Friday, June 16, 2006

rレローチカのパン

六十七年前の如月
第二次世界大戦中のレニグラード
ドイツ軍に包囲され
厳しい飢餓と極寒に襲われた
その中にいた一家
父は前線で行方不明
母は三人の娘に
自分の配給のパンを与えた
それでも末娘レローチカは衰弱し
一欠けのパンを食べて息絶えた
小さな手は
食べ残しのパンを握っていた
残された母と幼い姉達は
レローチカのパンを
決して食べようとしなかった
母は言う
レローチカの思い出のため残そう
姉達は思う
妹のパンだけは手をつけまい
明日をも知れぬ母娘達は
レローチカのパンを守り抜いた
彼女の形見のパンは
サンクトペテルブルクと名を変えた街の
学校に保管された
小さな命の尊厳は
戦火の中守られた
飢餓とも戦争とも
無縁のこの国では
毎日小さな生命が
親に他人に社会に
奪われていく
戦後の高度成長期
鼠色の背広の男は
何を目指して働いたのか
泡は果敢なく弾け
淀んだ水面は血みどろ
狂気と凶器が浮く
浮かぶ瀬も立つ瀬もない
泥流が流れる世界
わたし達一体
何を目指して
ここまで這い上がったの
答えは見付からないから
答えを作らねばばらない
捏造でも偽造でもない
真実を
尊厳を
生きる意味を

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