Monday, May 29, 2006

w食尽聖女

あなたは何も知らないでわたしを聖視する
あなたの褒め言葉全部がわたしを呪縛する
あなたの吐息が一筋
わたしの項に垂れて
もうわたし動けない
好きにして
其れしか言えない
ねえ知ってる?
わたしの本性を
夜のわたしはね
左膝に仕組んだ短剣を左手で逆手に持ち
狙った相手の右目を潰しひるませておき
帯刀したわたしの右手が風を切る
閃光一条暗闇を裂き相手の首が地面に転がる
いい感じよ
宙を切り首を斬って噴出す血潮を全身に浴びるの
頬を伝う血が口に入るととっても美味
グルタミン酸満点の出汁が効いた旨味
獲物の体が倒れる前に右手の刀で壁に釘付ける
そして優しく肩を抱き
生温かい切断面に舌を滑らす
首はもう駄目
土で汚れちゃった
だから胴体は大事にね
壁に打ち付けて血を啜るのよ
相手の身体が空っぽになっていくのが分かるわ
その分わたしの体重は増えて胃が満たされるよ
砂漠では其れが日常
戦場では此れが礼儀
わたしもいつかは食われるでしょうね
そんなこと考えると眠れないほど快感
ねえこんなわたしでもあなたはまだ褒めてくれるの?
そうこんなわたしならあなたに突き放されてもいい?
ニッポンではジョークになるのね
中東一帯での深刻状況も野蛮行為も
本当の話よ
わたし何度も味わった血の甘味と砂の苦味
この街でジェラートを舐めるように
あの街で血肉を食らうの
獣も魚も鳥も魚も人も同じく食物
食い尽くすわたし其れでも聖女?
あなたは引くのね
わたしは追わない
追うならもっとスリルが欲しい
あなたじゃつまんないが過ぎる
もっと追わせて
だから追わないで
追い詰める快感は最高のβENDORPHINE源
ぬめる血と裂ける肉と折れる骨とが相俟って
極上和牛よりもずっと美味しいの
狂ってる?
そうねよく言われるわ
そうよ自覚もあるもの
でも此れが日常の世界もこの地球上には現存するのよ
知ったかぶりの人道支援など蹴散らかす常識が在るわ
ニッポンじゃ人が一人死ねば事件と騒ぐけれど
インドネシアで六千人死んでも他人事で片付ける
どっちが狂ってる?
生きたまま白魚を飲み込むのは野蛮じゃないの?
自分の身を削がれて盛られた活き魚は哀れじゃないの?
嗚呼いい感じあなた段々行き詰ってる
こうして誰かを窮地に追い込むのって
何より快感
此れでもあなたわたしを聖いと評する?
其れでもわたしあなたに縛られたい
肌に食い込むワイヤーが気持ちいい
あなたの吐息この世で最強の有刺鉄線
野蛮な女は追いたい追われたい縛られたい食いたい食われたい
思考ばらばら
だけどあなたの視線だけは真実
もっと鋭く貫いて深く抉ってよ
できないのなら早く言って頂戴
もう用は無いお役御免
他の誰かを探して周り
飽きたらまた旅立つわ
あの
食物連鎖の中に
自然の掟の中に
聖なる戦場へと
狩をするため食らうため
わたしこの国を捨てる
こんなわたし狂った聖女
食らい尽くす野蛮な聖女

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