贈る言葉
このところの記憶欠落は弥増しに激しく心がどんどん軽くなった
空っぽだ
何も無い
なのに文字というものが情け容赦無く過去を暴き
自分の恥部を見せ付ける
積もり積もるスケジュールノート
読んでいると実に多くの別れを
わたしは体験してきたらしい
書き残された沢山の贈る言葉
恩師から医師から弁護士から
当時は心に響いただろう言葉
今眺めれば
背に火を点けるような叱咤と
押し付けに近いような激励が
わたしの過去を埋め尽くす
何処を探しても欲しい言葉無く
虚しさのみ募る音を言葉にして意味を含ませる
人間ってのは
どんなに尊い贈る言葉より
憐憫混じりの返す言葉こそ
真に欲しがるのではないか
今のわたしはまさにそうだ
山ほどの贈る言葉より
返してくれる言葉が欲しい
寒いねと呟いて寒いよと応える
わたしを否定しない誰かの言葉が欲しい
自律神経が迷走し始めて幾年か
思い出せないのは恩恵と思うが
過去のわたしを固めて縛る数多の贈られてきた言葉達
今は何の意味も無い
心には何も響かない
そういえばわたしも
贈り続けるばかりで返したことは無かったようだ
何故そんなに苦労するの
何故そんなに欲しがるの
何故そんなに死にたいの
数も時も知れぬ問い
一度も応えていない
宙に浮いた問い掛け
締め出した問い掛け
だから今こんなにも寂しいのだ
自業自得の孤独
其れも直ぐ忘れる
幸か不幸か知らない
どんより曇った白秋の空の下
一つ覚え
一つ忘れ
一つ知り
一つ失い
寂寥重なる
文化の日
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