Thursday, January 12, 2006

破壊

大阪へ出張したら
昔馴染みの建物が白いビニールに覆われていた
取り壊されるのだ
シャンデリアとモザイク画の在る異国情緒漂う場所だった
行きは出迎え
帰りは見送る
一人憩う場所でもあった
地下から地上へ上がると
セピアの空間が足の疲れを癒し
弧を成す天井は端々まで植物文様に綾どられ
シャンデリアがきらめいていた
東には
太陽を背にした明け方の雲と
鴉猛る龍とペガサスが従う
西には
濡れた夜の月に掛かる群雲と
兎有翼の獅子と鳳凰が従う
下には
赤い花咲く蔦模様
嘗てのコンコースの名残
アーチ描く通路抜ければゴシックステンドグラス
日の光と月の光を彩った
余りの美しさは崩壊を予感させ
近代的で無機質な機械仕掛けに変わってゆく
使うだけ使ってあっさりぶち壊す人間
壊されたものはものかこころか
ものは殺されるのだ
こころは死ぬのだ
記憶だけが置き去りにされて
懐かしさという虚無感が漂う
懐かしむのは失った証拠だ
懐かしむほど失ったものは多く
大きい建造物にはこころが宿る
風や雨や野分の甚振りを一身に受けて人々を守る
そんな苦痛に耐えてまで
住まうものを守る建物にこころが無いはずは無い
表現できないだけ空間に包まれれば
痛いほどに伝わる慈しみ
造ったから壊す権利が在ると
感謝を忘れてきた人間を
尚も建造物は守るけれど
其の重責も其の庇護も其の人間も
何処か此処か既に終焉を潜めている
手応えの在る予感
凶兆は其処に

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