Monday, January 16, 2006

w移ろう漂う魂

咲き匂う山の
桜の花の上に
霞出でし
春の夜の月

春は妖かし
魑魅魍魎が漫ろに歩く
春告げる梅に始まり松、桃、竹、桜、美しい兇器が萌え揃う
松竹梅は目出度くなど無い
神が下僕たる人に与えた最初の武器
神の奴卑だった泥人達は流された蛭子に煽動されて
国造りの苦役を厭い
紅白の梅花を叛旗として翻した
泥人達は
高天が原の松葉枝を千切り竹を折り笹を刈り青い梅の実を摘み
松葉のささらで神の眼を潰し竹槍で刺し笹で斬り青梅の毒を盛った
イザナギとイザナミの長子なのに醜いというだけで流し捨てられた蛭子
彼は未だ世を呪い続ける
福の神恵比須となり変わり
人に死と富と繁栄を授け
古代神への信仰を薄めていく
商売繁盛、子孫繁栄、不老長寿……
何れも他人を蹴落としたり肉欲に溺れたり天寿に逆らい医学に改信したり
皆国産みの神々への謀反
インド生まれの異教に座を乗っ取られ現代じゃ
初詣以外その存在と権威を穢土に失墜させた惨めな神々
だから今度は神々が
有毒の霊薬を世上に撒き散らす番だね
神の血脈は三種の神器の護りを忘れて久しい
近未来物語に米大頭領は出てくるけれどミカドは現れない
この弓形の島国に
行く末は有りや無しや?

雨過ぎし庭の
草葉の露の上に
しばしは宿る
夏の夜の月

火遊びをしよう
眩し過ぎる日光と有害の紫外線が人界の塵芥を隠してくれる
夜空を飾る極彩色の火の華を真似よう
昼夜の境を失くした街で
灼け付く海辺で
涼やかな高原で
申し訳程度の布を纏い
心と身体をモラルから解放しよう
土用波の頃には戯れも偽りも燃え尽きて
煤みたいな疵とメラニン色素を身体に擦り付け
足早に炎天は逃げ去るから
思い切り常識を蹴散らそう
勝ち逃げした夏の名残は不可視の心にだけ
癒されることの無い醜い火傷痕を残し
少年少女を男女に脱皮させる
羽化した中途半端な雄と雌は日焼け址を止どめて堕落という変態を遂げる
ぞっとする姿態の芋虫から妖美で醜怪な蛾に
夏の魔性は人を変える
罪にはちゃんと罰が下される
それで良い
夏は老いの季節だから
病の秋を迎える準備をして
死の冬眠を経て
再生の春と巡り合うための大切な老化の時
目眩き夏……

見る人の心々に
任せおきて
高嶺に清める
秋の夜の月

さらさらと木の葉が散り
さわさわと悩みが散り
ざらざわと命が散っていく
仰ぐ紅葉、降る紅葉、踏む紅葉
一夏の華美な毒を吸い血の色に染む紅葉
気の早い夕暮が宵闇に育つ頃
誰もが澄む星空と冴え凍る月に酔うから
見飽きられて見捨てられて霜付く土に還り
卯月待ち侘び朽ちて溶けるの

水鳥の声も
身に沁む
池の面にさながら氷る
冬の夜の月

冬は好き
小さな幸せが彼方此方とたくさん遭える
長く待ったバス、熱い珈琲、揚げたてコロッケ、屋台の焼き鳥と熱燗
乳白色のお風呂、暖かい部屋で冷たいビール、だんだん温まってくる布団
一日何度も、小さくて安くて、だから安心できる幸せを、冬はたくさんくれる
でもあの人死んでしまった
どうするのよ
あなたの背広やサーフボード
どうなるのよ
あなたに惚れちゃったあたし
あなた無しに生きていけないって言った癖に今もこうして生きている
この大馬鹿なあたし
生き残ったのは、弔うため、本気で泣くため、償うため
だからわたし今日も生きるよ
あなたが逝ったこの冬の空見て
あなたの手の温度を感じたこの冬を
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