自由民権
政府国憲ニ違背スルトキハ日本人民ハ之に従ワザルコトヲ得
幕末の動乱を経て
明治の安寧を問う
今なお受け継がれる日本国憲法起草私案
日本国国憲按の一節
其処からには
自由は自ら勝ち取るものという
近代民主主義の精神が滲み出る
誰もが身分制度に屈していた時代を打ち崩し
開国してやっと掴んだ自由
其れが今また揺らぎ始める
国際社会屈指の平和憲法から
不戦の血脈が破れて流血する
旧仮名遣いの美しい法文こそ
戦後に高度成長を支えた根本
わたし達が生まれ出た頃には当然となっていた自由を掴む
祖父母達の血に塗れた手腕が
齧られて細く痩せた向う脛が傷付き血を流そうとしている
政府国憲ニ違背セバ民従ワザルコトヲ得
血を吐くような自由への渇望
叫ぶ声が魂が
今現代には無い
政府が憲法に違背したとき即ち恣意の侭
改憲したとき誰が立ちはだかるだろうか
誰が従わず戦うのだろうか
誰もがきっと無関心であり
誰しも疑わず従うのだろう
当然となった屑滓と化した自由民権運動
蹂躙されるほどにも関心をもたれないで
捨てられもせず忘れられていく
気が付けば戦争の只中
昔あった憲法第九条を皮肉る川柳が流れよう
独裁者内閣総理大臣は九条二項に基づく力で
最高指揮権者として自衛軍を保持し操る
旧憲法が否定した交戦権を振り翳し
日本は再び世界の舞台に立つ
高々星条旗の下に日の丸をぶら下げ
嘗てあった自由の意味をも見失い思い出せず分からず
命令通り血を流す
タガタメの自由民権
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