Thursday, January 12, 2006

閨~ねや

歌わざれば失う言葉がある
其の花を何せふ
太刀こそ
閨の翳し挿頭よと
地名の抹殺が嘆かれる
歌は続く
愛しき桜花折りて持ちて来いやれ
閨の挿頭に折り持ちて来いやれ
閨の挿頭にあの山中の桜を
平成の地名大虐殺はいったい我等に何を残すか
抹消されし故郷に望郷の念は郷愁の憂は届きはせで
失われし故郷ほどなお弥増しに慕う
ふとした旅の折に思い返すべき故郷在るのに
無い故郷
やがては誰も其の名を知らなくなり永遠に地上から消え去る
古い手書きの登記簿が酷く愛しく悲しく
何度も頁を撫でて再び返すときには
抹消登記簿の書庫の中
積もる埃の高さが
土地の命の分だけ
静かに静かに降る

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