Friday, January 13, 2006

wうrmm以心電信

今年の冬は長ごう御座います
わたしは待ち遠しく震えます
あの恐ろしい玉音放送を聞き
過酷に蒸す夏が過ぎ
虫の音聞く秋も過ぎ
凍える冬が訪れて
今長らくも怯えて暮らし生きて
食うに困り闇市へ走りましたけれど
よいのです
わたしは満足です
ええ昨日あの方から
愛し恋しあの方から
電信で嬉し報せがありました
ハルカエル
たった其れだけ
あの方らしいわ
ぶっきらぼうで然れど平坦な仮名文字からは
溢れ出る情が読み取れました
春よ来い
童歌など歌ってしまう
楽しい冬で御座います
初雪が降ったは何日か?
終の雪は何時去ったか?
梅の蕾は如何でしょう?
彼方の辻を曲がるは誰?
其処の道を行くは何方?
此の跫は聞き覚え無し?
わたしは此処におります
いつ迄も此処で待ちます
早くおかえりなさいませ
一日千秋と申しますけど
わたしは千年待ったよう
慕う気持ちがこぼれます
募る恋心が溶けてしまう
そんな温かい冬なのです
其方は寒う御座いましょ
此方は暑うてなりません
きっとお天道様が冷えるあの方を温めようとしてこうも生温い冬なのでしょうね
嗚呼あの声は
ああきっとそう
アアやはり
あなた
見えますわたしには
其の角を曲がった
此の道を通いくる
そう其の戸です
其処を開けてお出迎えいたします
愛し恋しあなた
やっとやっと逢えた
もう二度と離れずに
死さえ共に迎えよう
其のお言葉が聞きたくて
此の手と手を繋ぎたくて
千年もお待ち致しました
神賭けて命賭してずっと一緒もう一緒一緒に
……戦後六十年を経て
狂った老婆は発見された
思い人を待ち焦がれた冬
季節を失い
春も夏も秋も冬の装いで
六十の春秋を生きた老婆
六十の星霜を耐えた狂女
六十回目の盆祭りの夕べ
八十の生を閉じた
今もなお聞こえる
彼女の春の数え歌
お雛祭りも六十回
お内裏様とお雛様
やっと一緒に並びました
後は三人官女に五人囃が必ずお参り致します
まあ本当にお綺麗な
お嫁様の白装束
お安らかに
御目出度く

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