Thursday, January 12, 2006

ナチ・ハンター

サイモン・ウィーゼンタール
今の日本人はこの名に反応するか分からないが
わたしの中では激しい化学反応を誘発した
二〇〇五年九月二十七日に
九十六年間の人生の幕を下ろした
尊敬すべき人
彼は死の瞬間満足を得たか悲嘆を見たか
誰にも不明だ
ユダヤ系のためナチス・ドイツの強制収容所入り
四年間の悲惨な暮らしは彼を復讐鬼に変えた
自らは復讐でなく正義の追求だと回顧したけど
誰の目から見ても復讐の鬼だった
八十九人の親族を殺され正義を貫ける人はいまい
第二次世界大戦が終わり
戦争犯罪追及を続けた人
戦犯千百人もの訴追に寄与した彼
其の中にはアルゼンチンに潜んだ悪名高き男
親衛隊将校アイヒマンも含まれた
極少数の協力者とボランティアと
終わらない戦争を闘い抜いた彼は
忘却の恩恵を捨ててまで
欧米の学生に語り続けた
自由と独裁を問い続けた
ゆっくり生まれ育ったものが次第に膨れ上がり最後手遅れ
彼の講義はいつも胸を抉った
同盟国だった日本の女として
どんな小さな不正にも正面から挑んできた彼
日本は被害者意識だけ
ヒロシマと言えば同情に値すると架空の史実を習う我々
友人が理不尽な誹謗を受けたとき
見て見ぬ振りをするなと彼は叱咤した
傍観者は当事者と同じ罪を負うと勇気を教えてくれた
ユダヤ人が雑巾で歩道を拭かされ喘ぎ屈辱に耐える姿を
素通りした者と同じだ
彼は繰り返し熱弁した
そして独裁体制は
人生の意味を見失った若者を先ず虜にしたと
現在の日本を物語った
民主主義国家は意味を与えるべき
其れを学ばないで行う民主主義は独裁体制と変わらない
ブッシュはコイズミは何を学ぶか
日本に溢れ返る
生きる意味を見失い思考を止めた
無気力で無表情な若者達が重なる
わたしは何を学んだか
学びを如何に生かすか
彼に学んだことは多く
彼に返したものは無い
実に許されぬ
我が日本

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