死刑囚
虚しいやるせない
拠りどころの無い気持
誰にも話せない
独りではどうする事も出来ない
罪の償いか
わたしが生まれる前に十九歳だった永山則夫
名古屋で四人を射殺した元死刑囚の手記だ
此れほど重い言葉を今まで目にしたことが無かった
法学院で学ぶことは旧仮名遣いの条文だけではない
こうした生々しい苦汁の溢れる懺悔をも学ぶ
自分の弁論一つで
誰かを死に追いやるか
誰かに更生して貰うか決まる
第一審は死刑を言い渡した
控訴審は無期懲役に減刑した
死刑適用基準に厳格な枠を嵌め
未成熟なりと更生の余地を見出し
死刑廃止論を表明する衝撃的判決だった
しかし最高裁は罪質動機被害者数など詳細な適用基準を示し
差し戻し判決を経て
死刑が確定した
世に言う永山基準だ
贖罪を巡り大きく揺れた裁判だ
一九六八年に人を殺した永山は一九九七年に自らの死で償った
長い長い時間だったろう
血を吐く如き魂の懺悔が紙面から指に胸に伝わる
無知の涙と題された手記
今再び四人を殺した少年達が裁かれる
判決の主文は死刑
其れ自体罪悪である死刑を以ち
人が人を裁く
本来ならば許されぬこと
其の罪悪を言い渡すとき
身の処罰を言い渡されるとき
人と人とではなくて
裁判官と被告という
無情な関係が生じる
死刑執行人の涙も絞首される覚悟も同じく透明で重い
そんな辛さをわたしは耐えられるか
わたしで堪えられるか
わたしが絶やしたいと
思いは交錯し
裁判所の向右側に偏る
磨かれた裁判所の壁は
涙で艶やかなのだろう
少し自信を失くしわたしは
徒呆然と
死刑判決を聞いた
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