くにざかい
今此処眼前に続く麦畑何処までも連なる峰峰
雲は悠々流れて
日は存分に射す
天には何も定めが無いのに
地は不可視の線で区切らる
この国に麦畑
かの国に稲穂
植わるものが変わるだけで植えるものの人種が変わる
たった其れだけの理由
だが殺し合うには十分
何時誰が決めたか
歴史年表が物語る
真実ではなくても間違いのない事実
眼前の厳然の現実
季節毎に雲が羽を広げ橋は此岸と彼岸を結ぶ
時間は緩々国境を舐め同じく日付が巡り巡る
祝祭日は違う
慣習掟は違う
食べるものも
拝むべき神も
皆違うけれど
同じく人間だ
この国に菊の花咲きかの国に薔薇が咲く
其れだけの違い
変えられぬ違い
越えられぬ違い
愛でる花が違う
其れが殺害の理由
人間社会のみに適する不条理な動機
不安定な殺意
無防備な人間
無罪の被害者
こんな世界に誰がした
こんな国境を誰が引
く答えはわたしたち全員
傍観を決め込んだ
わたしたち全員だ
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