希望の帰途
ふらり出た一人旅寝所も決めない旅
頼りのない迷走旅
バイクだけが支え
バイクに凭れ眠り
バイクに跨り走る
こんな女死んだっていい
自暴自棄が先走る
時速百三十キロで地道を徒に走らす
其れでも
道は優しく
風は慈しみ
空は見守り
雲は流れて
月は照らし
星は囁いた
この地上の全てが捨て鉢なわたしを包んだ
都会の片隅に潜む草花が
アスファルトに舞う砂が
ネオンに歪む星明かりが
行くべき方角を詳細示し
回すべきアクセルを整え
ギアチェンジを援助した
この狭い日本の中で本能のままに走った積りが
いつしか知った人々に出会わせてくれた
不明瞭な記憶の中で話しかける声と顔が
辛い現実と一致して
懐かしさへと変えた
久しぶりだ元気ないねコケるなよ
乱暴な歓待は確かに覚えのあるわたし自身の過去だった
過ぎ去りしとき
今在る現
未だ来ぬ先
パズルのワンピースでしかなかった愛しい思い出達が今
現実の形をとり質量を有し現れた
失くしかけたもの
無いと諦めたもの
空だと決めたもの
全てが今此処に在る
触れ見て嗅ぎ感じる大いなる感謝と慈悲
わたしは確かに存在した
今もなお此処に在るのだ
恐らくは明日も在るはず
自己を否定したのは自分自身
誰でもないのに誰かの所為にしてた
誰かを責めて楽をしてた
もう止めよう
この一人旅は決して一人じゃないと気づかせてくれた
絶望から出発したわたしは希望を土産に帰途に付いた
帰る場所が在る
其れがどれだけ尊いことかやっと分かった
そして絶望の果てにしか真の希望は見えないこともやっと分かった
中途半端な失望では其の場凌ぎの慰めしか見えない
とことんどん底まで絶望しよう
其の向こうには
敗者だけに見える真新しい希望の光が在る
少なくともこの国では
一人ではない
一人はなれない
孤独を気取っても憩いが待ち受けてる
さあ帰ろう
何処にでもいいから待つ人がいる
其の場所へ
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