月光
嗚呼また晦日が来たりて月光が無くなる露が霜に変わり
雨が霙に変わり
また季節が巡る
今宵新月晦日月
夜空には玄い月
真暗な闇夜には物怪共が蔓延る
月光が殺してくれないから
もっけどもは浅ましく食う
人の魂魄を
人の思慕を
人の希望を
食い散らかした挙句
望みを絶望に変じて散らかして去り行く
残されし人どもには徒悶ゆのみ
一日月は下弦の月
九日過ぎまで弓月
漸う十日余り経ち
月が半欠となる頃
わたしと君は別離
二人で見る月は残り少なく
物の怪共が嘲笑う
もっけどもは嘲る
別れを決めて重ねる逢瀬を
人ならではの愚かと囃立つ
我等二人唯もだし身体重ねて時を費やす
十三夜の頃君はいない
君と見た最後の十五夜
美しき望月をば
今度は一人で眺めます
寂しく黙して拝みます
君の無事を祈り
君の再来を願い
黙もあらむ時も鳴かなむ
断末魔の蜩よ
渡り始めの鳥達よ
十六夜過ぎて立待ちの月
我は佇み君を偲ぶ
居待ちの月夜
風が一人身に凍みます
寝待ちの月
立っておられず臥しておりましょう
宵闇二十日の頃になれば
我が黒髪に白き筋混じり
再び二十日余りの月来し
次の二十三夜月を
わたしは見られるでしょうか
生延びておりますでしょうか
見苦しい汚らわしい人の倫に不成ずの想い
もっけどもよ
食らいておくれ
蜩よ黙もせで今宵鳴いておくれ
鳥達よこの叶わぬ恋を
遠流の罪として見知らぬ異国へ追い遣ってくれ
心密かに満月に祈る
浅ましき我が真の心
壊しておくれ
君が守る幸せ
月光鋭く我が心射し
醜き性根を暴き出す
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