだけのけ者のような疎外感を覚えて
深夜の街は好き
酔っ払い宿無し立ちんぼう
わたしと同じくろくでなし共が群れていて
とても安心する
落ち毀れはわたしだけじゃない
浮き零れもわたしと同じ数いる
奇妙で惨めな一体感
灯が消え出す街は与えてくれる
同病相憐れみ
膿んだ傷口を舐め合い
互いの黴菌を交換する
それは快楽的な交わりよりも一時の体液交換よりも
ずっとわたしを勇気付ける
もっとわたしを慰め励ます
いじけたこの屑は禁煙マークに居場所奪われ
深夜屋上に逃げ込む
いっそ貯水タンクに身投げしてやろうか
歪んだ嫌がらせを思いつく
そのくらい怖いの
一人ぼっちは辛い
泣けるほど可愛くない
撫でてくれる手も無い
自分から放棄破棄廃棄した
取り戻せないかけがえなかったもの
自業自得の自虐の波が寄せては返しまた寄せて
そのまま引かず止まり
深夜だけ
一人だけ
泣けるの

wかごめかごめ

昔々浦乃島子なる者在り
流れ着きし虚ろ船より
見知らぬ女見たり
女通りすがりの子等に甚振られ
島子其の女五文で買受り
女篭目成す虚ろ船に入り
島子を持て成せり
島子其の楽に酔い
時を忘れ親を忘れ飲み明かす
酒に飽き腹満ちてふと母を思い出す
如何にか過ごしおらるるか
我斯様なる贅を尽くし肥え太り歌い踊り
何をか今為さん也
虚ろなる時を離れ
島子物言う
帰らむと
女まやかしの箱取りて述ぶ
再びの逢瀬には此れが箱閉ざし持ちたれと
島子頷き船を出る
天女篭目負う下僕に送らせる
いざ哉其処に見しは
見慣れし景色何処にも在らず見ず知らず
人は冷たく天孫の御世も移りけり
嘆き悲しみ島子
預かる箱を岩に落とし
湧き上がる煙に巻かれ
経し春秋に身を変える
心安くと下僕申す
煙立ち篭目成す甲羅に入れ
然れば時満ち地果てし頃
再び向え参らむ
島子腰折り背曲げ
篭目模様の箱に入る
其の際告げしは
彼は入る世に伝うれ
甲羅負う下僕その任も負い斯様な童歌世に伝う
かごめかごめ籠の中の鳥は
いついつ出やる
よあけのばんに
鶴と亀が滑った
後ろの正面だれ
両端を読めば伝わる
かはいるよにつたうれ
島子の願い
虚ろ船の呪い
篭目篭目
甲羅負う下僕亀と変じ万年の寿命を伝道に費やす
悲しきかおかしきか
今もなおこの世に歌う
かごめかごめ
この記事を評価する

wうrmm以心電信

今年の冬は長ごう御座います
わたしは待ち遠しく震えます
あの恐ろしい玉音放送を聞き
過酷に蒸す夏が過ぎ
虫の音聞く秋も過ぎ
凍える冬が訪れて
今長らくも怯えて暮らし生きて
食うに困り闇市へ走りましたけれど
よいのです
わたしは満足です
ええ昨日あの方から
愛し恋しあの方から
電信で嬉し報せがありました
ハルカエル
たった其れだけ
あの方らしいわ
ぶっきらぼうで然れど平坦な仮名文字からは
溢れ出る情が読み取れました
春よ来い
童歌など歌ってしまう
楽しい冬で御座います
初雪が降ったは何日か?
終の雪は何時去ったか?
梅の蕾は如何でしょう?
彼方の辻を曲がるは誰?
其処の道を行くは何方?
此の跫は聞き覚え無し?
わたしは此処におります
いつ迄も此処で待ちます
早くおかえりなさいませ
一日千秋と申しますけど
わたしは千年待ったよう
慕う気持ちがこぼれます
募る恋心が溶けてしまう
そんな温かい冬なのです
其方は寒う御座いましょ
此方は暑うてなりません
きっとお天道様が冷えるあの方を温めようとしてこうも生温い冬なのでしょうね
嗚呼あの声は
ああきっとそう
アアやはり
あなた
見えますわたしには
其の角を曲がった
此の道を通いくる
そう其の戸です
其処を開けてお出迎えいたします
愛し恋しあなた
やっとやっと逢えた
もう二度と離れずに
死さえ共に迎えよう
其のお言葉が聞きたくて
此の手と手を繋ぎたくて
千年もお待ち致しました
神賭けて命賭してずっと一緒もう一緒一緒に
……戦後六十年を経て
狂った老婆は発見された
思い人を待ち焦がれた冬
季節を失い
春も夏も秋も冬の装いで
六十の春秋を生きた老婆
六十の星霜を耐えた狂女
六十回目の盆祭りの夕べ
八十の生を閉じた
今もなお聞こえる
彼女の春の数え歌
お雛祭りも六十回
お内裏様とお雛様
やっと一緒に並びました
後は三人官女に五人囃が必ずお参り致します
まあ本当にお綺麗な
お嫁様の白装束
お安らかに
御目出度く

w倭に捧ぐ

無情なる時に身を任せ
無為なき世に身を投じ
無知なる我が身を打つ
有為なる空と海と地と
青春とは雖も
小春日和に望む紺碧の空には勝てず
朱夏とは雖も
吹雪く冬の夜囲む炎の赤には勝らず
白秋とは雖も
春告げる霞雲の棚引く白には優れず
玄冬とは雖も
真夏に潜り見し深海の黒には負くる
古人の言うは何時なれど真
けれど我が身其れに背きて
新たなる四季をこの弓形の国に捧ぐ
身清め心祓い
目出度き紅白の衣纏いて
今宵舞わむ
唯安らかなるを願う故
夕凪の安きを乞い
然るに今宵最後舞う
全てを尽くして舞う
陰明相照らして舞う
我こそ大和国の人柱
慎み生きし結した実
過熟せぬ間に果てなる
空に終える地にこの身捧げ
今宵舞う
嗚呼泣かないで下さいな
嬉しゅうも悲しゅうも寂しゅうも
四季一廻りで忘れまする
其れが人の常ばれば
何をか悲しむ事也有らむ
今宵舞い狂い護符燃やす炎へ入り
我が身も天に昇らむ
泣かず笑わず悲しまず
嬉しくも無き寂しくも無し
今宵の舞を御覧有れ
我が一生の舞姿
我が最後の旅姿
我が昇天の死に装束
さぞや美しく輝かしく妖しく
燃え尽きましょう
この倭にこの身捧げて

血の沼~零

子ども集まりたれば
おあん様の昔物語り始まり

おれが親父は山田去暦というて
石田治部少輔殿に奉公し
近江の彦根に居られたが
そのゝち治部どの御謀反の時に
美濃の国おほ垣の城へ籠もりて
我々皆一所に御城にゐておじゃったがが
不思議な事が夜な夜な九つ時分に
誰とも無く男女三十人ほどのこゑにて
田中兵部どのゝう田中兵部殿のうとおめきて
そのあとにてわつというてなく声がよな/\しておじゃった
おどましやおそろしうおじゃった
その後家康様より攻め衆大勢城へ向かはれて
戦夜昼おじゃったの
其の寄手の大将は田中兵部殿と申すでおじゃった
石火矢を撃つ時は城の近所を触廻りておじゃった
それは何故なりや
石火矢を撃てば櫓も緩々動き地も裂けるやうに凄まじいさかいに
気の弱き婦人なぞは即時に目をまはして難義した
其のゆゑに前方に触れおいた
其ふれが有ば光も逃して
雷の鳴を待つやうな心しておじやつた
初めのほどは生きた心地も無く
たゞもの恐ろしやこはやと計われ
人思ふたが
後には何ともおじやる物じやない
我々母人も其の他家中の内儀娘達も皆々天守に居て
鉄鉋玉を鋳ました
また味方へ取った首を天守へ集められて
それぞれに札をつけて覚えおき再々。
首にお歯黒を付ておじゃる
それは何故なりや
昔はお歯黒首は貴き人とて賞翫した
それ故白歯の首はお歯黒付て給はれと頼まれておじゃったが
首も怖いものでは非ない。
其の首共もの血臭き中に寝たことでおじゃった
或る日寄手より鉄鉋撃ち掛け
最早今日は城も落ち候はんと申す
殊のほか城のうち騒いだことでおじゃった
そのところへおとな来て
敵かげなきしさりました
最早お騒ぎなされな鎮まり給へといふ所へ鉄鉋玉来りて
我等おとゝ十四歳になりしものに当りて
其のまゝひりひりとして死でおじゃった
扨々むごい事を見ておじゃったのう
其日我が親父のもち口へ矢ぶみ来りて
去暦事は家康様御手ならひの御師匠申されたわけのあるものじゃほどに
城を逃れたは御たすけ有べし何方へなりとも落ち候へ
路次の煩いも候まじ諸手へ仰せ置たとの御事でおじゃった
城は翌の日中攻め落とさるゝとて
皆々力を落して我等も明日はう死なはれ候はむと心ぼそくなつておじやつた
親父密かに天守へまゐられて
此方へ来いとて母人我等をもつれて
北の塀わきより梯子を掛けてつり縄にて下へ釣さげさて
盥に乗て堀を向かうへ渉りておじゃった
その人数は親達二人童と大人四人ばかり
其他家来はそのまゝにておじゃった
城を離れ五六町ほど北へ行し時
母人にはかに腹痛みて
娘を産み給ひた
おとな其まゝ田の水にてうぶ湯つかひ引あげてつまにつゝみはゝ
人をば親父かたへかけて青野が原の方へ落ておじゃった
怖い事でおじゃったのう
南無阿弥陀
又子ども彦根のはなし被成よといへば
おれが親父は知行三百石とりて居られたが
その時分は軍か多くて何事も不自由な事でおじやつた
勿論用意は面々蓄えもあれども
多分朝夕雑水を食べておじゃった
やったおれが
兄様は折々山へ鉄鉋撃ちにまゐられた
其時に朝菜飯をかしきて昼飯にも持れた
其時に我等も菜飯を貰うて食べておじゃった
ゆゑ兄様をさいすゝめて鉄鉋撃ちにいくとあれば嬉しうてならなんだ
さて衣類もなくおれが十三の時
手作の花染めの帷子一ツあるより他にはなかりし
その一つの帷子を十七の年まで着たるによりて
すねが出て難義にあつた
せめてすねの隠れるほどの帷子一つ欲しやと思ふた
此様に昔は物事不自由な事でおじゃった。
また昼飯など食ふといふ事は夢にも無いこと
夜に入り夜食といふ事も無かつた
今時の若衆は衣類のもの好きこゝろを尽くし金を費やし
食物に色々の好み事召される沙汰の限なことゝて
又しても彦根の事をいうて然り給ふゆゑ
後々には子どもしこ名をひこ根ばゝと言ひし
今も老人の昔の事を引て
当世に示すをば彦根をいふと
俗説にいふはこの人より始まりし事なり
其故他国のものには通ぜず
御国郷談なり
右去暦土州親類方へ下り
浪人土佐山田喜助後に蛹也と号す
おあんは雨森儀右衛門へ嫁す
儀右衛門死して後
山田喜助養育せり
喜助の為には叔母なり
寛文年中齢八十余にして卒す予
其の頃八九歳にして物語りを折々きゝ覚えたり
誠に光陰は矢の如しとかや
正徳の比は予すでに
孫どもを集めて此もの語して昔の事ども取り集め
世中の費をしめせば
小ざかしき孫ども昔の
おあんは彦根ばゝ
いまのぢゝ様は彦根ぢいよ何をおじゃるぞ
世は時々じやものをとて鼻であしらふゆゑ
腹も立てども後世恐るべし
又後世如何ならむ孫どもゝ
また己が孫どもにさみせられんと
是をせめての勝手にいうて
後はたゞなむまいだ南無阿弥陀仏外に云うべき事無かりし
昔語りの終わりにはいつも悲しみおぞしき付き纏い
後の世に伝ふれば後の世に倣ふもの漣如く細木流如く
明治維新も白露の戦も過ぎ
なお続く世の流れ
賽の河原
血の沼泥リ
淀む血の沼に
源は其れ井戸なりて
源は皆生首よおあんの取りし生首よ
享保十五年庚戌三月廿七日 

血の沼~壱

大正の終わり昭和の幕開け
一人の女の子が生まれたよ
潤む瞳が大きくて
肌は陶器の如く白
朱に唇は紅梅の蕾
其れは美しい赤子だったよ
貞節を重んじ親は名付けた
昔語りに現れる娘
弟のため死んだ姉
安寿と
三歳のお宮参りでは
異人さんが其の可愛さに惹かれ抱かせてくれと母親にせがんだ
五歳の参宮では
父が盗まれぬようにとしか抱き締め決して傍から離さなんだそうな
七歳の祝いの膳では
兄御が親戚一同から死守すべく御手々繋いで膝に載せて守った
干支一廻した頃には
安寿は咲き匂うほど可愛らしく
ご近所の男共は早々に騒いだよ
それはもう筆舌尽くせぬ美しさ
安寿の立つ付近一尺八方四方は水墨画の世界に変じた
有る色は赤ばかり
墨を流した黒髪は漆黒
大きなお目目は紫染み
胡頽の御口は甘い香り
兄様を慕って纏い付く
其の様がまた愛惜しく
誰彼も無しに愛苦しく
誰も妹の変異に気付かなかんだ
妹は兄慕う余り娘になれず
父は娘愛す余り男となって
正気だった母と兄を狂いに巻き込む悲喜劇が幕開け
柿落としは娘の初潮で
巻く引きは誰もいない
泥沼に蓮華が咲いたよ
萎れを知らぬ泥の華は斯くも妖しく浅ましく
さあ続きは
おあんさまに譲ろう
駄目かい無理かい?
ならお女中にお話して貰いましょう
始まり始まり
悲喜劇が廻り巡るは狂気の螺旋
戦も燃やせなかった絆
神風にも戦がぬ憎しみ
それでも消えない愛情
何処へ行くやらこの人等
さあさあお聞き心して
幕が開けばもう下りないから
お駄賃は余分に貰っておいで
明日になっても続く紙芝居さ
一年経っても終わらぬ惨劇さ
十年過ぎても残る血腥さだよ
魘されず眠る夜を
手放す勇気のあるものだけおいでよ
此処へ
紙芝居だよ練り飴だよ
カランコロンと始まりの鐘が鳴る
もう始まった
初めの一歩は
もう踏んだ
この記事を評価する

血の沼~弐

昔々よりは最近
でも今よりゃ昔
おあん様を見習って
生首集める娘が生まれた
名は安寿
おあんだよ
おあんはねえ
実の兄に惚れて
兄が嫁を娶ったとき鬼になった
自分をおあんと思い込み
其の上桃太郎を気取ってねえ
犬の戌助と
猿の猿吉と
雉の軍鶏を引き連れて
夜毎生首を狩ったのさ
あのお嬢にゃ
今の世の肌蹴た着物が淫らな鬼に見えたんだろうね
だから勝ち誇って生首ぶら下げ帰ってくる
女中達は毎日首を井戸に放り込み蓋をして隠すのに必死だった
勿論ばれてるよだけど
地主にゃ弱い
誰も咎めず
自分ちの無駄飯食いを差し出す
おあんは勇猛果敢に奴等を狩る
そう
赤紙逃れに醤油や油一斗飲んだ奴とか
急いで嫁を貰い慌てて子を成す助兵衛とか
欠格にわざと罹って蔵に閉じ籠もる奴とか
結核た屑共を
おあんは狩ったのさ
おあんを溺愛する父は身体まで愛し
おあんの貞操を奪った
おあんは首を狩り帰り
お父は娘を匿い交わり
夜毎狂気の沙汰が繰り返された
そりゃあ母親は黙っちゃいない
或る夜とうとう神経が切れてね
邪淫の場に乗り込んだ
素っ裸赤裸の父と娘は気にもせず淫行を続け
二度目の終わりに娘が小さく言った
おかあさま
如何なされたの
母様は狂った怒った弾けた
そして出刃包丁振り上げて
裸の父娘に飛び掛った
其の後は?
さあ知らないね
自分で訊きなよ
安寿に
佯狂か
偽装か
正気か
今じゃ誰も気にしない
起きたことは起きたことで取り返しはつかない
おあん様お話してくださいませ
さあ
あなたの若き日を

血の沼~参

あの女はねえ
つまり母様はねえ
うっとりする程肥えて艶っぽくて憎らしかった
だから言ってやったさ
お母様お久しゅうってね
あの売女
言葉の意味と目の前の光景を合致させるのに五分は掛かったよ
あのときの二人の顔ったら
あんまり間抜け面なんで
あたしゃ素裸の腹がひくひくしてもまだ笑いが止まらなくって
何だか胸まで痛くなって
本気で泣いたっけね
奥方は
父娘同士で何と淫らなって
きいきい喚く
旦那は
実の娘を可愛がるのに何が悪いって
開き直る
女中部屋のある離れは大騒ぎさ
あたし等三人以外は只の痴話喧嘩と思っているからね
奥様何もそんなに
旦那様早く謝罪をと
周りが囃し立てるもんだから
却って双方引っ込みがつかなくなって
とうとう奥方の気が触れた
子捨ての負い目が
女に潜む母の部分を逆撫でしたんだろう
母様は
裸のあたしに飛び掛かり
髪を掴んで引き摺り回した
雲隠れした月の下
女二人が段々あの井戸に近付くのを見て
旦那は大急ぎで下帯巻いて突っ走ってきた
後はもう暗闇の中の乱闘さ
誰が誰を殴り
誰は誰に蹴られたか分かりゃしない
誰かが提灯持ってくるより早く
お月さんが全部照し出してくれた
全裸で傷だらけのあたしは
母様に首を締められ
のけ反って井戸縁に押し倒されていた
女夜叉の母は
髪を角みたいに逆立て
あたしを井戸に落とそうとしていた
褌一丁の父は
あたし等を引き離そうと必死だった
三人共凄まじい形相で鬼の攪乱や如何にとも
使用人達ゃ怖がって遠巻きに眺めていたっけ
あん時の有様は妙にはっきり覚えている
最初で最後の親子三人水入らずだもの
そう最後だった
母にはね
荒れ狂う母の脳天に
羞恥で錯乱した父が
息も絶え絶え娘を救うため
井戸の踏み石をめり込ませた
ぐちゃって潰れる音びしゃって降る血肉
やっと息が楽になったあたしは
大口を開けて空気を吸った瞬間
生温い脳味噌を飲み込んじまったよ
不味かったねえありゃ
あんまり不味いんで
今度は吐こうと大口開けたら
両の目も一緒におっ開げちまってさ
見ちゃったよ
熟れた柘榴が中味飛び散らかしてね
あの井戸へ
そうさ昔語りで身投げがされたあの井戸へ
あたしのお母も落っこちてったんだ
過去と今と秘密と因果を道連れにね
あたしかい?
そりゃ泣いたさ
嬉しくてだってそうだろ?
捨てられて死に掛けて身体売っていた生き腐れが
晴れてお医者様の奥方に成り上がったんだ
大したもんだろ
実の父に嫁いだあたしも
女房殺して実の娘を娶った父も
無邪気に姉を義母さんって呼ぶ馬鹿跡取りも
父娘が交わり産まれ出た脳足りんも
何も知らない周りの糞っ垂れな奴等も
全部知っていて止められなかった菩提寺の坊主も
あたしの復讐はまだまだ終わらない
臆病者の夫は金で兵役を逃がれやがった
許すもんか
袖の下が重く光る憲兵とっ捕まえて
お上とお金とどっちを選ぶか訊いてやった
勿論お巡査様は上役を取ったさ
憐れ夫は赤紙一枚残して
南洋の島で木っ端微塵になって死んだよ
ああそう
和尚も忘れちゃいけない
神風に逆らい仏を拝む僧侶は
実際霊権灼かな見せしめになったねえ
数え切れない亡者と一緒にぼろ寺がこう
ぼわあって燃え上がって
昭和の廃仏棄釈だよ
憲兵と村八分が怖くって
皆して古寺に火を放った
流石のあたしも亡者だけは恐ろしかったっけね
あの柘榴みたいな母親の面相が炎に浮かび上がるようでさ
あたしゃこの世を総じて恨んでいるのさ
そん中にゃあたし自身も入っているのさ
だからこの世を血の沼に変え
生き人全員呪い殺し
一緒に地獄へ落ちるのさ

w可燃ごみ収集日

こんなに傷付いて
あんなに詰られて
そんなに苦しくて
何故生きる?
何故死さぬ?
何故感じる?
何故悲しい?
何故寂しい?
答えの無い問いは百発撃っても的外れ
コインが尽きたから
秋祭りの夜店の的当て遊びは終わった
欲しかったキティちゃんはもらえない
自分で買うしかない
本当はそっちのほうが簡単で安いのに
わたしは景品のキティが欲しかったの
生きるってそんなもの
楽な道が無数にあってWEBとなり増殖する
蜘蛛の巣上にいるわたしは捕食者? 餌食? ねえどっち?
思考はくるくる繰る繰る狂狂
思考は嗜好に乗っ取られ狂い
食べる積りが捕われ食われる
楽な道を選んだツケ?
苦を避けた天罰極刑?
一寸酷くない?
アイツだって楽してる
ソイツはもっと怠けて
コイツだけ罰するの?
自問自答を止めたわたしは
精神身体を病んで拘束され
バッドと手首を繋ぐロープが薄い皮膚を擦り破り血を噴く
こんなになって何故生きる?
死んでないからと医者は言う
もう死んだも同然だってのに何故苦しめて生かし続ける?
責任があるから仕方ないって
医師の遠い呟きが本音の真実
皆そう思ってるの
皆其れが本音なの
なら自殺を止めないで
生きる意味より死んで受け取る保険金のほうが
わたしにも周りにも有益利益
不当利得じゃないから安心よ
金縛りの住宅ローンもお終い
生きる意味なんて最初から無かった
有るように洗脳されてただけだった
この年になってやっと気が付いたわ
生きる権利が有れば死ぬ権利も有るでしょう
納税義務を果たしたから
公園汚す権利有るよ
別に弔ってなんて云わないわ
生ゴミとして解体して袋詰してゴミ置き場に放置して
唯其れだけのこと
何故生きるかも感情も悲しさも寂しさも
可燃ゴミの日に出してしまえばいい
最初から空だったわたし
殻さえも無かったわたし
まるでウィルスね
細胞壁も無い黴菌
手早く消毒して知らぬ振りして街角に置けば
さようなら
権威有る生ゴミ収集車が
水気切ってから出せよって少し文句言うだけ
そうでもないって
生首のわたし囁く
だってほら拒食の果ての脱水状態で点滴も拒否するこの身体
軽いよほんの二十五キロ
絞っても水はそう出ない
炙って八%程度の脂肪を落とせば
たった二十キロ
犬より軽い木乃伊だもの
せめて可燃ゴミと認定してよ
人間はとうに失格したわたし
せめてゴミになれないかな?

Low school.

大学院は試験の季節
頭脳は法律で真っ黒
純粋無垢なる神聖な法学が何故黒いのか
ときどき悩む
裁判官は黒い服
弁護士や書記官も殆ど黒服
十年前のディスコじゃあるまいし
どうして皆して黒いのよ?
そんなことよりわたしは
憲法を暗記する
金バッジ手に入れるため
刑法を諳んじる
成り振り構わず民法を
当て嵌め適用する
メールの内容までも商法で埋め尽くされ
口喧嘩では民事訴訟法が口から飛び出す
嫌な女
変な女
妙な女
いいのよ何と言われても
わたしは目的のためなら手段は選ばない
近頃の子は手段次第で目的を変えるけど
わたしは手強い年増のアンタッチャブル
ワシントンで鍛えられた不屈の闘志もつ
一筋どころか百筋の縄にでも縛られない
重税に耐え搾取され干乾びた木乃伊の女
掛かってきなさい
何時何方でも何処でも
少し弱気の試験期間
一寸可愛い女を装う
さあ騙されなさい金出しなさい
今日一日分のニコチンをGETするから
カフェインとアルコールとニコチンだけ
それだけあれば
パンも野菜も牛肉も不要
エナジー充填完了
ガソリンも満タン
暗記した条文落とさず
二三号線ぶっ飛ばして行くわよ
今日は民法
明日は商法
明後日刑法
まだほんの雛の法学生
歳には負けない経験で
難解な試験試練に臨む
面接官は厳しい
君の目指す法曹の在り方は?
そんなの決まってる
約束するわ
金バッジに
悪徳世界一の弁護士になる!
我等ロースクール生は
明日の日本をぶっ壊す!

wTaihoon.

わたしのジョグより遅い台風
とっても迷惑ね
わんこが濡れる
とっとと来て去って
大型台風
のろのろウザい
ざわざわとろい
こんな日はわんこと二人で部屋に閉じこもり
一緒にネンネしていたい
柔撫でて寝かしつけると
わんこは天使の愛らしさ
こんな寝顔はわたしだけのもの
誰にも見せない無防備な天使面
よく吠えよく食べよく走る天使
君は羽をもってるから
こんな日は台風に攫われそうで
しっかり抱いていたい
ねえ天使?
聞いてる?
寝ちゃった
偶にはいいね台風も
野分と言い換えれば風情があり
夏の終わりを感じる
芭蕉は何と詠んだっけ
もう忘れた授業内容
先生は答えない
天使も応えない
わたしも堪えない
この程度の台風なんて
時速百二十キロで疾駆するバイクの向かい風よりずっと可愛い風
五月蝿い
纏わる
それっぽっちの台風
誰が行方不明でも
誰が死んでも
誰が泣いても
I've nothing to do with you!
勝手に吹き荒れ
試験を延期させ
誰かを殺害して
早く消えて
わたしにあるのはirresponsibility
身勝手我儘無責任
知らない人なら適当に死んで
マジ泣いちゃう人だけ守って
後は知らない
早く来るなり行くなりしてよ
全く面倒な台風

wいくさ

この平和ボケの国でも
凶悪な猟奇事件は続き
刑務所の地獄化が進む
一度戦争を味わった国は
もう血の臭いと味を忘れられない
戦争が無ければ作り出す
火の無い所に煙立たせる
引き返せない地獄化は
人類が二足歩行を始めた瞬間に始まっていた
レオナルド・ダヴィンチは
チェザール・ボルジアに同行し
戦場を往来し
アンギリアの戦いを描き出した
人殺しが芸術に変換されたのだ
ピカソはゲルニカで狂気を描き
またもや戦争を美術に併合した
大和の国にも戦歌は多い
平家物語は感動すべきか
義経はそんなにも憐れか
新撰組は憧てよいものか
宮元武蔵は只の無差別殺人者じゃないか
何故に男気の象徴にする
誰も不思議だと思わない
この現代社会自体が狂っている
この高度科学技術が病んでいる
気付くべき事から目を逸らして
ホモサピエンスは何処へ行く
霊長類の長は何成るを目指す
大量に破壊する殺人最終兵器
きっと鮮やかに地球は染まる
そして永遠の静寂が到来する
瑠璃星はやっと健やかに眠る
ならばわたしも死を急がずに
滅びを最後まで見届けようか
奇妙な希望が
病院の屋上で
生まれた

w星雲循環

ビッグバンが真実なら
わたし達親子兄弟姉妹
たった一つの欠片から生まれ出た運命共同体
幾度も宇宙は失敗
星を創っては滅ぼし
ふと自らを内省し気付いた
己が胎に孕んでいる生命に
宇宙は星を産み落として
星達はまた星の子を孕み
無数の銀河が巡り始めた
宇宙意思存ずる
神に沿い
時間に従い
循環する星々
星の子は宇宙の孫を曾孫を産み出して
永遠と思われる循環を見事築き上げた
其れは最も美しい美術
其れは何と稀有な芸術
其れは滅びを孕む技術
大銀河創世記の始まり
同時に終わりを意味し
壮大なアカシックレコードが起動する
星達は秩序を作り
系列を成し周る回る
最大力を有する恒星を中心に据えての太陽系が
出生成長老化死滅を繰り返し
わたし達強い愛に包まれて生きている
瑠璃星は五回も失敗し今に至る
ホモ・サピエンス・サピエンスはもう下り坂途中
行く先に待つは
成功としての祝福繁栄か
失敗としての殲滅処分か
進化を超えて退化に変じた人類には分からない
宇宙唯一の意思は揺らぐ
進化と技術の驕り高ぶり
共食いを始めた卑種族を
永らえるか
滅せらるか
まだわたし達間に合う
引き返す道を追求は与えてくれる
我が子が生まれた瞬間を思い出し
誰もが味わった感涙を飲み干して
乾いた心を潤し
砂漠に慈雨を降らそう
間に合うからまだ間に合うから
このちっぽけな声をどうか
此星の住人よ
何卒聞き届け給え
呼び名を知らぬ神よ
我が祈り聞き給え
この記事を評価する

wArabian mails.

神様は寂しいんだ
君は言った
だから小さくて平和で馬鹿な楽園をエデンの東に造ったのに
アダムはリリトと離別し
すっかり臆病風に吹かれ
イヴのご機嫌取りばかり
二人は神を慰め癒し愛されねばならなかったのに
毎日百人の夢魔を産み続けるリリトの蛇に騙され
知恵の実を食べちゃった
知恵など余計だったんだ
馬鹿のままでいればいい
だって人間が知恵で生み出したのは
宗教と戦争と背徳だけで
神の望んだ平和は置き忘れちゃって
互いの血を流し合い殺し合い結ばれ離れられない
流血技術と火焔兵器と粉塵機械とが全エデンを占領して
神の箱庭は滅茶苦茶
何処を見ても目を閉じても
瞳は火に焼け煙が燻すだけ
地球は青かったなんて嘘だ
地球は青くも赤くも無くて
化膿した傷口の黄緑と黄色と腐肉の薄茶色だよ
憎しみの連鎖は絆と業になって僕等を縛り上げ
僕は息もできない
早く争いの螺旋を断ち切って
プログラム作り
デバッグして
僕等はきっと神の排泄物なんだ
だから早く消して
大陸と砂漠を越え届く君のメールは
文字化けして解読するの大変だけど
余りにも的確で辛辣で正し過ぎるよ
君のあどけない顔と声が甦る
フットボールが好きな君
椰子の実で練習してた君
君の言葉は呪文の如くこの胸を抉る
ねえニホンの戦況は如何?
電波では伝わらない想い
ニホンは戦争中だと言う君が正しいかも知れない
私たちは争い殺し食い合っているよ
昨日も今日も多分明日も
百年経っても血を流して合ってるよ
君の言葉を全世界に伝えたいけれど
わたしには其の術が無い
しがない一般人だからね
誰も声を聞いてくれない
虚しい弁論の自由が
旗めいているよ

我儘姫

もう信じられないと呟いて
わたし仰向いて
腹立ち材料ぶら下げた
姫の二の腕に噛み付いた
痛い痛い痛いと叫んでるだけじゃこのむかつきは治まらない
二人だから余計に悔しい
恣意のままに我儘に
姫は僕を傷付け続ける
太陽が溶けて落ちても
僕は君と一緒の部屋
信じるものしか救わないセコイ神様でも拝むしか
姫とずっと一緒にいる僕は救われない報われない
辛い辛い辛いとぼやいてるばかりじゃ心に黴が生えるだけ
一人になるため屋上へ行こう
欲しい侭に気紛れに
姫はプライバシーぶち壊す
誰かの血が流れたら
僕と一緒に見に行こう
仕方ないよグロ好きなんだから
危なげ無いじゃ気が済まない
月が凍って割れても
誰も姫を止められない
繋いだ手なら振り解こう
埃塗れのお姫様は嘘泣き始める
恣意のままに我儘に
姫は僕だけを傷付ける
僕の血が流れたら多分死ぬまで眺めてる
そういう奴なんだ姫は
だけど放って置けない
人徳か因業か
僕等は多分離れない

wNo,I will!

雑踏の中
袖擦り合って結んだ縁は
千切られて踏み躙られ消え去った
一欠片を探すわたしは
いつものゴミ溜に着き
気が抜けて座り込んだ
此様に侭俯き生きるか
斯様に風切って走るか
其様に羽広げ空舞うか
何れも此れも彼れも其れもNONONONO!
叫び始める心の闇
泣き腫らす両の瞳
血で濡れる両手首
この傷だらけの手が何時か掴むものは
希望か絶望か幸福か災禍か
もう手首に切る場所が無い
今度は肘を切る以外に無い
其の次は左頚動脈しか無い
最後は心臓を貫くより無い
無い無い尽くしのこの街は
うんざりするほど人が溢れ
なのに孤独死が頻発する処
雑踏に紛れて服毒したって
皆気付かず死なせてしまう
優しい街
寂しい街
汚れた街
田舎者だけの破れた夢がひらりはらり舞い落ちて
縁や情と一緒に踏まれて
このゴミ溜に拭き溜まる
ねえと語り騙る破れた恋
こうしていようよと云う
何せず腹這いさえ止めて
うつ伏せで回収を待とう
なんて甘美なお誘い文句
わたし
負けそう
負けたい
鴉が鳴いた
鋭く啾いた
このわたしを
憐れみ蔑むか
奮い起こすか
神の御子の名を日本語で呼び
そうだった
激しく首を振り再度叫ぶ
何方も此方も彼方も其方もNONONONO!
今度のNOは肯定のNO
甘いお誘いに対するNO
自分自身たるためのNO
YESに変わるときまで
NOWに変えるときまで
吠え続けよう負け惜しみを
精一杯のNO
田舎物集団の中に埋もれず
打たれても出る杭になろう
豚に真珠のピアスをしよう
猫に大判小判を使わせよう
馬に念仏を諳んじさせよう
さあ立って此処から出て前へ歩き始めろ
道は無いから拓け
此街に自分だけの道を造れ
何度振り向き俯き跪いても
自分で負けを認めるな
人生が終わってまだ負け犬でも
生まれ変わってまた闘い続けろ
最後の最後に大笑いしてやれ
馬鹿にする奴等
戦わない怠け者
引篭もる馬鹿共
食い漁る贅沢者
全部まとめて笑い飛ばせ
そのためだけでいい
生きる意味や資格なんて
笑うためだけでいい
大声で叫ぶ
磨れた世に迎合しない
NO!

w夜走る

深夜の闇を切り裂き
アスファルト焦がし
眠る人の耳に喧しいエンジン全開
ギアは四速で
開けぬ間に夜を疾る
何処を目的と定めず
何時帰るとも決めず
本能赴く侭
闇誘う侭
お出掛けしましょう
首無しライダーと擦れ違い
てけてけ婆さんを引き離し
濡れ女は無視と決め込んで
塗り壁と正面衝突したって
この走りは止まらない
ブレーキなんか触らない
点滅信号なんて丸で無視
白バイは逆走で吹っ切る
狂った長い髪のライダー
このじゃじゃ馬娘が
思い通りに動く快感
カーブ斬る瞬間快感
BMWも四つ輪じゃ駄目ね
二輪がいいの単車でいいの一人がいいの
相棒は不必要
弾けて感じて乱れて飛ばす
止まらないエクスタシーはドラッグを忘れさせるhight
誰か聞いてよわたしの機嫌
即答するから
How are you?
Never bertter!

wLe etranger.

この空はあの国で見た空
この風はあの国に吹く風
この海はあの国に繋がり
同じ地球を踏み締めてる
仰向き過ぎて意識は朦朧
懐かしい景色へ想いが滑っていく
優しくも厳しい人々に囲まれてる
現実と夢想が
実在と架空が
無機と有機が
覆う覆る被る
滑落した場所は彼国
誰もわたしを差別しなかった国
世界中からの移民が犇く雑衆国
生粋の住人を探し蹂躙した大地
朗らかに殺戮した余所者共の地
そんな土地に愛着を感じるのは
わたしの中の眠れる殺人嗜好癖
黄色い信号が瞬いてクラクションが鳴る
暫し重なった夢破れ
猥雑な街が展開する
倭でわたしは異邦人
国籍を手に入れても本籍を掴み取っても免許証に記されても
話し掛けてくるのは修学旅行中の中学生
Excuse me, but may I speak to you for a few minutes?
わたしは面倒になる
Watch your language.
と言いたい所だけど
Excuse me, but I must be going now.
に変換して応え去る
わたしは一体誰だ?
わたしは元来何だ?
わたしは生来閏か?
決して善や正に分別されない
いつも悪で邪に差別されてる
其れでも此処にいるのは彼れ遥か場所へ帰るため
帰るには出ていかなきゃならない
だから此処に踏み止まる
帰りたい
願う心は西風に乗り
大陸経て懐かしい国へ届くか
同じ空を見ていても同じ雲を見上げても同じ桜を楽しんでも
此処は異国
わたし異邦人

wFreeters.

FreeとArbeiterを足すと君になるの?
要するに不定職ってことじゃないの?
どうして胸張って威張るってんのよ?
現在は無職ですって正直にいいなよ
職歴欄に書かれた正体不明の職業はフリーター
君は豪そうに講釈を垂れるのね
フリーなアルバイターをフリーターっていうのだ
今時知らないなんてあんたのほうがおかしくない
今では立派な職業なんだよ
納税しない寄生虫って
言論の自由の適用範囲内なのか
ならそうはっきりと書きなさい
現職寄生虫と
わたしが君を蔑むのも表現の自由の一環なのだよ
勝手に傷付いて泣いていなさい
あの女馬鹿だと言触らしなさい
非常識だとわめき散らしなさい
君に詰られるのはわたしの名誉
君の罵声は心地いいくらい光栄
君の非常識はわたしとって常識
君を罵倒し返す権利は我がもの
清潔好きのわたしは寄生虫駆除したい
だからわたしはOKサインをあげるわ
そうすれば寄生虫が一匹減るでしょう
間違えないで
君を認めたわけじゃなくて
飽くまで君のご両親のため
できるならスミチオン頭からぶっ掛けたい気分よ
それでも君は生き延びそう
憎まれる価値も無い君達は
ゴキブリよりもしぶとくて
死ぬまで誰かの脛齧ってる
そういうイキモノにだけはなりたくない
わたしから君へと送る言葉
クソッタレ!
以上
面接終了

wLet's return to the point at issue.

わたし何も言わない
あなた何も聞かない
わたし全てを捨てる気など無い
手に入れた全部を抱えたままで
アイツの待つ部屋へ出掛けるの
よくドラマでは言うわね
全てを投げ打つ恋だとか
全身全霊込めた愛だとか
悪いけどわたしには無縁
あなたもアイツも同順位
今気が向くから逢うだけ
逢瀬重ねる関係じゃない
見せ掛けの上辺だけの嘘塗れの優しさが欲しいの
あなたは本気で真剣すぎて
いつもわたしを脅かす
だから逃げるの
追っても無駄よ
一緒に来るの?
そして見るの?
わたし達の睦み合い
アイツとの馴れ合い
二人だけの体液交換
あなたは傍観者
そうしたいの?
耐えられるの?
その程度なの?
ならあなたの優しさも嘘ね
全てを許すのは寛容じゃなくて放任でしょう?
強くなくても生きていける
狡猾で補えるから
優しくなくても人権は有る
憲法が定めるから
だけど賢くも狡くも豪くも優しくも美しくも無いわたしは
上面だけの人間関係に
必死にしがみ付いて放さずに生きるより無い
だからわたし何も言わないけれど
あなた何か問い掛け
そして二人崩れるの
見えない恋も
見せない愛も
この胸に秘め
わたし達砕け散るの

wConiine~C8H17N

死ぬ
生きる
死ねない
生きられない
花びらを千切り占う
今日のわたしの運勢は大凶
きっとこの身に大惨事が起きて
わたしにはラッキーな不法行為によって
例えばベンツに轢かれるとか
それともBMに潰されるとか
がっぽり慰謝料貰えるような超不運に襲われるに違いない
嗚呼駄目よ其れだけでは
逆に修理代取られるかも
リスカもアムカも飽きた
服毒なんて如何かしら?
わたしにはきっとコニインがぴったり
古代ギリシャで罪人の処刑にアヘンとドクニンジンを混ぜ用いられた
ソクラテスの処刑にはドクニンジンのコニインが用いられたと言われ
その最期の様子は弟子プラトンの著書パイドンに詳しく記されている
ヒトに対する致死量は六十~百五十mg
消化管からの吸収が速く
症状は急速で中枢神経興奮麻作用後に中枢神経抑制
意識は最期まで正常に保たれたままで
運動神経末梢から麻痺が進み
死に至る
だけど
お節介な奴がいる
0.05%過マンガン酸カリウム水溶液で胃洗浄
活性炭二十グラムを水に加え懸濁させて内服させ
加えてフロセミド二十mg静注されて排出促進して
ジアゼパムを緩徐に静注
又は深く筋肉内注射され
硫酸ナトリウム三十グラムを内服しようものなら
生き返っちゃうじゃない
みっともない
大恥掻だわよ
近所歩けない
わんこ可哀想
結局白昼夢想
只の連鎖連想
ソクラテスにはなれない
お馬鹿なわたし
書くだけ疲れた

w屑鉄の街

高層建造物に切り取られた空
幾何学模様の青い高い遠い空
宇宙とわたしを繋ぐ1ピース
一つ間違えば全部が崩落する
危なげな街
人込みの街
ゴミ溜の街
渦巻く愛憎は極彩色のネオン
反吐も糞尿も綺麗な彩り輝き
出て行かないのは
出て行けないから
汚れ切ったわたしには
この穢れた街が似合う
この猥褻な街で死のう
この虚無の街で殺ろう
この屑鉄は街を呪おう
身体より先に思考が腐り
思考に先立ち魂魄が朽ち
もう空っぽのわたし
せめて最低の人間になりたい
そんな低レヴェルな願い破れ
夜の路地裏を流離う
出くわすは同じモノ
生きてるだけの肉の塊
動きうめく鬱陶しい滓
似ていても擦れ違って慰め合いなんかしない
互いの膿を啜り合って体液と黴菌を交換する
そんな真似はやらない
屑なりに埃をもってる
自分の埃は一生の誇り
時間分だけ積もった埃
さて月が低くなった
朝が来る前に帰ろう
何処へ
さあ
何処へも帰れないから行くだけだよ
何処かへ
風任せに

wThe sun goes down.

The sun goes down♪
懐かしいフレーズが口から零れる
もう日が暮れるから
誰か胸を貸してください
わたしも何時か何処かで夢見る
永遠の眠りに就く
誰の接吻でも目覚めない
心残し身体だけが滅びる
辛い旅路もやがて終わる
其の瞬間を待ち焦がれて今日も剣山の粗道を歩く
九センチのピンヒールと長く赤い付け爪伸ばして
行く手を阻むものすべて蹴飛ばし引っ掻き
真直ぐ自分なりの自分だけのボロい信念貫き
穢れた貞節守り
落ちた夢追って
破れた恋曳いて
温もりを与えないから求めもせず
日々去り行く人達の中で
流されない汚されない
自分で泳いで汚れるだけ
自動と他動の微妙な差異
わたしが残せるのは一つ
愛でも夢でも誉でもない
錆の下に隠れる鈍い輝き
ステンレスじゃない
燻し銀が放つ眩しさ
誰に遺すでもなくて
誰か見つけるだろう
誰に見つかるだろう
此の埃塗れの誇りを
日が落ちる
夕焼けの空
日は落ちて又必ず昇る
不安定はわたしが見られるかどうかだけ
太陽が沈む
再び昇る為
わたしもいつか死ぬ
輪廻転生螺旋描く為

誰が為

Turkish Forces Start to Enter Northern Iraq.
トルコの軍隊がイラク入りした
Stationed in a field two kilometers north of the Habur border gate,
300 tanks and 1,500 Turkish troops
and commandos are awaiting their operational orders.
After the initial deployment last week of a 104-vehicle convoy
carrying military equipment to the Habur border area,
a larger convoy of 530 vehicles had reached the border on Friday.
The two convoys transporting military supplies,
tanks, combat equipment
and heavy artillery have been waiting in a tent city
erected in a field belonging to Refineries General Directorate,
two kilometers north of Habur.
Journalists have been barred from entering the area
stretching from Silopi in southeastern Turkey
to the Iraqi border.Habur

境界ゲートの二キロメーター北の分野に配置されて
三百のタンクおよび千五百のトルコの軍隊
およびゲリラ隊がそれらの運用上の注文を待っています……
……ジャーナリストはSilopiからイラクの境界へ
南東トルコにエリア・ストレッチングを入るり防がれました……

傍受する無線が急迫を報せる
戦場で出会う戦者達は互いの名も顔も知らず
殺し合うためだけに巡り合う
憎しみは無い
悲しみは有る
敵意だけ持ち
何方を信じて
撃つのか飛ぶのか這うのか散るのか
何も無い戦場に
彩り豊かな瓦礫が降り積もる

解離性障害者

痛いよ
わたしを殺すの
どうして死なせるの
そんなにもわたしが嫌いなの
そうだよ
大嫌いだよ
殺したいくらい憎しみを抱いている
愛憎は表裏一体
自他は分裂破滅
この脳内に巣食う住人達が
交互に現れてはわたしを傷付ける
此れは病気だけど本気
其れは異常けれど真剣
疲れたね
うん
其の点では全員一致だね
眠りたいね
ゆっくりね
永遠ならね
いいけどね
周囲が許さない
周りが拘束する
ベッドと手首を縛る紐が剃刀より皮膚を傷めるよ
死なないで
其の一言が癌の告知より苦しめるよ
早く死のう否生きよう
ばらばらに割れた人格は
ばらばらの主義主張して
真のわたしを殺してしまった
だからね
もう薬を飲んで
歪んだ悪夢に逃げ込もう

Thursday, January 12, 2006

逆旅

喜びや悲しみの訪れは此れを防ぐ道など無く
怒りや楽しみの訪れも其れを止む術など無い
人間は他の動物と違い
無用に喜怒哀楽を感じ
振り回されて傷付いて
有りもせぬ失望に沈み
底の無い絶望に浸る
悲しみも喜びも怒りも楽しみも
其の訪問を迎え一夜の宿を貸す
唯其れだけ
逆旅という
否応も無い時の流れの一泊一飯を供するだけ
喜怒哀楽の訪問は
何時も突然で
何処にでも誰にでも構わず届く
歪んだ平等の名の下
嫌がりながらも引き止めもせず
淡々と送迎するのみだ
獣なら感じない寂寥も
鳥なら望まない飛翔も
魚なら泣かない痛痒も
すべて引き受け人は生きる
其れが人ならではの道
なら行こう
茨を踏んで
剣山に寝て
草の根枕に
旅を棲家に
巡り来たる輪廻転生を
人間として
行き生くる

天運

夫れ鶴は沐浴せざるも
而も白く
然う烏は日々黔めずも
而も黒し
其れを天運となすならば
我如何にか生きむ也
此れ黄色き肌は何時にか白ばむ
此が黄色き髪は何時にや黒染む
生来なるとて耐え難き恥辱
何処にても異人なるかと問われ
彼方にても同郷かと歓待受けず
其処にても旅愁付き纏い離れず
此処にても望郷の念醒めやらず
白は白
黒は黒
黄は黄
赤は赤
斯くも割り切れず
人間は生きるのか
何故に有るがまま受け入れざらむか
生まれもつものでいい
生まれもつが最もよい
後白河院の時代にては
異邦の苦慮無かりしか
太陽の恵みの光り受け
大気の恩恵の酸素吸い
空を地を海を賛讃して
この地上を生きる
足りぬのか其れだけでは不足するか
生を否定すれば死は無し
死を疎んじれど老は訪れ
老を避けるなら成長無し
斯くも悲しい
人の性

地水火風

筮竹を振り落とす
地水火風が一日を占う
旗風に靡き
戦意上がるなれど
戦果下がる
人は敵味方無く死に絶え
夜光り静かに亡骸に照り
遠くまで其の死を伝える
月光も死神となる
人の世は塵界なり
無情に全てを射す青白き月を讃えて
生死の狭間の者は
何を願うか
何を託すか
誰を慕うか
我を想うか
富貴求めれば苦
長寿守れども老
安泰守るとも乱
歴史は動く
繰り返し連動する
連鎖反応的な戦争
殺戮の嵐
荒れ狂う
絶滅の静寂を待つ
何時の世も元凶は人間
諸悪の根源

殺意~弟へ

僕を殺すの?
どうしても?
あんなに仲良くしてたのに?
僕を殺すの?
お姉ちゃんと一緒に食べた晩御飯
美味しかったよ
もう作ってくれないの
そんなに僕が嫌いなの
分かったよ
其れ以上何も言わないでよ
悲しくなるから
寂しくなるから
苦しくなるから
もう息出来ない
苦しいよ寂しいよ悲しいよ一寸だけ恨むよ
けど今はもうさよなら
さようならわたしの弟
可愛い筈の愛しい筈の唯一人の弟
ごめんなさいね
苦しかった?
もう何も感じないね
やっと楽になれたね
わたしもだよ
さよならして楽になったよ
バイバイ
名無しの弟
解離性同一性障害が生み出した
架空の弟

簡素な生活

ヴァグネルは言う
小さな事どもに於ける忠実さが
達成されるあらゆる大きな事の基礎を成している
塵も積もれば山となるなら
屑のわたしの人生にも
何か産み落とし残せるだろうか
彼はもういないから
答えなど無い
誰も答え無い
わたしの中に生きていた弟
分裂した人格を一人殺した
今日新しく生まれ変わるべきか
新しく生み出すべきなのか迷う
答えは無い
選択の道はこの人生一本だけ
幾つの枝葉末節有れど
わたしが辿るのは生から死へ一つ
生涯の辛い時期こそ
小さな事どもに対し忠実に処すべきだとお偉い人が言うから
何の救いも無くなるこの今こそ
憐れな破片の唯一つ
手元に残った唯一つ
救らいの箱舟となるほんの僅かなこの一欠片を
世界一貴い物として
たった今からわたし
生き直します
殺した弟への
餞に

金払えと君は言う

家内安泰
交通安全
商売繁盛
不老長寿
何でかな
絵馬にはそんな願いばかり
何故誰も願わない?
世界平和戦争拒否人類平等地雷撲滅と
そう願う人が誰一人いないこの国は
はったりのホワイトバンド
ゴミになるだけの赤や緑の羽ピン強制
義務的で行方不明な募金
そんなのばかり溢れていて
本当の戦場を知らず流血の恐怖も感じず
殺さねば死ぬ意味も
汚れねば死ぬ社会も
穢れねば死ぬ貧困も
何もかも知らないで自己満足に浸る倭人
Yellow
軽蔑され怒る大馬鹿な日本人だと
どうか自覚してくれ
有色人種だと認めろ
Coloredと目覚めろ
これ以上恥を曝すな
手首に巻く白いバンドの代金が何処へ流れて行くか知ってるか
一度跡を追えよ
彼のグラウンドゼロへ辿り着け
わたしは猛烈に恥じ入っている
中東で見る空は決して青くない
何もかもが灰色
舞う黄砂だけが瓦礫の街を彩る
手足の無い女は
日本人を相手に身体を売る
日本人はお得意様だ
芋虫が抱けると
喜色満面で訪れては金を払って恥を売る
金ばら撒き娘を買う
手足の千切れた女の子を弄ぶ
其れが真実だ
わたしは唯書くことしかできない
どれだけ涙流しても誰も救えない
真実を見ろ
切に願う
真の醜さ憎さが内在するこの国で
偽善を止めてくれ
見たくない
でもそれ以外
何も出来ない

命にも代えて

命にもかへてけふなす言説を
わが大君はいかに見たまふ

此れは二・二六事件の翌年
尾崎行雄が詠んだ辞世の句
国会演説に望み
何思ったか
壇上で軍部の横暴を堂々と非難し
詩通りの命懸けの演説となった
反軍的と目され
早暗殺を覚悟していた
命に代えて為した行動
立派なのか馬鹿なのか
誰に今判断できるのか
戦後還暦の秋
最早政治は靡くばかり
血腥い時代にもあった政治家の気骨とやらは
善く言えば時流に乗り
悪く言えば時勢に流れ
強い者に急ぎ巻かれる
弾力の無い脆くて汚い死んで腐った魚のよう
もういないのか
時代を変える誰かは
ならば己が為せ
即時言い返されれば二の句も告げない我
我が命もこの国とともに腐りやがて朽ち果て地に還る
還るべき大地を汚しながらも
傲慢に我儘に
唯願う
母なる星は我等を許し給うか
答えは
其処に
此処に

お帰りなさいませ

今日一日今一時を喜び楽しみ過ごす
其れは寂滅為楽を説くあなた様には罪悪でありましょう
喜怒哀楽を愛すわたくしには祝福でありまするが
世捨て
人捨て
山へ逃げた身は
此が草庵似合います
けれど時折吹き来る秋の風が
山奥の侘しさ曝して
世間様に申し上げる
其処は賑わしいかと
此処は寂漠たるかと
彼方は艶や楽しかと
其方は婀娜なめりと
此方は苦悩満つだけ
羨むべきは何方なるか
私には分かりませぬ
過ぎにし方も
今在る現世も
未だ来ぬ方も
総じて愛しく妄執に憑かれておりまする
我が身をば恥と思われるか
あなたは手文も寄越さずに
我一人此処にてお待ち申し上げますから
如何な姿にてもお帰り下さいませ
なふくつみ給いそ
ゆめ悲しみ給わず
若しお迷いならばお迎えに参ります
嗚呼あなた
斯様な無様を笑ってください
早笑って掻き抱いてください
きつくきつくもう二度と離れぬよう
時代にても放せぬよう
添い遂げましょう
あなたお早いお帰りを
この身が朽ちてしまいます
この世が終えてしまいます
早く早く
お帰りなさいませ

聖体拝領

あなたは不治の病だった
現代医学じゃ手に負えない
仮病という名の病
どんな治療も功を奏さず
あなたは仮病を真の病に変えようと
必死にリタリンやハルシオンを飲み
身体中自分で切り刻み
二階から飛び降りて脚を折り
殺虫スプレーを喉奥に噴射し
盗んだ濃硫酸で顔面を洗った
あなたなりの戦いだったのね
初めて病院へ行ったとき
検査後に言われた言葉があなたを雁字搦めにした
何カ悩ミハ有リマセンカ
あの時壊れちゃったのね
長くて辛い戦いだったね
やっと終わったね
あなたは仮病に勝ったよ
誰もあなたを責めないよ
皆自分自身を責めてるよ
あなたに遺して逝かれた
ご親族もご友人も知人も
わたしは自分を責めない
あなたが嫌がってたから
あなたは誰かを傷付けるのがとても怖かったんだよね
其方の景色は如何ですか
彼岸は綺麗な場所ですか
此岸では皆が泣いてます
ぐちゃぐちゃのあなたを
警察も葬儀屋も見せてくれなかった
だからお通夜が終わり人が去った後
残ったわたしはそっと棺桶を開けて
あなたの姿を直視した
白帷子を肌蹴て
ステープラーで継ぎ接ぎされた胸を
携帯する爪切りで少しだけ抉ったよ
もう血は出ない
弾力無く固まった肉を一切れ分
わたし口に含み味わい噛まずに嚥下した
お返しにわたしの肘の内側を切って
綿の詰まったあなたの口に入れたよ
此れでいいね
ずっと一緒だ
死が二人を別つとも
火があなた焼くとも
間に合った聖体拝領
輸血より濃い一体感
あなたは少ししょっぱくて酸味があって不味かったよ
多分あなたも同じ事言うね
でも美味しかったって
お葬式は手早く済んだ
見せられない遺体ではご焼香の時間も少ない
火葬場へ行く途中陽射が眩しかった
お迎えかな
だといいね
二時間待って見たあなたは
手足の位置が出鱈目になり
くすんだ灰より多くの針に埋まってた
継ぎ合わせる無情で無機質な
ステープラーの針の山
遺灰より多くの針の山
あなたって本当に見られるのが嫌いだったのね
最後の最後まで見せられない
死んだあなたを何時かカメラで写そうとして
カメラ付きケータイもってる
あなたは今のところ写らない
明日は写るかもなんて思って
やっぱりケータイもっている
寝るときも枕もとに
歩くときはバッグに
何処でもOK
何時でもOK
さあ出てきて
できれば綺麗だったあなたの姿で
爆ぜた柘榴のようになった
あなたではなくね

成功は天に昇るほど難しく
精一杯背伸びしてやっと掴んだのに
失敗はいとも容易く訪れて
幾度頭を下げても取り返しがつかず
わたし滑り落ちた
落ちるのは楽だね
怖いくらい楽だね
命賭しての覚悟で百難を突破せむと立ち向かえど
始めあっても終わりの無い真闇に潜り込んでしまった
わたし自身は何も変わらず
状況が変わっただけなのに
世間の風向きは一変したよ
敗者に価値無し敗者は去るべし敗者と笑われる
此れでも耐えろと言うの?
虚飾の街の灯に惑い虚栄と見得を信じた
中身が空だと気付いたときが失敗した瞬間だった
失くすまで分からなかった無価値の価値
今噛み締める
苦くて酸っぱい鉄の味
其れとも我身の血の味
近しい人ほど遠くなる
犯してしまった失敗は
手にした虚栄を剥がし生身のわたしを曝した
脈打つ血管一本一本にこんなに愛を注いだのは初めて
やっと分かった
何が大切なのか
何を尊ぶべきか
何に感謝するか
剥がれた鍍金は戻せない
もう戻したくも戻りたくも無い
引き返さす針路変更
舵を取るのはわたし
ラメ入りの未来予想図は真っ黒に煤けた
今は純白に戻して
自由に描こう
わたしだけの人生航海図を

果実の想い

真新しいもぎたての梨や林檎
息づいていた果樹園から離れ
見知らぬ誰かの倉庫の棚の上
夥しい瑞々しい香りが充満し
人や鳥や獣を喜ばせる
だけど梨や林檎達はきっと寂しいだろう
この香りはあの朱夏が
藍色の空と薔薇色の土から作り出した実り恵みだ
感謝を忘れて食うに耽る我等
何時までもこの果実を食える
そんな誤解をして貪るだけだ
この星の恵みは自分が培ったと栽培業者が言う
土の水も光も恵み貰うに過ぎないのだけど
そんなこと人間は気付かない
齧り付く果実の肉色に
滴り舐める甘い果汁に
生命の存在を認めない
確かに果実は食われるために存在するけれど
其れは親が子の種を撒くためで種を廃されるためではない
子を殺されるためではない
未来の種の存続を説に願う
鳥に託した親心
人に食われたくは無いはずなのに
今日もわたしは食う
生命の根源をわたしは食う
何も未来へ繋げずに只食う
いつか果樹達は復讐するだろう
子を潰す人間に報復するだろう
もう其のときが来ているのかも知れない

氷心

一片の氷心は玉壷の中に
どれだけ綺麗に飾っても
虚飾の鍍金は必ず剥れる
必死に貫いた嘘も
化けの皮が剥がす
そんなこと知っていた筈なのに
魚心水心氷心
抱き隠し遂せると想っていた
突き通せば嘘も誠になる
古い諺を信じてしまって
君に嘘を吐いた
君を裏切った
君を欺いた
君の心が破れた音を聞いた
繕うにも針も糸も無い
切り裂いた君の心をまた針で刺すなんて出来ない
逃げてるねわたし
逃げないね君
だから傷付け合う
わたし達の心凍る
必死にくっついて一緒に融けようよ
互いの血を混ぜて肉を捏ねて纏めて一つの何かになろう
だから赦して
もう一回だけ
やっと開いた目には
何処へ視線を移しても
其処に此処に映る
君が
君の眩しすぎる残像が
随所に焼きついて離れない
この氷の心と心
氷解させて一つになろう
もう一回

楽園

此処は何処だろう
なんて綺麗だろう
霧でも靄でもなく霞が立ち込めてて
暮暗か暁か夕陽か
眩し過ぎない光り
なんてことだろう
思い描いた全てが此処に今実現されてる
絶え間なく流れる恋歌
囁きはいつも愛を語り
手と手は繋がれ握られ
寄り添うのは老若男女
此処には悩みが欠片も無い
嗚呼楽園だ極楽だエデンだ
踏みしめる土はクッキーで
河にはミルクが涛々と流れ
石はどれもチョコやお菓子
雲はマシュマロで甘く香り
木にはあらゆる果樹が実る
鳥や獣や魚さえも愛を告げ
生まれる赤ん坊は羽を持つ
此処は何処だろう
――夢墓場で御座います
入り口の看板に描かれていたままの女が一人立ってた
――貴女寸早いですよぉ
看板を女に似せたのか女が看板に似たのか
どっちにせよ看板に嘘は無い
細身の女が続ける
――わたしが女将でして
――此処がお気に召して
――でもねえお断りかな
――貴女若過ぎますもの
わたしは此処に居られないのですか
――閻魔様に叱られます
わたし全然意味が分かりませんけど
――知らぬが花でしょう
此処は何処ですか
――言い置きました通り
――夢墓場で御座います
わたしはもうずっと此処に居たいの
――皆そう仰いますけど
――必ず出て行かれます
――ご自分の意思でねえ
わたしが一緒に居てあげる居させて
――否誤解無さいますな
――寂しくはありません
――独りは慣れています
わたし追い出すのどうしていけないの
――御覧なさいましほら
――貴女此れではねほら
――お嫌じゃありません
女が見せた水鏡
其処に映るわたしの顔は
嫌だ――
――そうでしょうよねえ
――ではお戻りは彼方へ
――二度と来ぬようにと
――遥かにお祈りします
やっと目が覚めた
白い天井は罅割れカーテンは半透明
映画やTVと違う現実だ
父母が泣く
医者が診る
大丈夫言ったのは
誰?
親?
医者?
看護師?
あの女将?
生き延びた感激は無い
死に損ねた脱力が有る
そうだった
わたし学校で首を吊って意識が途切れてて
あの場所へ行った
でも追い返された
夢墓場って何処?
二度と来るなって何故?
遥かに祈るって何を?
わたしが若いから駄目なの?
もう一生分わたし苦しんだよ
皆から苛められたし
でも無視よりは良かったな
苛められる時間だけは
わたしのこと構ってくれるから
無視はキツかったよな
生きながら幽霊だもん
だから絶望して
そして首吊って
死に損ねて生き延びた
生き恥曝しまた苛められる
そっかそれでいいのか
皆わたしを見てくれる
悪口陰口叩いてくれる
わたしを無視しないでわたしを苛めてくれる
女将さんありがとうね
お祈りは通じたみたい
もう少し経ったときにまたお邪魔します
其の時は居させてね
あの楽園に

雑踏に紛れて

この街は人で一杯
何処へ行っても何処を見ても人込みだけ
均一化された個性
統一化された主張
絞り出す音も一緒
漏らす不平も一緒
考えも感想も一緒
飼い馴らされた人間達
顔のぼやけた生き物達
この雑踏に中にわたしも紛れる
ほらもう皆一緒
皆と一緒の孤独
こんなにも寂しいのに
完全なプライバシーを守るには
お金を払って切り取られた空間を買うの
変な街
嫌な街
汚くてごちゃ混ぜで
でも皆同じ
こんな街いつか出て行く
そう思ってもう何年経つ
そんな自分が一番嫌いでこの街に罪を擦り付ける
死んでも地縛されそうで
何もかもが怖く恐ろしく
怯えて縮こまって暮らす
そんな雑踏に今日も身を投じて
個室を月々賃貸するために働く
なんて惨めなこんな侘しいわたし
生きる価値を探す
皆と一緒に
一緒である証拠を
捜し歩くの

老いたる馬よ

来た道ならば笑うな子等を
行く道なれば叱るな老人を
真の知恵者
誰なるかを知れ
老い痴れ者
誰あるかを悟れ
彼の平家物語も語る通りに
雪は野を埋めども老いたる馬ぞ道は知る
そう詠っておる
琵琶法師の悲しき調べ
誰の胸にも響き
繰り返す過ちを
底の無い愚かを
この時代にも語り継ぐ
学識者には知識有り
無学者には知識無し
然れど学者は知識を使えない
農民は知識で生き抜く
知識を知恵とし活かす
其れは血と汗に塗れて体得したもの
戦争の前中後を行き抜きたる現在の老人にこそ認めらるる
如何に学歴で飾っても
如何に資格で装っても
叶わぬ知恵を彼等は会得する
頭垂れ教え乞うこそ最速最善の道なれば
笑うな子等を
嘲るな老人を
純真を分けてもらい
智恵を授けてもらい
生き抜けばいい
生き馬の目を抜く時代を颯爽と疾走せよ
未だ若き思慮浅い者ども
至知は幾ならず
平々凡々事為す
其れ最高の智恵
天地は一心一心明らむ
不順尚の事
真の自由は何者にも頼らぬことだと
幼げな翁爺翁姥が笑う
この世は其れで良い
あの世も其れが良い
自由に遊ぶ者に学べ
何時か行く道
お迎えは直ぐ其処に
お送りは真心込めて
この良き日を祝わむ

Happy birthday to you!

雲晴れし後の明月こそ
亦一段の慶び有りたり
障害も妙境の前兆なり
張り詰めた弓は緩めねばならぬ
死に遭えば其れ一時の動揺鎮め
偉大な大悟する
人欲は嘘偽りを
天欲は心と実を齎すもの
I'm still all right!
口癖になる言葉
まだ大丈夫だと己に言い聞かせ今日をも生きる
思案投げ首より何事もお任せに
人知れぬ善行が今知らぬ才能が
光り放って輝き君を待っている
照れくさくてね
遠回しに言うね
でも留意してね
生きている物は守られている間はお任せでいいんだ
守る側になったら本当の辛さ苦しさが分かる
そして強く優しくなれるよ
だから急がず慌てず悩んでゆっくり大人になれ
時機に遅れていいよ
好機を逃していいよ
今君は大きな愛に守られてるから
いつか守るべきものを見つけたら
其の愛を思い出して守ってあげて
喜びは感じるもの
幸せは気付くもの
自ずと生じるもの
無理して盗まずに分け与えてね
心から言うよ
Happy birthday to you!

月は東に日は西に

菜の花畑は秋桜畑に変わっていた
小春日和の一日
長閑なる秋一日
紺碧の空は何処までも高く
真綿の雲は何処までも続く
見飽きずに眺めれば何時にしか日が暮れ
春に勝れり見事な時
月は東に日は西に
嗚呼勿体無いことよ
この掌を東西何れに合わせたものか
この頭を月日何れに垂れたるものか
今日が入る
後月が昇る
古今東西問わず誰しもが拝むるこの神秘
宗教は人間が作り上げたものなれど
日没月昇は大自然の創りし奇蹟恩恵
一時期に拝むなど如何にか勿体無し
この幸せが続くなれば
この身でもう少し生き
天の果て地の限り拝見致さむ
頭垂れて夜
星星も清か
神話織り成す星の光は
大気冴ゆ季節亦美しい
日が沈む寸前
月が覗き始め
一番星輝ける
三美揃う刹那瞬間より短き至福なる刹那
今日を生き抜いた実感と明日に臨むに要す勇気と
身体より魂の底から湧き来る
嗚呼勿体無し
この凡人に
この非凡たる景色
大自然の不可思議に
平伏して
今宵眠らむ

御教え

逆境に在ればこそ悠然
順境に在りと雖も泰然
人の大きさの測りなり
そう確かにね
清澄なる水には魚棲み難し
完璧も過ぎれば生き難き也
分かってるよ
こう声明大なる批評も
面前憚らねば恨みの元
知ってるって
他人の他から数えて何の益有るか
無益や
でも羨ましい
偽りは人情に背き
欺くは天理に背く
皆やってるよ
善悪の固執せず淡々と対せよ
愛憎強ければ心に迷い生ずる
仕方ないのに怒り恐れ好み
憂いは全て人情
心の調整
螺子一本にて変わる
でも出来ない
死後は生前の延長なれば生有る行為大安楽死繋ぐ
死んだら駄目
そんなお題目ばっかり垂れて疲れないの?
和尚様
わたしは
天理に背き信用賭して財を望み
無視より苛めを好む背徳者です
来客あるも茶菓子無し
そんなことばっかりで疲れました
善い人の振り辞めます
有るがままの自分出し生きたいと
実際にやってみたらば
悉く夢破れ山河廃墟に
都忘れた落人になった
やはり御教えは守るべきでした
過ち改むるには老い過ぎました
此処でこうして朽ち果てますが
御坊には
幸有れ

今日本到着

かなり疲れた
今回の出張は年俸決める面接やら役職定める試験やら
ワシントンの風強く
わたしを迎え打った
決まったよ
今年度のポストも今年一年の年収も
結構イイじゃない
時給二百ドルだぜ
立派な弁護士だぜ
でもなんか虚しい
わたしの全てからスキルをとったら
骨しか残らないと宣告された気がした
みんなそう思いつつ日々頑張ってるんだ
分かっちゃいるけど止まらない
自傷行為とチェーンスモークとアルコールとODと
自分で自分を壊していく
初めての入力日本語が此れじゃ
行く先暗いねわたし
取り敢えず今着いたよ
迎える人は無く
預けた車飛ばし
一人の部屋
シケた空気がそのまま残ってる
突然なるワシントン本社行きは
わたしを格付けして放り出した
格上げは嬉しいか
昇給は喜びか
其れで良いか
本当に善いか
他人を蹴落とし手に入れた地位
その見返りにわたしは何人裏切りどれだけ嘘を吐いた
汚れた華やかさ
穢れた見栄張り
落ちていくどんどんと無限に無間に
暗い冷たい
其処は此処だった
誰もいない一人のマンションが主を嘲笑う
オ前ハ独リ死ンダッテ誰モ泣カズイツマデモ独リ
自分で選んだ孤独ロード
突っ張って
咳をしても
独り

君思う

遥か遠く西から立ち返った
帰ったといえない我が入国
今の全てを西で奪われ
新たなもの与えられた
自分を見失う
自分を許せぬ
自分を憎んで
自分を諦める
持ち帰ったものは真新しい重荷
新鮮な大責任
こんなもの検査してどうするの
税関職員
できるなら放り出し
赤ん坊に戻りたいよ
わたしにもあった筈の純真無垢な可愛い頃
覚えてないから戻せない
忘れているから帰れない
なのに付き纏う問い
ねえ神様
わたしは生きてていいかな
不確かで絶対的な神様は決して
答え無い
拒ま無い
唯大きく広がり見守って温かくわたしを包んでる
でも神様
あなたを見失ってわたしは唯一人の人を見つけた
此れまで全てを失っていても神様が残っていると
信仰深い女でしたが
あなたを見失った時
あの人を見つけたの
もし神様を失うとも
わたしはあの人を見つめる
世界でたった一人のあの人
神様は一度もお姿を現さずわたしを不安にし試すけど
あの人は手で触れ眼で見てわたしを抱きしめてくれる
ねえ神様
あなたよりあの人を選んでも
わたしは生きていてもいいですか
駄目でも生きて傍にいたいのです
誰でもなく
彼の隣に

恋芝居

どうしよう
こんな気持ち初めてで
わたし小娘
お茶を飲む仕草さえも小指まで緊張している
笑い方も変えた
食べ方も直した
話し方も可愛く
甘え方を覚えた
抱き締められる心地よさ
この齢まで知らなかった
寝ても覚めても君を思い
汐らしい作法を身に纏う
此れって嘘吐きなのかな
でも無意識になっちゃう
今まで馬鹿にしてた恋する乙女に
今やっとわたしも仲間入りしたの
一つ困ったのは神様に誓えない信仰と愛の並存
まるで巨大な夜と真昼に輝く太陽の両方を望むような愛の誓い
神様の御前で嘘を吐く
病むとも窮するとも
死が我等を分かつ迄この愛を神様に誓う
わたしの中に同居できない大き過ぎる存在だから
わたしは神の御前にて嘘を吐く
神様よりこの世の誰より
この人だけを信じ愛する
こんなこと神様の前で宣言するなんて
結婚式って馬鹿げた儀式ね
今迄の信仰を捨て
愛を誓う
喩え
死が我等を別つとも
神の御前で恋の芝居
信仰を貫く振りして神様を裏切り彼だけを愛す
わたしもう二度と教会へ行かない
わたしもう再びは教戒を守れない
全世界が滅んでも
天が獄に落ちても
わたしにはこの愛だけ彼だけいればいい
こんな本音隠して続ける
恋のお芝居
罪深く愛しい
恋芝居

rm滅び秋

大都会にも秋来たり
僅かな立ち木色づき
世界が血の色に染む
蟲共が断末魔を叫び
翅摩り余命短し喚く
枯れて落ちた紅葉は
アスファルトを擦り
人の心をざわめかす
真夏に散った恋や夢
復讐せむと再来する
秋の黄昏は暗い狂い
春の朧なる月と違う
秋の冴え冷ゆ夕べは晩夏の華やぎ残せり
引き換えて全生命の終焉の予感投げ与え
復讐のため再来する
嗚呼災い哉
禍いかな
美し色の紅葉に篭る
砕けた愛の残骸共が復讐を携え再来する
此れ迄散々踏み躙り殺し尽くした草花が
人智凌駕せし質量で
愚かしき人共に勝ち
いい加減な人の魂が蹂躙さるる
紅葉血の色
世界肉の色
紅葉総じて仇討された死体の腐肉
啄むのもが秋に勝つ者
負けし人はひた流血し紅葉進める
世界は血の色紅葉色
若しかして一番美しい季節なのか
滅びの予感嘘寒く靡き
我等人類を叩きのめす打ちのめす
世界は流血し腐敗し真っ赤に染まる
薄紅の季節
滅びの時期
死に向かう瑠璃星染む
美しき秋也

r空蝉

秋は寂しい
夏が終わり賑わい失せ野分荒れ来
人気も消ゆ血の色の季節や
空蝉は秋の総てを象徴せし
空蝉転がる
遊女塚草に埋もれ仰向きたる
最期は人に似たり
蝉時雨止めなれば赤子も黙り
唯薄寒し風吹かれ
盆終えし家
魂魄と風の通り道
誰が為の音
白秋の虫の鳴き音
寂し姦しく
我は枯葉共の舞う風の中にて風掴みて放ちては
得体知れぬ不安に狂う
物苦しい秋侘びしい秋
収穫は唯の慰めに過ぎぬ季節
祭囃子騒ぐ
子等の遊ぶ
穏やかなる風景も一時の夢幻
全て死に絶ゆ冬へ贈る断末魔
蟲が魚が鳥が獣が死に眠り渡り逸る死に急ぐ
空蝉の姿干からび砕け散り霧散すのみ
我に重ねて死を予感す
血の色の秋

m大場挺身隊

昨夜は騒がしかった
彼岸が近づくといつもざわめ
く我が枕元
此処は何処でありますか
此処は伊勢です
了知致しました
此れより直ちに野戦病院へ赴き
入院を許可されぬときは自決を致します
この肉を部下へやってください
皆飢えています
骨をしゃぶりて敵兵一人とても多く殺さむやと申し伝え願わむ
彼の腹は破れて内臓を引き摺り
左目はもう無く
左腕も既に失い
其れでもなおも軍務に忠実誓う
伝わってくる飢餓地獄
食い物を求め探し流離う辛酸
仲間を殺して食うかもと
肩貸す怪我人を食おうと
浅ましいまでの飢え渇き
だから自分も食われたいのであります
何時か自分も食ってしまいそうで怖く
食ってしまった食感を旨さを忘れ難く
償いにこうして何時まででも餓鬼道を歩いております
もういいのです
あなたの贖罪は終わっています
靖国は彼方にて
我が念仏を連れ
どうか安らかに
自分たち棄民は骨も拾われずに遠方で苦しみ続けて
未だ彷徨うのです
靖国へ我が君は何故に参られぬ
神と信じ命捧げ
なのに参られぬ
因って眠られぬ
この国の滅び迄
いついつまでも眠れませぬのだ
なれば伊勢へと
彼の地は焼けず米軍さえ恐れた大和の神聖の地
天孫の御親座す安らぎの地にて
今もう眠られよ
人を食った自分は許されるでしょうか
あなたもご自分の肉を仲間に食わせた
贖いは終わりて眠られますからもう少し西方へ
……承知します
気をつけて……
最期に申し置きたいのです
我等の名を
オオバテイシンタイ
と名乗りおります……
大場挺身隊
わたしも承知しました
彼は逝った
骨は残った
フィリピンに置き去りの棄民なる部隊
伝わる悲しみと郷愁
骨を拾いに誰が行く
わたしには分からない彼らの死に場所
大場挺身隊
ネットでもヒットしない
誰かご存知ですか?
どうか骨の上でピースサインの写真を撮る前に
両手を合わせて祈ってください
名も知れず埋もれた彼等に
拾う骨さえ無き彼等に

終練

今まで幾つの命を奪ったか
踏み付けた草花
叩き潰した蝿蚊
吸い込み溶かす見えない微生物
其れ等命と我と
何が異なるのか
何も変わらない
質量の差だけだ
沈思するに悲傷
黙考すれど感傷
無意味な思考は宙に漂い消える
受苦からの離脱
煉獄にての浄化
日常は罪に満ち
老いて行く我は無益に秋を過ぐ
不意に鎮まる虫の声にいっそうの静寂感じて
其の無音の真闇に居りて
一閃の刃落ちる風切り音と
流血生ぬるい液体が胸伝う
絶叫せし声闇に吸われ
異界の扉が開く
展開する光景は
物々の影で企む
誰が悪意の戯れ
瞳を凝らせども目を閉じるとも脳裏に焼き付く
一片の骨の白
あれは父だった
子供の頃の合図
釣りに行く符合
嗚呼父が帰った
死んだのは他人
白い骨は石ころ
父がああなる筈が無い
パパ早く行こう
秋の海は豊漁で今晩鯖を煮よう
見えない父が口笛吹く
出発の合図
二人の秘密
さあ行こう
お手繋いで車に乗って
楽しい海へ静かな海へ
終わらない夢が練り混ざり
練って捻って捩れて千切れ伸ばした手に蟋蟀が止まる
奴の爪が肌に食い込む痛み
現実が夢を切り裂き
虫どもが一斉に鳴く
激しい音を立て扉が閉まる
楽しい夢は辛辣な今に変ず
もういいかい
まあだだよ
もういいね
まだ駄目だ
死ねないわたしは生き延び
今日も何かを殺しては屠る
ねえパパ早くつれってって
この世はこうも暗くて辛い
早く抱っこしてお手々繋いで一緒に寝て
まだだよ
まだだ
まだ
生きろ
生き抜け
何を殺せど自分は殺すな
父が一番厳しい
死ねないわたしの終練は
確かに修錬習練の連続だ
終わらない生は無いから
死を急がずに生を噛み締め
何かを殺して生きるだけだ

ぶんぶく茶釜~壱

昔々善吉と幸って夫婦が山の村に住んでいた
猟師の善吉は或る日
山で狸に握り飯を盗まれた
次の日も次の日もだ
善吉は優しかったが流石に堪えかねてね
そうっと握り飯を見張った
其処に出てきたのは何と狸でなく人の子
髪はぼうぼう服は木の皮の汚らしいけど女の子だった
哀れんだ善吉は連れて帰り
言葉を教えて身形を整えて
みんなで幸せになれるよう願いを込めて福と名づけた
善吉に幸に福
見るだに幸多くで穏やかで善い暮らし振りだったのさ
あの日善吉が熊に殴られるまでは
善吉は重傷で死ぬ寸前でね
心配が過ぎたのか身籠っていた幸は子を流し
夫婦揃って重篤に陥ったよ
お福は必死に医者を探した
だけど医者は沢山の金を要求した
善吉達にそんな蓄えは無い
泣いて帰るお福に目を付けた男が一人おった
其の男は人買い且つ人売り
幼ければ顔など構わないと
幼子漁る狐面のご隠居から頼まれていた物を見つけた
人買いはお福に言い聞かす
お前の身一つで金が儲かるのだ
医者と薬を買う沢山の金が入る
お福は何も分からず肯いた
幼いお福に醜い欲望は予期し得なかった
善吉と幸は止める力も術も無くってね
ただお福の身を案じて祈り
お福の身代金で体を治した
お福を待っていた欲望とは
醜く浅ましくおぞましい欲
胸の膨らみも拙い女の体を
狐面した爺は貪り甚振った
男を知らぬ無垢な幼児たるお福の下の口は締りが良く
ご隠居は大いに褒め称えて
昼となく夜となく責め立て
時には後ろ手に縛り吊るし
時には裂けるほど股を開き突いては漏らしまた突いて
お福の虜になった
見ておれないのがご隠居の女房婆さ
婆と雖も女は女さ
亭主の不倫に堪りかねてね
ご隠居が寝てる間にお福をあの人買いに売っちまった
此れ以上辛くはないと思い
お福は大人しく従った
そして着いたのは遊郭
綺麗な姐さんが溢れて婀娜な声でお客を引く華やかで悲しい地獄さ
お福は着物を宛がわれ
着いた晩から早速にと店に出た
ところが客は笑うばかりで
一向にお福を抱こうとせず金も払わず文句ばかり付け帰っちまう
当たり前さ
何たってお福は狸顔だから
あどけない垂れ目の丸顔は可愛い醜女
金払って抱く気にさせない可愛い醜女
お福は役立たずの遊女として下働きに追われた
下働きはお福を楽にしたが金は全く入らない
其れでは困るのだ
お福は善吉と幸に薬代を送りたいし
一人前の女としてやっていきたかったんだよ
健気で切ないねえ
お福は洗い場で扱き使われ真摯に思ったんだ
愛しい善吉に
優しい幸に
恩返ししたい
自分のいいところを探した
何も無かった
見つからない
思い詰めたお福は思い付く
地獄だったご隠居との日々
唯一褒められたのは下の口
お福は芸子さんを見習った
芸が身を助けるよう覚えた
やがて此れが
悲しく終わる昔語りの始まりとなるなど
誰も知らなかった
福も知らなかった
でも第二幕は無情に始まる
容赦なくお福を責め立てる
さて一旦幕を閉じて
悲劇の予感をどうぞ弁当と一緒に味わい
次の幕上げを待ちませう

ぶんぶく茶釜~弐

そうお福はね
遊女になったのさ
遊郭では美しいものが勝つだろ
だから狸みたいな顔したお福はそりゃもう馬鹿にされちまった
狸だから客だってつきゃしない
無駄飯食いってっ扱き使われて
肌は罅割れ化粧も乗らないんでもっともっと馬鹿にされたのさ
だけどお福はお金が欲しかった
愛しい善吉さんと幸三のために
病んでる二人の薬を買うために
其処でお福ははたと気がついた
狐顔のご隠居が言った褒め言葉
--御前の下の口は良く絞まる
お福は芸子を真似て客を盗った
如何にして?
其れは当然あそこの絞まりでさ
如何したか?
其処の囲炉裏の茶釜をご覧さい
ぶくぶく煮え立つ茶釜に紐掛け下の口から吊らして見せたのさ
湯の沸いた茶釜をあそこで吊り
目の前で熱いお茶を客に振舞う
客は喜んだよ
そんなに絞まるなら極楽気分だ
来る客はどんどん増えていった
お福は決して自分で使わないで全部を善吉と幸へ送ったよ
自分はこんなに裕福だから安心してお医者に掛かってって
切ないねえ
しかしお福に客を盗られちまい
姐さん達は黙っちゃおられまい
お福を遊女部屋へ連れてってね
煮え立つ茶釜に熱い鉄紐を通し
さあ
あたい等にもやってみろと
お福を責めた
そんな熱いのやったら駄目になっちゃうよぉ
お福は商売道具を守ろうとして暴れて抗った
姐さん達は無理強いし揉み合い煮え滾る湯がお福の顔を舐めた
もとより狸面のお福の顔の左は無残に崩れた
目も煮えてね
目暗になった
当然遊郭じゃ飼っておけないよ
給金の半分だけ与えてぽい捨て
お福はたった一人で冬の川原に茅を葺いてね
自分を煮た茶釜を下の口で吊り
師走の男共に見せて招き吊った
お福は本当の売女になったのさ
但し顔はぼろい頭巾で隠してね
お兄さん寄ってかない
あたしの此処凄いぜよ
男はお福の見事な芸に惹かれて
茅の下筵の上でお福と交わった
安値で極楽を味わった客達はね
お福を茶釜頭巾の天女って呼び
代わる代わる訪れたさ
客足は途絶えなかった
以前の半値にも足らない小銭で
客はお福を弄んで
お福は金を送った
善吉と幸のために
でも節分の日
とうとうお福の目暗が客にばれちまった
無銭で逃げむとした男を捕まえて
お福は言った
あんただけ無料でやらせてやる
だから他の男に言うんじゃない
男はお福の素顔を見て蒼白でさ
分かったを繰り返し逃げてった
其れを鳥瞰する女が一人いたよ
そう
お福に煮え湯をぶっ掛けた遊郭の姐さん
其の女は美しく一番人気だった
そして晴れて身請けが決まった
だからお外へ買い物に出たのさ
其の帰りにお福の成れの果てを見てしまった
姐さんは遊郭へ帰り
身請け人の檀那さんに頼んだよ
お里帰りをね
驚く檀那さんに言い返したこと
自分をでなくお福の里帰り
春近い川原の昼間に立派な成りの丁稚がやってきて
お福さん里帰りだよ
さあさ此れに着替え
身支度をして出発だ
目暗のお福はがんと首を振った
あたいは稼がなきゃいけないの
帰るお里など何処にも無いのさ
本当は帰りたかった
善吉と幸の住む家へ
其の願いは成就した
姐さん檀那さんの粋な計らいで
お福は裕福な家の愛妾の振りで馬の背に揺られてね
僅か一年前を思った
懐かしい匂いがした
懐かしい声を聞いた
お福お福じゃないか
如何したんだ其の顔
嗚呼構わない
お帰りそうか
お暇が出たか
ゆっくりしておいき
御前のお陰で俺達は医者に掛かって
ほらすっかり元気だから
もう奉公に出るなよ
このまま暮らそうな
俺達と一緒に此処で
愛としい声は優しくお福の弱り果てた心臓を止めた
お福は片方の口を引き攣らせて確かに笑った
そして死んだ
此れが本当のぶんぶく茶釜の逸話だよ
悲しいねえ
切ないねえ
女ってのは

r虫狩り

葡萄狩りも梨狩りも飽き
紅葉狩りや虫狩りを求む
今年の秋は少し早染めで
紅葉の赤が目にも染みる
落葉松の中を歩いてみる
何処かで誰かが呼んでる
そんな妄想に捕らわれて
落葉松の道を踏み締める
小さな命達が息衝いてた
此れこそが探す小さな秋
これ見よがしに屹立する詩碑などに用は無かった
此れが詩人の思い描いた小さくて愛しい秋だった
押さえれば須々木
放てばきりぎりす
柳多留に詠まれた可愛いく小さな秋
本当は翅を擦る音
誰が鳴くと言った
古人は情緒深くて
この塵界を変える
美しく優しく清く
真紅に染め上げる
こんな色の着物が欲しい
こんな声で歌ってみたい
こんな小さな秋を抱いて
わたし保護色になりたい
誰にも気づかれず
誰にも聞かせる歌
一人で歌いながら
死んでしまいたい

黄河にて

河伯よ
欣然として自ら喜び
天下の美を以って尽くし
己に在りと為す
貴方の雄大さは
時に優美
時に恐怖
人共の感情など一顧だにせぬか
貴方を頼り貴方を拝む
我等が存在など気にも留めぬか
河伯よ
其の大いなる主人でも神でもあるという
人共の囁きなど一切関知せずに悠々流れを紡ぐ
ご存知か
かつて日本では貴方の名を以ち河童なる妖怪に仕立てた
沙悟浄も笑うか
この矮小なる島国の民を
貴方の大きさに打たれてわたしは
何度でも訪れる
然り其の度打ちのめされ
然るに此度叩きのめされ
何時なる彼方遠く望みて
再来を誓う
次は必ず貴方の姿を見る
水神か龍か今度こそ貴方を見つける
其の時にはどうかわたし呑み込んで
黄河沙一粒に変えてくれ
其の悠久の流れに抱かれ
死も忘れて
流されたい

勝ち負け

諸々の衆もろの小さき不勝以て大勝を為すなり
分かっていても人は捕らわれる
小さな勝ち負け
一寸した勝負事
アクセス数の増減や
ランキングの上下や
馬鹿らしいと分かっていながら馬鹿らしくも固執しては憂える
不思議と笑う気がしない
増えても上がってももっともっとと望む浅ましい人の性
だが生来のものとなれば
神が与えし祝福呪縛
何にも捕らわれずに自由に生きるのだと言う人ほど
柵多く些細な変化に敏感で傷つき易く落ち込む
こだわりは難点弱点
妄執に似た人の欠陥
小さな勝ちに心奪われて大きな勝ちを取り逃がす
だから何時までも進めず退化をし始めた人類
勝負師は負け方が上手い
馬鹿者は勝ち方が下手だ
負けず嫌いは短所なのに
其れを売り込む来期新卒
付き合うの疲れた
自慢は聞き飽きた
本当の技を見せろ
役立つ知恵を持て
そう言うわたしが一番の負けず嫌い
動けない前後左右何処にも
捕らわれ
動けない
上れない
徒落ちる

誘惑一覧

朝起きてわんこと一マイル走り
珈琲にトーストにサラダを食う
新聞を読みながら
誰に弔電を打つか
誰に昇進を祝うか
誰の株式を買うか
あれこれ考え込む
TVはくだらないから付けない
もう何年も見ない
ネットだけでは寂し過ぎるから
アナログな新聞が好きになった
でもチェック項目はデジタルで思考回路も0と1の羅列ばかり
ダンプリストを読み慣れた目は
瞬きを忘れて乾く
潤んだことも無く
潤んだ振りをして
乾いた世間を生き抜く
時間の前で怖気づくな
水なら凍らせ止められるけれど
時間は凍らないで滔々と流れ続ける
懺悔したい良心に克て
一度吐いた嘘は戻らず
疵付けた人は癒えない
ならば嘘を吐き通せ
其れこそが唯一の贖罪
優しくない鉄の女を貫け
今更優しさを表しても余計に他人を欺くだけ
罪だけが増えゆく毎日
純粋なわんこの双眸が怖く感じられる一時間
5センチのヒールでアスファルト蹴る鋼鉄製の女は
今日も一人
肩で風切る
倫理道徳的誘惑一覧を毎朝破り捨て
肩で風を切る

ナチ・ハンター

サイモン・ウィーゼンタール
今の日本人はこの名に反応するか分からないが
わたしの中では激しい化学反応を誘発した
二〇〇五年九月二十七日に
九十六年間の人生の幕を下ろした
尊敬すべき人
彼は死の瞬間満足を得たか悲嘆を見たか
誰にも不明だ
ユダヤ系のためナチス・ドイツの強制収容所入り
四年間の悲惨な暮らしは彼を復讐鬼に変えた
自らは復讐でなく正義の追求だと回顧したけど
誰の目から見ても復讐の鬼だった
八十九人の親族を殺され正義を貫ける人はいまい
第二次世界大戦が終わり
戦争犯罪追及を続けた人
戦犯千百人もの訴追に寄与した彼
其の中にはアルゼンチンに潜んだ悪名高き男
親衛隊将校アイヒマンも含まれた
極少数の協力者とボランティアと
終わらない戦争を闘い抜いた彼は
忘却の恩恵を捨ててまで
欧米の学生に語り続けた
自由と独裁を問い続けた
ゆっくり生まれ育ったものが次第に膨れ上がり最後手遅れ
彼の講義はいつも胸を抉った
同盟国だった日本の女として
どんな小さな不正にも正面から挑んできた彼
日本は被害者意識だけ
ヒロシマと言えば同情に値すると架空の史実を習う我々
友人が理不尽な誹謗を受けたとき
見て見ぬ振りをするなと彼は叱咤した
傍観者は当事者と同じ罪を負うと勇気を教えてくれた
ユダヤ人が雑巾で歩道を拭かされ喘ぎ屈辱に耐える姿を
素通りした者と同じだ
彼は繰り返し熱弁した
そして独裁体制は
人生の意味を見失った若者を先ず虜にしたと
現在の日本を物語った
民主主義国家は意味を与えるべき
其れを学ばないで行う民主主義は独裁体制と変わらない
ブッシュはコイズミは何を学ぶか
日本に溢れ返る
生きる意味を見失い思考を止めた
無気力で無表情な若者達が重なる
わたしは何を学んだか
学びを如何に生かすか
彼に学んだことは多く
彼に返したものは無い
実に許されぬ
我が日本

世界の東で幸せを叫ぶ

わたしの朝はウォッカで始まる
二十一時から始まる本業を終え
業務終了の確認をネットで行い
五台のPCの隣に装備してある
左から順に
ウォッカ
LARK
向精神薬
午前三時半から四時までの時間
左から順に空けていく
夜も次第に明けていく
オリオン座がまだ見える空の下
わんこと一マイルのお遊び走り
じゃれ合うこの一時を守るため
わたしは激務にもへこたれない
わんこと朝食
新聞で株調査
わたしのもう一つの一日の最初
其れは愛車CBR600で開始
わんこを背負って実家に預けていざ大学へ
時速百キロで突走るこの一瞬一瞬が最高に爽快快感
始まる授業は退屈だけど
単位を取り試験を受けて
無事三年間で卒業すれば
途方も無い大吉祥が待っている
わたしは米国へ戻りたい
其の夢のため頑張ってる
来るかどうかも定まらぬ
アメリカの存続さえ不明
況してわたしの人生など
蚊蜻蛉のように頼りない
だけど必死に食い下がる
夢は追うもの夢は見るもの
掴んだ瞬間に現実に変わるから
今はモラトリアム期
現実逃避する
そんな時期が人生に三年間だけあったっていいじゃない
不確かな夢を追っている今が多分一番幸せだから
今は朝から酒飲んでわんこと遊んで
バイク飛ばして超難解な六法と種種細則と戦う
世界で一番幸せ
世界の極東で大声を張り上げる
恵まれない奴等
悔しかったなら
自力で勝ち取れ

酒は呑めども

時間に追われ毎日が酒浸り
夢は追うもの
酒は呑むもの
分かっていて
いつの間にか
夢に追い立てられ酒に呑まれる始末
冬に向かう此れから
一層酒が恋しくなる
風が飲まする酒って言葉があるのだから
北風の所為にして熱燗を煽ろう
寒さ凌ぎに酒を飲む
コンビニで買った瓶コップ酒
レンジ借りて温泉卵落として
店の出入り口で煙草吸いつつ
出来立て熱々のの玉子酒飲む
女捨てたな
いいじゃん
似合うから
古人曰く
酒は憂いの玉葉箒と
古書記す酒は忘憂の徳ありと
昔の人は誠にいい人だ
とても都合のいい人だ
嫌な事と心配事しかない現世
束の間の忘我の恩恵は有難い
どうせ朝が来れば忘れさせたはずのことごとが一挙に押し寄せる
分かっていたってもう止められない
一度知ってしまい快感を覚えたなら
井蛙以て海語らず
わたしは井の中の蛙で結構だ
大海を知ったとて銀河を知らず
大銀河知ったとて宇宙を知らず
大宇宙知ったとて別次元知らず
終わり無い追求は
本当に夢だ
まさに幻だ
安酒と同じ
満つこと知らず溢れ返るもの
虚に拘わればなり無に返るのみなり
空海は妄執を戒めているけど其の割りに
真理の探究には執念を見せた
守銭奴と何処が違うか
売春婦と何が異なるか
追うものに善悪があるというのか
追うものは何時だって美しいもの
追われれば妄念に変わり醜くなる
其れだけの差
此れだけの別
酒に呑まれる毎日が早く終わるよう祈る
其の気持ち誰しも同じ
其れを寂滅為楽と呼ぶならば
誰しも高僧
皆して高徳
何て詰まんない世界
さっさと終わろうよ
皆揃って三途の川に行列作る
日本人は行列好きだから皆で閻魔を脅かそう
世界総死去
此れが現実
ならもうニュースにならない
読む人がいないから
やっと平和が訪れて
やっと旨酒に浸れる
血の味と綯い交ぜて新しいカクテルを作ろう
嗚呼わたしって本当
酒は呑めども酒に呑まれて
いい気分

好きだよ

世界の中心イラクからのメール
ザイードに泣き言漏らしたから
仕返しみたいな叱咤するメール
君は恵まれている
現代日本国憲法は
職業選択の自由や言論就学の自由が謳われている
世界最長寿の最高の憲法だ
そんな国に暮らしていて何を嘆くのか
今の僕には何一つ自由が無い
生まれたときには戦争が始まっていたし
物心ついた頃には両親兄弟が死んでいた
僕は銃を撃つしかなかったよ
もうじき自爆に追い込まれる
覚悟している
一人でも多くの敵を巻き添えに死ぬだけ
其れ一つだけを願って今日も礼拝を行う
死ぬため祈る
其の虚しさが
恵まれて甘やかされた君に分かるかい?
人を殺さずに生きられる幸せを感謝しろ
二度と再び僕は君に会えないだろうけど
君の笑顔の存続を祈っている
僕の最後に願いを聞き届けて
砂漠に降る雨のような笑顔で僕を送って欲しい
こんな小さな願い叶えてくれるかい?
所々スペルを間違えた英語が熱く滲む
目に染み君の笑顔と重なる
そうだねわたし恵まれてる
十分分かっている
でも本当に欲しいものは逃げ
見たくもないものに囲まれて
わたしの自由は檻の中に在る
ザイードよ
君は知らないのだ
自由という重みを
公序良俗強行規定六法は雁字搦めにわたしを呪縛する
人が殺せない不自由を
職業を選べる不確定を
好きに誹謗する不安を
君は知らないじゃない
何にでもなれる自由は何時でも諦められる事
自分を欺いたら如何にでもなる
自由の重たさを君は知らないよ
誰が何が何処が幸せなんだろう
皆して不幸自慢
顔の無い偽友人を殺す
動機は何となくで通用するこの日本が羨ましいか
答えられるものは誰もいないね
不幸自慢不幸気取りの生きてる人間て奴には
答えられる資格は無い
敢えて言うなら死んだ人間だけ
君ももうすぐに仲間入りだから
君からの叱咤は素直に受け止めるよ
でも笑って見送りはできないよ
君が好きだから
君がわたしを思う以上にわたし君を好きだから
ドゥ・スタット・グラーム
好きだよ
ザイード
好きだったよ
もう過去形の恋

夢老い人

いつからだろう
生きるために追っていた夢に追い立てられるようになったのは
いつからだろう
好きだから尽くしていたのに尽くされないと心細くなったのは
いつからだろう
負けを承知で挑戦してたのに言い訳を結果に先んじ作ったのは
もう思い出せないほど昔の話
もう思い出したくない昔の事
もう思い出す行為さえ忘れた
今でも夢は諦めていないけど
現在進行形で追っているけど
余りに大きく破り捨てられて
全身傷だらけこうなったら
傷の無い肌を探すほうが困難
敗れて破れてずたずただよ
阿呆らしくなったから止めたなんて嘘吐き
楽になれるよ
そんな誘惑が時場所構わず訪れて来るよ
何度も自分に負けたくなり
其の度に立ち甘え断ち切る
本音は辛いよ
もう楽したい
負けが続くと矢張り悲しい
傷跡が挑戦の勲章なら
わたし勲章で一杯で重くて動けない
悲しいのは失敗自体じゃなく
老いて行く事
黒地に白は嫌
白髪を連想させるもの
このまま失敗続きでさ
夢追い老いて行くのは余りに現実的
悲しいね人間って
夢なんて見ず想い焦がれず憧れたりせず
卯某暴と生き冒膨亡と死にこの世から消えたいよ
叶わぬ夢なら無いほうがいい
叶えた夢は現実になっちゃう
結局は誰も皆夢を追い老い死んでゆくだけ
今は一寸悲しみが大き過ぎて萎んで凹んで落ち込むだけ
落ちないと上れないし落ちるには上らなきゃ
とどのつまり忙殺されるの
この人生って
非常に無益だ

白秋憐憫

自称鬱病患者が増える秋
病院から見える空は白い
白秋の意味が少し分かる
現実には秋は紅色だけど心はもう真っ白になった
一気に老け込む此の季節
詐病患者が医者を困らせ
待ち時間が長引く此の頃
病院を出ても空は真白い
家に帰っても心は真白い
顔だけが青褪めて醜くく
傷跡は矢張り白く浮かぶ
自分で切った手首や肘裏
増えていく赤蚯蚓白蚯蚓
増やすのはわたし自身だ
今日は一杯頑張った
今年度一杯頑張ろう
其の後は?
知らない?
答えてよ?
ねえ誰か?
白い秋は辛い季節
何もせず眠りたい
できれば死にたい
嗚呼また始まった
わたしの超欝持病
切り方も上手くなったよ
自分で切って縫えるのよ
物思いの季節白秋
こんな日は泣いていい
自傷と自慰繰り返して日が落ちる
心は沈んで
また傷が一つ増えた

足跡

負け惜しみは敗者だけの特権
妬みも嫉みも敗者だけのもの
言い訳弁解は敗者だけの優遇
開き直ればいい
思い切り悔しがろう
滑って転んだ傷を舐めて自分の血を糧に立ち上がろう
自分の膿さえ栄養滋養にして全身血塗れの姿で歩き出そう
負けたのは挑戦の証
何もしないよりいい
諦めの眼差しで生きる人の群れを越えて飛び立とう
新しい世界へ
男でも女でも老いも若きも
賭けてみよう
自分だけの夢
自分だけの道
振り向けば点々縷々血と汗と涙と膿が連なる
欠けた指ともげ落ちた足が戦ったと証明してくれる
いつかこの掌に伝説の青い鳥を捕まえて
馬鹿にした奴等を嘲って
高台で大声で笑ってやる
野球が九回で終わるなんて
誰が決めた?
誰が認めた?
そんな狭い常識ぶち壊し
死んだ後でも消えない足跡を刻み付けろよ
百回でも千回でも万回でも挑み続けろよ
一億一回目に逆転勝利の可能性ある限り負けるなよ
誰より自分にさ
見苦しく無様に生きようよ
目一杯負け惜しみしてでも消えない足跡残そう
時の頁にたった一つ
唯一つでいい
残して死のう
残せるように醜く無様に生きよう
自分であるために自分を生かすんだ
自分なりに足掻き
自分らしく死のう
汚れた足跡残して
無様な足跡歴史に刻んで

心の間に間に

夕焼け小焼け
烏が森へ帰る
長引く影法師
背比べした日
暮れていく町
穏やかになる
過ぎる人々も優しくみえる
夕陽が見せた幻影か
月が照らした幻想か
星降るまでの束の間
ざわめきは静寂へと
せわしさは悠久へと
心象を変える
一時の情景は何時しか郷愁想起して
誰もが心の奥に描く安らかな夕焼け象る
千差万別の心の奥に何故かよく似た景色を持ってる
思い出に浸るより今急がねばならぬ
そんな現代人への星達からの贈り物
不可思議に心々惹かれ寄せ合うこの一時は
必ず日々訪れる恩恵
空が焼け爛れ剥がれ落ち
赤剥けの腐肉を見せる頃
真赤い生き血を垂れる刻
人はまた現実に還り
辛さ溢れても涙隠す
素直に泣けた頃の懐かしい夕陽風景
心に描いては消し
また明日描き
慰め生きていく
死ぬまでは生き延びる
悲しくても寂しくても苦しくても
平静装って仮面を被り人生を歩く
引き返せぬ時空の螺旋
時折俯き振り向き
自分の血を舐めて
生きて往く
死んで逝く

老い人の背中

秋の黄昏は黄金色
街が少し優しくて
風が少し寂しい時
老いし人の後姿が父に似て
緩い歩みを追い越し難く
我も歩みを顰め
長い影を重ねた
秋の夜は長く延びネオンも色褪せて
涼やかな街歩けば
老いし人の背中が母に似て
俯きとぼとぼ歩む速度に我も合わせて
お顔を伺った
戦争を体験した人達は皆厳しく優しく寂しいお顔
慰めを拒む強さと
哀れを誘う背中を持ち合わせていて
擦れ違う若人を戸惑わす
世話を焼く大人を困らす
無邪気なる幼児を泣かす
見る夢はどんな色ですか
飢渇も今は治まりますか
問わず語りの戦時中昔話
誰にも通じぬ日は近未来
嘆きますか叱りますか怒りますか
平和に慣らされた若人は躊躇いも無くあなた越え
吐き捨てる如く言い放つ
除けよ邪魔
注意しないあなたの背中
何より重く
真実を語る