Thursday, January 12, 2006

時の流れに逆らって

精神の異常を告知されて
十一回目の秋が終わる
脳髄の障害を宣告されて
五回目の冬が早や来る
振り返り
積み上げた時間の塵山を見る
其の見る瞬間も
既にもう過去
記憶が欠落していくこの病気
治る見込みは一生無いらしい
身体が覚えたことだけは何ととかこなせるけれど
今朝の出来事は抜け落ち
二度と再び戻ってこない
この悲しみは青より赤に近い怒りに似た悲しみ
現実と受け止めるには辛過ぎる諦めに近い悲しみ
現実は逃げても追って来ない
逃げれば其れまで
もう現実はわたしを見捨てた
自分で拾うよりない
過去の時
忘れたくない
自分でいたい
どんな死に方でもいいけれど最後まで自分で在り続けたい
人として最小の願いも
まるで老いし人の如く
願った事実を忘れていく
祈った感情を忘れていく
遠い所から帰ったように
午睡を破り遠流の罪に処せられたように
わたし誰でもなくなる
こんな午後は胸の隙間に初冬の風が凍みて
旅姿装う
一人知っていたはずのやっていたはずの事々を
拾っては燃やし尽くす
人を追い
時を追い
事を追い
風を追う
赤蜻蛉も力尽きる
わたしも何時にか同じ
目覚めぬよう祈り
一人で寝る
独りで眠る

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