Thursday, January 12, 2006

巴里動乱

警官に追われた少年が二人
逃げ込んだ変電所で感電死
其の火花は街中に飛び散り
貧困層の若者の不満も爆発
少年が遺した火花は
お洒落な街の陰部を照らし浮かび出した
米国に負けない人種の坩堝
多種多様な人種を受け入れ
街を歩けば地元巴里っ子が
異人のわたしに道を尋ねた
移民大国の洒落た街
街頭で民族音楽が演奏され
沿道立ち並ぶ料理店も多彩
名物の焼き栗やフィッシュ
北アフリカのクスクスなど
五つ星店に負けず美味しい
でも其れは一時の旅人ならではの陽気だった
巴里の寛容を実感した反面
移民の車を敵視する警官の執拗な尋問に悩み
残飯を漁る貧困者の多さや
当所なく街を歩く失業者と直面し戸惑うだけ
そんなわたしは
今朝もニュースで巴里の動乱を聞きながら
夕食の支度をする
ムスリムの多い巴里郊外
勤労意欲の無い若者達が暴動に乗じようと目論む
わたしは野菜を洗う
バグダッドで百人が死にカサブランカででも自爆
犯十二人を含む四十五人が死んでも
わたしはキャベツを割る
パレスチナで玩具所持の十三歳の少年が国軍兵の誤射により死亡したけど
わたしはポークを結える
中国で鳥インフルエンザが人に感染した
真偽を突き止めず聞き流して
わたしは鍋を火にかける
倫敦ではハリー・ポッターの試写会開催
賑わい艶やかな世界を見つつ
わたしは火加減を気にしてる
六価クロムという悪性腫瘍の原因を含む
土壌埋め戻し材フェロシルトの害悪より
わたしはポトフの味加減が心配
こんなものだ
世界も
世間も
自分の目に見えるものだけ本気で愛し憎む
地球の何処かで誰が何人死のうとも
地上でどんな非道が罷り通ろうとも
本気で怒りは感じない
本気の悲涙は流さない
本気の愛は芸能界で空回り
本気で応える俳優はいない
こんなものだ
日常ってのは
こんなもんが
世界を動かし
徐々に確実に破滅へ向ける
こんなもんを価値有る力に変える勇気を
わたしは持たない
二十一世紀の巴里動乱
ほんの予兆に過ぎない
きっと前触れに過ぎない
其の後に待つのは
いったい何?

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