消えた温もり
あなたは丁寧に教えてくれるお前食べるの遅い
あなたはそう咎めた
早食いはデブの元
わたしは言い返した
ちっちゃな鍋を二人突付いて
湯気越しに互いを確かめ合った
鍋より小さな思い出
そんな他愛無いこと
湯気の熱さ
あなたの腕の温もり
全て全て風に吹かれて消えました
確かに大切だったのに思い出せない出来事達
追いかけていた夢さえ時に呑まれて潰れました
何でだろう
外国語やプログラムや法律は嫌になるくらい覚えてるのに
思い出したいあなたのことが
如何にも思い出せません
記憶再生機能が壊れたこの脳
あなたと出会っても分からなかった
あなたが誰なのか思い出せなかった
申し訳ありませんと馬鹿丁寧なわたしに
涙ぐんでるあなたが可哀想でなりません
わたしがあなたを忘れたように
あなたもわたしを忘れてください
其れしか今のわたしは言えません
どんどん失くしていく記憶の中
あなたの笑顔が偶に揺らめいてわたしを惑わせる
けれどわたしにできる唯一の感謝
わたしから贈る
さよなら
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