Thursday, January 12, 2006

月光

嗚呼また晦日が来たりて月光が無くなる
露が霜に変わり
雨が霙に変わり
また季節が巡る
今宵新月晦日月
夜空には玄い月
真暗な闇夜には物怪共が蔓延る
月光が殺してくれないから
もっけどもは浅ましく食う
人の魂魄を
人の思慕を
人の希望を
食い散らかした挙句
望みを絶望に変じて散らかして去り行く
残されし人どもには徒悶ゆのみ
一日月は下弦の月
九日過ぎまで弓月
漸う十日余り経ち
月が半欠となる頃
わたしと君は別離
二人で見る月は残り少なく
物の怪共が嘲笑う
もっけどもは嘲る
別れを決めて重ねる逢瀬を
人ならではの愚かと囃立つ
我等二人唯もだし身体重ねて時を費やす
十三夜の頃君はいない
君と見た最後の十五夜
美しき望月をば
今度は一人で眺めます
寂しく黙して拝みます
君の無事を祈り
君の再来を願い
黙もあらむ時も鳴かなむ
断末魔の蜩よ
渡り始めの鳥達よ
十六夜過ぎて立待ちの月
我は佇み君を偲ぶ
居待ちの月夜
風が一人身に凍みます
寝待ちの月
立っておられず臥しておりましょう
宵闇二十日の頃になれば
我が黒髪に白き筋混じり
再び二十日余りの月来し
次の二十三夜月を
わたしは見られるでしょうか
生延びておりますでしょうか
見苦しい汚らわしい人の倫に不成ずの想い
もっけどもよ
食らいておくれ
蜩よ黙もせで今宵鳴いておくれ
鳥達よこの叶わぬ恋を
遠流の罪として見知らぬ異国へ追い遣ってくれ
心密かに満月に祈る
浅ましき我が真の心
壊しておくれ
君が守る幸せ
月光鋭く我が心射し
醜き性根を暴き出す

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