涙枯渇
涙が枯れ果てるという言葉が在る涙が尽きることはないという人が居る
わたしは前者が正解だと思う
泣いて泣いて寝る間も惜しんで泣いて
貧血で疲労困憊すると眩暈を起こし昏睡する
其の重い眠りの中
何度も同じ悲しみを体感し
何度もあれは嘘だったと思い違い
何度も矢張り本当だったと絶望し
安らぎのない悪夢に魘されながら
気絶したままの格好で
目覚めれば否応無く立ちはだかる辛い現実にまた直面する
今度は気絶できない
失神を許されるぬほどの苦痛
其れを改めて味わい噛み締め苦汁を飲み下す
現実を消化吸収する
悲しさと辛さを身体に取り入れ
やっと本当に強くなる
現実を呑んで強くなる
優しくはなれなくても
一人を耐え得る強さを身体の一部として行使できる
冷たい氷になるかもしれない
非情と言われるかもしれない
無情の中生きるかもしれない
だけど
弱さがつける擦傷よりは
強さが斬る刀傷のほうが
縫いやすだけ優しい傷だ
脆弱は他人をもどん底へ突き落とす
そして一緒に底辺にて傷を舐めあい黴菌を交換するだけ
強靭は他人を一蹴し
蹴落としてからそいつを引っ張り挙げる底力を持つ
蹴落とし合いの中で上るものを責めない
下るものを嘲り笑う
底の底へぶち当たるまでとことん泣いて疲れ果てて
立ち上がればいい
立ち直るには一度転ばねば一旦倒れねば
立ち直れない
立ち尽くしたままでは
立ち直れない
動物の涙は身体の水分が尽きれば終わる
必ず涙の限界は在る
だから安心して思い切り泣け
孤独を感じたときに一人じゃないと分かる
其のときが来るまで思い切り泣け
涙が枯れ果てるまで
気を失うほど
全身力で泣け
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