Wednesday, March 15, 2006

眠雪

雪は眠る
春を待ちながら眠る
其の白きを横たえて
其の白きに全ての穢れを包み込んで
雪は眠る
軽やかな雪は粉となり道を街を山を滑る
湿った雪は半分透明で人を獣を魚を凍らす
雪は眠る
重苦しい悪夢にうなされたときは泣き
春間近い吉無に微笑むときはさらさら
時折目覚めては冬の名残を感じて眠る
雪は寒さが好きで嫌い
寒くなくては雨と変じ
生暖かければ気が変じ
消え行く運命を感じ取り泣く
涙は氷柱となり家々に垂れる
目覚めれば狂い
目覚めねば死す
斯様に雪は眠る
静かに静かに音を汚れを吸収して眠る
ふと雪達の声が聞こえた
人間は皆疲れているね
そうだね
僕達に安らぎと脅威を感じるね
だけど僕達は休むため降るのではない
僕達は僕達の存在を証に振るのだ
音や汚れを吸い込むためでもない
儚い命の雪の魂を叫びに降るのだ
聞けよ人間達
獣や魚や鳥なら知っていることを
僕らは優しいものじゃない
僕らは沢山の生命を殺した
僕らは数多の草木を凍らせた
獣は僕らに怯え冬篭もりする
鳥は僕らを嫌ったり好んだり
魚も僕らに従って生き場所を変える
人は逆らう
火をくべ電気を通しガスを撒き散らし僕ら自然に逆らい生きる
僕らは知っている
僕らのために僕ら以外の命が沢山散って行ったことを自覚する
人間は其の日屠った命すら忘れる
息絶えていった命の重さに上下をつける
鎮魂のように僕らは屍骸を覆い隠す
哀悼のように僕らは霊魂を包み込む
人間は何をするか
いつかきっと僕ら雪の如く静かにひっそりと
人間達も眠る日が来るだろう
そうしたら僕等が綺麗にしてあげよう
真っ白に穢れなき純白に世界を染め上げよう
其れまでは眠ろう
僕らの本当の使命はもうすぐ其処だ
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