Sunday, May 21, 2006

r輝夜姫~序~

昔々月読命の支配する月世界は楽園だった
月人達は機能を憂えず明日を夢見ず
唯今のみを楽しみ暮らした
其処には季候も時流も寝食も呼吸すらも無かった
青白く神々しい月読命だけが
心を砕き月世界の平穏を保っていた
但し皆既月食の夜だけは皆が眠りに就いた
其れは月読命の秘密を隠すため
さて或る朔の夜
輝夜なる幼き月女は遊びに夢中で月世界の昏きを忘れ
遂に見てしまった
輝かず闇に包まれし月の神の姿を
輝夜は思わず声を出した
何故に月読様は自ら輝かぬ哉
月読命は唯一の弱みを見られ怒り狂い
輝夜を天孫降臨間も無き地上へ貶めた
姉上の偉大と脅威と恩恵と呪縛を知れ
地上最初の武具竹やりに籠められし輝夜は
なよ竹担う翁に発見され
其れは大切に育てられた
其の頃の地上は未だ国造りの最中に在り
人は老衰死を持たなかった
天孫の血濃い帝は月から落ちた姫を見初め
二人は深い長い恋に落ちる
月読命は月人が姉の支配せし地上への干渉を恐れ
急ぎ輝夜を迎えに従者を送った
輝夜は月への帰還を拒んだ
優しい翁姥そして愛しき帝と離れたくなかった
やがて月人と地人との初の戦が始まった
現代に伝わりし御伽噺とは異なり
地上人が月人を其の日光で眩ませ
輝夜は選別に持たせた不死の妙薬を盗んだ
腹痛の薬が腹痛を止めると同じく
不死の薬は不死を止める毒だった
其れは月読命が天照大神に逆らった瞬間でもあった
姉を恐れる月読命への対抗手段たる毒を
輝夜は富岳の頂に隠した
しかし富岳は毒を嫌い自らを砕き噴火した
其れは地上に老に因る死が発現した瞬間でもあった
地上人は毒を吸い込み地上に老衰年が蔓延した
呼吸せぬ輝夜だけが老いも死も知らず延命した
天照大神は老衰を許した
戦を好む人への罰だった
皆が死んでいく中輝夜は
もう一度地上を不死の世界へ引き戻そうと試みた
五つの宝を揃えむと五人の勇者を犠牲にした
幾度も犠牲と失敗を繰り返し未だ地上には老いと死が蔓延る
輝夜は今も尚探し続ける
五つの宝を人を不死へ戻す薬をそして
死に変わり生まれ変わる愛しき翁姥と帝を
霊峰富士は呪われし毒の峰
沸き出づる清水は老衰の薬
輝夜は眠る待つ探す
月を恨み日に焼かれ
老いもせず
死にもせず
今この刹那も探し続ける
この地上に永遠を復活させむがため
愛しき人々と巡り会うため

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