Friday, January 13, 2006

血の沼~弐

昔々よりは最近
でも今よりゃ昔
おあん様を見習って
生首集める娘が生まれた
名は安寿
おあんだよ
おあんはねえ
実の兄に惚れて
兄が嫁を娶ったとき鬼になった
自分をおあんと思い込み
其の上桃太郎を気取ってねえ
犬の戌助と
猿の猿吉と
雉の軍鶏を引き連れて
夜毎生首を狩ったのさ
あのお嬢にゃ
今の世の肌蹴た着物が淫らな鬼に見えたんだろうね
だから勝ち誇って生首ぶら下げ帰ってくる
女中達は毎日首を井戸に放り込み蓋をして隠すのに必死だった
勿論ばれてるよだけど
地主にゃ弱い
誰も咎めず
自分ちの無駄飯食いを差し出す
おあんは勇猛果敢に奴等を狩る
そう
赤紙逃れに醤油や油一斗飲んだ奴とか
急いで嫁を貰い慌てて子を成す助兵衛とか
欠格にわざと罹って蔵に閉じ籠もる奴とか
結核た屑共を
おあんは狩ったのさ
おあんを溺愛する父は身体まで愛し
おあんの貞操を奪った
おあんは首を狩り帰り
お父は娘を匿い交わり
夜毎狂気の沙汰が繰り返された
そりゃあ母親は黙っちゃいない
或る夜とうとう神経が切れてね
邪淫の場に乗り込んだ
素っ裸赤裸の父と娘は気にもせず淫行を続け
二度目の終わりに娘が小さく言った
おかあさま
如何なされたの
母様は狂った怒った弾けた
そして出刃包丁振り上げて
裸の父娘に飛び掛った
其の後は?
さあ知らないね
自分で訊きなよ
安寿に
佯狂か
偽装か
正気か
今じゃ誰も気にしない
起きたことは起きたことで取り返しはつかない
おあん様お話してくださいませ
さあ
あなたの若き日を

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