白秋忌
青春朱夏白秋玄冬四季巡り来たりて
我は年古る
西より白虎睨みて
寂漠孕む紅葉と風
我が胸染む
白否来るべき玄へ
髪には白増すとも
我が心沈む
ヴィオロンの音色
秋の日の溜息混ぜ我を貶める
ヴェルレーヌを想起させる
北原白秋の秋の詩
其の傑作謀反にて
いとほのにヴィオロンのその絃のその夢の
哀愁のいとほのにいれひ泣くとヴィオロンの幽けき音は
往く秋を惜しみ浸る詩人
落葉がアスファルト擦る音さえ彼の格調高き音色に聞き間違う
こころ急き
草は刈らずも時来なばおのずと枯れむ
山人も冬を待つなりおのずから枯るるを待つなり
心急く人に覆い被さるような自然の理を説いた詩
死に急ぐ我へ
生き急ぐ彼へ
窘める大人になりたくないという若者達へ
喩え大人にならずとも
必ず老人にはなるのだ
誰か教えてやってくれ
秋のおはりと同じくも
人も草も自ずと枯れる
寒きほのほに黄の入日さしそふみぎり
朽ちはてし秋のヴィオロンほぞぼぞとうめきたてゐる
彼が引き当てた季節秋
自ら名乗る季節をこそ
彼の詩人は愛したのか
其の詠人は憎んだのか
邪宗門の影にては
暗きこころのあさあけにあかき木の実ぞほの見ゆる
しかはあれども昼はまた君といふ日にわすれしか
若き日の彼の中秋に目立つ
赤い木の実はさても幻想を誘うものか
暗い朝には見えていた赤い木の実
しかしながら昼は君という日光に消され忘れてしまうのだ
何もかも誰も彼も
きっとこの秋が終わる頃
やっと次の冬が来たる頃
赤い実は鶏に食われ海を渡り
ヴィオロンの絃も凍て付きて
寂しさから厳しさへ
白から黒へ
夢から現へ
涼から寒へ
霜から氷へ
霙から雪へ
世の総てが氷点下
やっと綺麗になる
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